38日目 「特別なかんけい?!」
「お化けってなんだろうね......」
みよはそうぽつりと呟くと、
「わっ!!!」
突然後ろから肩を掴まれた。振り返ると、そこには小悪魔のように微笑むリリの姿があった。
「えへへ、こういうのやってみたかったんですよね~」
「もう! びっくりした~リリもこういうことするんだね」
みよは声の正体に気づいて胸を撫で下ろす。
「その......今までこういうことできる友達がいなくて」
リリは少し恥ずかしそうに手を合わせる。
「そっか」
みよは柔らかな視線を送った。
「大丈夫、私達、ちゃんとリリのお友達だから。ね?」
ふと視線を移すと、ベッドの方には小さな膨らみができていた。よく見るとぶるぶると小刻みに震えている。
「まさか、本当にお化け??」
みよがそういうとベッドの近くにいたマリーがサッと布団を剥がす。
そこには......ぶるぶると怖がって震えるみいの姿があった。小さな耳はぺたんとしており、尻尾も丸く縮まっていた。
「大丈夫よ! 何もいないわ!」
マリーは優しくみいを包み込み、頭を撫でる。
「あ! 私、そんなつもりじゃなくて......怖がらせちゃったかな」
リリが不安そうな顔をすると、
「大丈夫よ。あの子少し怖がりなのよ。すぐに元気になるから問題ないわ」
シエルは呆れた顔でふわふわと飛びながらそう言った。
マリーの腕に包まれたみいは次第に震えもおさまり、目元には穏やかで安心し切った気配が漂っている。
「なんか、すごい。ママみがある......」
みよは2人の姿を微笑ましそうな目で見守る。
リリは依然として心配そうにみいの方を見ていたが、2人の姿を見て少し落ち着いたようだ。
「あっ、そうだ。リリは好きな人とかいないのー?」
みよは思いついたようにそう呟き、興味津々にリリに詰め寄る。
「え、ええとお母さんとか......?」
「そういうのじゃなくて!」
さらにグイッと距離をつめる。
「えっと......その......そもそも年の近い子と話したことがあんまりないから」
リリが少し困ったように微笑むと、
「え!ということはもしかしておじさまとかが好きなの?!」
とみよは少し揶揄うように尋ねる。
「ち、違うよ~! もー」
そう答えるリリの表情は崩れ、笑っていた。
「やっぱりないか~私もそういうの全然なくてさ」
みよがそういうと、マリーが近づいてくる。
「みい、もう寝ちゃったみたいね」
みいの瞼は既に閉じており、口元にはほんの少し微笑みが浮かんでいる。
「疲れちゃったのかな」
「そうかも知れないわね!」
マリーはあっという間にみいを寝かしつけてしまった。
「それよりなんの話をしてたのかしら?」
「あ、えーっとね。好きな人いる?って話」
そう聞くとマリーは納得したように軽く手を叩くと、
「私はみよが好きよ!」
マリーはまっすぐみよの方を見つめて微笑む。
(ま、まぶしい......)
「違うよマリー、そういうのじゃなくて」
みよがそう軽く否定すると、マリーは首を傾げながら
「だから、私はみよが好きよ。だってとっても可愛くて優しくて、とても頼りになるわ! 違うのかしら......?」
と真剣に話す。
「えっと、それは......」
みよはあまりにもまっすぐな好意にパーッと顔を赤る。
「え! もしかしてお二人ってそういう?」
リリはいつになく目を輝かせている。
「あーいつものことだから、気にしないでちょうだい」
シエルがそう宥めるが、リリは依然として目を輝かせている。
「あー......これはダメね。じゃあ私はもう寝るわ」
そういうとシエルはふわりと飛んで行き、みいの横でそっと体を丸めた。
「で、お二人はいつからそういう関係に??」
今度はリリが食い気味に2人を交互に見つめた。