34日目 「あるべき姿へ」
パチンと指を弾く音がその狭い空間に響き渡る。
「ストップストップ! 精霊よ、全てのものをあるべき姿へ」
そうルキアの聞こえたかと思うと、屋敷は元の姿を取り戻していた。
同時にシエルの元に集まった光も消えていた。
「あ、危なかった......貴方達、怪我はない?」
ルキアは息を切らしていた。みよ達は状況を掴めない様子だった。
「なんともないなら良かったわ」
「何ともなくないです! 危うく死にかけたんだから色々説明してください!」
「一旦客間に行きましょうか」
ルキアの後ろからリリがひょっこりとこちらを心配した顔で覗き込んでいる。
「それにしてもあんなに強大な魔法、やっぱり貴方、本当に妖精なのね」
「それは前に言ったじゃない。まだ信じてなかったのかしら」
シエルは済ました顔をしている。
みよは恐る恐るルキアに尋ねる。
「そういえばシエルのあれ、途中で消えちゃいましたけど、もし消えなかったらどうなってたんですか?」
「屋敷が消し飛んでたわ」
あまりにも冷静にそう答えられたのでみよは少し呆気に取られていた。マリーは目を丸くしている。みいは生きた心地がしないような放心状態に陥っていた。
そんな話をしながら一同はあんなに見つからなかった客間にたどり着く。
部屋に入ると全員が席についた。シエルも珍しくちょこんと椅子に座っている。
「まずは本当にごめんなさい! これは私のミスだわ」
ルキアは本当に申し訳なさそうに深々と頭を下げる。
「とりあえずみてればわざとじゃないのは目を見ればわかるわ。何があったのかゆっくりでいいから教えてくれる?」
意外にもマリーは落ち着いていて、ルキアの目をまっすぐ見ながら話を聞いている。流石のマリーも怒っているのかその目は笑っていなかった。
「とりあえずわかりやすく一つづつ説明していくわね」
みいもようやく落ち着いたのかしっかり話を聞く姿勢になっている。
「簡単に言えば貴方達はこの家の防犯に引っかかってしまったの。私がいる時は大丈夫なんだけれど、私がいない時にリリ以外が入るとその屋敷に来たものを閉じ込めて始末するように働いてしまうのよね」
ルキアが来なかったら本当に死んでいたかもしれないと思うと震えが止まらない。そんな中、シエルは冷静だった。
「でもそんなこと普通じゃありえないわ。魔法を使ったならわかるけど、そんな気配はまったくしなかった。何かありえないことが起きてるのは確かよ。こんな目に遭ったんだから流石に教えてくれてもいいと思うんだけど」
シエルがそう言うと、ルキアは神妙な顔で話し出す。
「本当にこれは言う必要がないと思っていたのだけれど、こうなってしまったら仕方がないわね。繰り返しになるけど、この事は誰にも言わないで」
全員が息を呑み、こくりと頷いた。
「この家、生きてるのよ」