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おわコン!~お笑い芸人は異世界で最高のコンビ!~  作者: 印朱 凜
第2章 魔女の卓球部員
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王国の危機3


 王国の空には色とりどりの小鳥が飛び交い、まだ平和だった。丘の上から眺める街並みには緊張感もなく、人々は日常を満喫しているように思えた。

 カヤタニは暫く考えた後、頭を抱えるダケヤマの背中を刺激しないように押した。


「ダケヤマ……、お前の気持ちは、よう分かるが……」


「ああ……、分かるが、何やねん?」


「やっぱり私らは、あっちの世界の人間やん。戦争を知らない日本で生まれ育った、ただのお笑い芸人やん。つまり、ただの足手纏いにしかならへんちゅーこっちゃ。お前、今までに何か格闘技やら武術とか習った事あるか?」


「いや、何も習ってへんし、ケンカも弱いで」


「だったら分かるやろ? お言葉に甘えて日本に帰ろう! 今がチャンスやん、元に戻れるで! 私らの、スカンピンの夢はどうなったんや? お笑い芸人で一発当てて、天下を獲るんやろ?」


「そ、そうや。その通りやで」


「だったら迷わず、日本へ戻るんや! まだ間に合う。あっちゃんの気が変わらん内に、異世界からオサラバや!」


「……あっちゃんは……?」


 魔法少女アビシャグの方を見ると、マントの下から手招きをしていた。

 おそらくこれから、押し寄せてくるゾンビの大軍勢を相手に、王国の存亡を賭けた一大決戦が始まるのだろう。

 もちろん彼女は、いつまでも待ってはいられない。

 よく知らないが、魔法使いは先陣を切って、最前線で戦いを繰り広げるはずだ。


 カヤタニの両眼には、うっすらと涙が浮かんでいた。


「アホ! いつまでグズグズしてんねん! 日本に帰るで! 戦争なんてまっぴらや! こんな所で死にたくないやろ?」


「カヤタニ……」


「迷うな! 私らの夢はどうなるねん? 夢の実現まで、あと一歩やったやろ? こんなとこで、道半ばで諦めるつもりか? お前の決心は、その程度のモノやったんかい~?」


「ち、ちが……」


「目を覚まして現実を見ろ~! ココは異世界やけど!」


 カヤタニは泣きながら拳を握ると、本気のパンチを相方の頬に繰り出した。コンビ結成以来、一番重いツッコミだ。


「ぐはぁ! ……効いたぜ!」


 地面に叩き付けられたダケヤマに、驚いたアビシャグが駆け寄ってきた。


「ちょっ?! 何やってんですか二人とも! 今は仲間割れを起こしている場合じゃないのですよ!」


 アビシャグがヒーリングと思われる魔法の呪文を唱えると、柔らかなラベンダー色した癒やしの光にダケヤマは包まれた。


「やっぱ優しいな、あっちゃんは……」


「はい?」


「目が覚めたぜ、カヤタニ!」


 カヤタニは、とうとう堪えきれなくなり、その場に泣き崩れてしまった。顔を覆った両手の間からは、大粒の涙がこぼれ落ち、相方のズボンに染み込んでゆく。


「カヤタニ! 後ろめたさを残して帰っても、面白いコントが披露できると思うか? 心に暗い影を背負ったままで、これからも人を笑わせる事ができるっちゅーか無理やろホンマ!」


「あ、アホ――――――――――――ッ!!」




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