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おわコン!~お笑い芸人は異世界で最高のコンビ!~  作者: 印朱 凜
第5章 倦怠期フライドチキン
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ラスボスはゲームマスター3


 ネクロマンサー・ヘカテは、防御力を失ったアスカロンにとどめを刺すべく、攻撃魔法の呪文(スペル)を詠唱し始めた。ゴミ屑を見るような目での悪態付きで……。


「……我ら、幾千年にも渡る悠久の時を経た超霊長類なり。貴様らの一生など、瞬きにも等しいわ。さあ! 己の無力さを、骨の髄まで感じて死ね!」


 ヘカテが指先から黒い稲妻を発したが、カゲマルを始め、のべ太もアビシャグも、刻一刻と数を増すスケルトン戦士を食い止めるのに精一杯だった。


「もうアカン! 殺られる!」


 鼓膜を痺れさせる、嫌な音が響き渡る。

 ダケヤマは、心を掻きむしられるような光景を想像しながら、恐る恐る目を開けた。

 ――そこには、アスカロンに覆い被さる赤い鎧姿の人物が、更に赤い鮮血を床に滴らせていたのだ。


「あ……穴金(アナキン)……!?」


「俺は……悪魔に魂まで売った訳じゃない……これで皆に証明できた……かな?……」


 そこまで言うと赤騎士は、装備の一切合切をポリゴン状の粒子に溶かしながら倒れた。早くも魔法の杖を抱えたアビシャグが二人に駆け寄り、回復(ヒーリング)魔法の儀式に取り掛かる。


 ネクロマンサー・ヘカテを侍らす白い悪魔ヤマナンは、ただただ不気味に微笑を湛えながら、緩い文言を吐いた。


「ふッ……面白くなってきた……じゃないか」


 ヤマナンが一瞥するだけで、円卓の騎士・のべ太自慢の強弓が、矢筒や防具と共にポリゴン粒子に還元され、煌めきながら消え去った。凶大なゲームマスターの権限の前に3名のプレイヤー達は、インナーを残して裸同然の状態まで戻されたのだ。


 もはや、これまでなのか……アスカロンは額から血を流しながら、傍にいたダケヤマに伝える。


「……すまない、ダケヤマ殿。こんな戦いに巻き込んじまって……」


「何言うとるねん、アスカロン! 俺は相方のカヤタニを助けるためやったら、一人でもここまで乗り込んできてたがな。どっちかって言うたら、ありがとうや。こんなとこまで連れてきてくれて、一緒に戦ってくれて!」


 それを聞いたアスカロンは、全身骨折した痛みに耐えながら続けた。


「ダケヤマ殿、君を見込んで最後の頼みがある。……聞いてくれ」


「何やねん? 縁起でもないなぁ、最後の頼みなんて」


「ふふふ……さすがだな、まだやるつもりなのか? 俺は……君の、お笑い芸人としての気概と能力を高く評価している。そこでだ……」


「だから何やねんな? まさかとは思うけど――?」


「そのまさかだ。奴に……ヤマナンに……一発かましてきてくれ……!」


 白き悪魔と黒き死霊魔術師は、楯突く者達を嘲笑うかのように一瞬、陽炎のように揺らめいたのだ。










 


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