35日目 「生きた家と昔のお話」
「この家、生きてるのよ」
その場にいたみんなが驚いた表情をしているのと対照的にシエルは納得したような顔で口を開いた。
「聖獣ってことね......」
「あら、そこまでお見通しだったのね」
ルキアは淡々とそう答える。
「いや、はじめから確信していたわけじゃないわ。もしやとは思っていたけど」
「ねえ、その聖獣っていうのはなんなのかしら」
マリーはきょとんとした顔でそう尋ねる。
「それは私から説明させて貰うわ。あなた達、精霊様については知ってるわよね?
ルキアがそう切り出すと、マリー達は頷いた。
「私の家はユースフィリアに毎年植林することで精霊の加護を受けているわ!」
「ああ、ユースフィリアだときっと風の精霊のことね」
「え、もしかして属性とかあるの??」
みよは少し食い気味にそう尋ねる。
「あら、詳しいのね」
「ええと、昔読んだ本に書いてあって」
(嘘ではないよね......よくあるファンタジーものに出てくるから! なんて言えないし)
「そうなのね。それなら話が早いわ。はるか昔の話なのだけど、1000年ほど前に精霊も巻き込んだ大きな戦争があったの。その時に唯一消滅したのが土の精霊。各精霊にはそれぞれ特別な力があって、土の精霊は"物に魂を吹き込む力"を持っていたの」
「物に魂を吹き込む力?」
みいは首を傾げている。
「命を吹き込まれた物達は、自らの意思を持って動くことができるようになった」
「そして一様に、強力な力を持っていた」
シエルは真面目な口調でそう付け加える。
「そうね。そしてそれらは"戦争の道具"になった。形は様々よ。弓やら大砲、薬瓶とかまであったらしいわね」
「それらは聖獣と呼ばれ、全て土の精霊の命が吹き込まれた物だった。でも、戦争でその全てが力を失ったとそうされているわ」
シエルはそれを聴いて軽く頷きながら呟いた。
「そう聞いていたから、驚いたわ。こんなに大きな聖獣がまだ生き残っていたなんて」
「そう、つまるところこの家が聖獣なのよ。まあ、初めはもっと小さかったのだけどね」
そう言いながらルキアは壁を撫で、優しい笑みを浮かべる。
「おそらく武器庫か何かの聖獣だったんでしょうね。初め私が森に来た時は、ただの瓦礫にしか見えなかったわ。それでもなんとなく伝わってきたのよ。この子がなんとなく"助けて"って言っているような気がして」
「そうだったんだ......」
(話はなんとなくわかったけど、この家自体が生きてるなんてなんだか本当に信じられないな)
「改修魔法で復元した後に資材を拾ってきて改築を続けてこうなったってわけね」
みよ達は改めて屋敷を見渡している。
「これだけの改修と改築、相当大変だったんだろうなぁ」
「そうね! それに相当な魔法の才能がないと成し得ないことね。本当にすごいわ!」
「住まわして貰ってるんだから当然のことよ。ちょっと危ないけれど、その分信頼は厚いから」
そういうと少しガタガタとシャンデリアが揺れる。喜んでいるのだろうか。
その揺れに驚いたみいが震えているのをマリーが頭を撫でて落ち着かせている。ちょっと微笑ましいかも。
「まあ、というわけなのよ。本当にごめんなさいね。お詫びとしてはなんだけど、困ったことがあればいつでもこの森に戻ってきなさい。それくらいのことしかできないから」
「私も......また会いたいから。用事とかなくても全然戻ってきてね!」
リリは目をキラキラとさせている。
「あら、リリは当分忙しいんじゃないかしら?」
ルキアは少しいじらしく微笑みながらそう呟いた。
「えー、みよ達が戻ってきたら少しくらい遊んでもいいでしょ?」
「さあ、どうかしらね」
「そんなぁ」
そんな会話をしながら夜は更けていった。




