お笑いの行方2
「い、いやあああ! そ、そこは、らめなのおおおおおおおおお~っ!」
あまりに酷いダケヤマの絶叫に、カヤタニは叱責した。
「オイ、コラ! 一旦黙れ! 静かにしろ~! 大騒ぎしすぎると、笑い事でなくなる」
「それは私のおいなりさんだ」
「お前は日本語が分からんのか!? しゃべるなと言うとるねん! ちょっと我慢せい!」
「うひゃあああ! 無理無理無理ぃぃぃ!」
半裸のカヤタニの懸命な説得にも関わらず、とうとうダケヤマは騎士の円卓上を端から端まで七転八倒しながら踊り狂った。
「誰か~! 取ってくれえええ!」
憐れな男はブリーフを半ケツ状態までずらし、半狂乱になって三月ウサギのように跳ね回る。
この由々しき事態に、もはや怒りの頂点を超えた団長の無頼庵とルンバ・ラルは再び剣を握って立ち上がった。
さすがに冗談では済まされそうにない事を悟ったアスカロン、そしてのべ太は果敢にも二人の前に立ちはだかったのだ。
「団長、そしてルンバ・ラル殿! 客人に対して、そこまでする事はなかろう!」
「そうだ。元はと言えば団長が、芸人を挑発して暴走させたのが悪い。せめて愛想笑いぐらいはするべきだったのに」
「何を~!? そこをどけ~いいい!」
同じくトムヤム君の乱入を体を張って阻止したのは、意外にも無口な赤騎士穴金だった。
「穴金、邪魔だ! いいのか? 誇り高き騎士の円卓が、無礼者に踏みにじられたのだぞ!」
するとダイナゴンも両手を広げて、助太刀に割って入ってくれたのだ。
「いいえ、下品だけど面白かったわ。私は続きが見たいから、阻止させてもらうわよ!」
魔法使いアビシャグの場合、ずっと事の成り行きを見守っていたが、何とかこの場を収めようと頭脳をフル回転さていた。だが、いくら天才魔法少女とはいえ、荒ぶる円卓の騎士をまとめて相手にする事は不可能であった。
一度剣を抜いた騎士は、火を噴くドラゴンに等しい。下手に近寄ると火傷して、その体を無惨に引き裂かれるだろう。
「ちょっとカヤタニいいい! 今、このあたりに隠れているんや! 脱ぐから見てくれへんか~?」
つま先立ちのダケヤマは、ブリーフをTバックのように引き上げながら、虫の侵入をギリギリ阻止している状況を相方に訴え続ける。
「アカン、絶対にアカン! 全部脱いだら問答無用で処刑されるのが分からんのか!? 周りをよ~く見てみい!」
「そう言われてもおおお! じっとしてられへんわあああ!」
ダケヤマが再びくねりだすと、ついに団長とルンバ・ラルはアスカロンとのべ太の壁を突破し、卓上の半裸二人組に鬼の表情で詰め寄った。
「無礼者め~! 我が剣で真っ二つにしてくれるわっ!」