異世界デビュー3
異世界の人達と打ち解けて、握手しまくるダケヤマに対し、早くも男性ファンが着いて、サインまで求められるカヤタニであった。
揉みくちゃにされて嬉しそうな二人に、置いてけぼりにされたダフニーが少しふくれっ面で近寄ってゆく。荒くれ者達に押し潰されそうになる前に、小さな功労者はカヤタニに救われた。
「ダフニーちゃん、ありがとう。お姉ちゃん達、ずいぶん助かったわ」
「そう? よかった……」
カヤタニに頭を撫でられていたダフニーは、次にダケヤマの両足にしがみついた。
「うわ!? コアラ?」
「お兄ちゃん、本当に楽しかったよ。大好き~」
ピッタリとくっ付いて離れようとしないダフニーを見て、カヤタニはふふん、と笑った。
「良かったやん、ダケヤマ。やっと女性ファンができたな」
「いや、女性ファンは前からいてますけど……」
「ほんまかぁ~? 私はスカンピンの人気が今ひとつなのは、お前がキモイからやと思ってるけど」
「そ、そんな失敬な! お兄さんカッコいいよな? ダフニーちゃん?!」
「うん、カッコよくて全部大好き!」
ダフニーは輝きを取り戻した笑顔で背中に回り、家猫のようにいつまでもスリスリするのだ。
その時、集まっていた人々に動揺の波が広がった。群衆が見事なまで二手に割れて、お笑い芸人までの無人地帯が栄光の道のようにできあがったのだ。
「何や何や? 俺達しょっぴかれるんやろか? 確かに無許可営業やったけど」
「何言うとるねん! 営業なんかしてへんわ」
青ざめたコンビが目を凝らし、割れた観客の先の先へと焦点を合わせると、会った事のある美女が独りで佇んでいた。ダケヤマは思わずダフニーを、子供達の集団へと逃がす。
「おい、あの人は……」
「ああ、確か城にいた騎士の内の一人で、え〜っと名前は……」
「ダイナゴン……さん?」
円卓の七騎士に名を連ねるダイナゴンは、護衛も付けずに颯爽とした姿で微笑みかけてきた。昨日のような鎧に身を包んだ正装ではなく、よそ行きのゆったりとしたドレスを着ており、花びらをモチーフにしたような可愛らしいデザインであった。ついつい豊かな胸元に目を奪われがちだが、腰に吊った長剣が只者ではないオーラを放ち、見る者をやけに緊張させる。
「わわ、こっちに来てもらえるようでっせ」
「あほう。余計な事を口に出して怒らせんようにな。私ら別に、何も悪い事してへんし」




