32日目 「ちゃんとみんないるよね?」
「マリー、みよ、いるの?」
ガチャリと音がした方向から表れたのはみいだった。その表情にはどこか焦りが見えた。
「シエルがいないのです! それに色々見てみたけど、私達がさっきいた部屋、見つからない.....」
「うーん、シエルのことだからまた何処かをフラフラ飛び回ってるんじゃない? それはいいとして、私達がさっきまでいた部屋が見つからないっていうのは確かに変かも」
みよがそう言うと、みいはうんうんと頷いた。
「それは少し心配ね......それなら探しにいきましょ!」
マリーは先ほどまで一緒に開いていた本を閉じ元の棚に戻す。三人がそろそろと廊下に出ると、三人とも確かに先ほどと景色が変わっているのを感じた。
三人は左右の扉を確認しながら廊下をただひたすらにまっすぐ歩いていく。
「ねえ、マリー。このお屋敷ってこんなに広かったっけ?」
「正面からしか見なかったから、実は奥は広いのかしら」
みいはこの異様な雰囲気に二人の後ろに隠れて袖を掴んでいる。
「と、とにかく、この三人だけでもはなれないようにしよ」
そう言ってみよは二人の手を握り、三人で横になって歩いた。しばらく歩いても周りの景色は一向に変わらない。
「ちゃんとみんないるよね、大丈夫?」
「いち、に、さん、よん、ちゃんと四人いるのです!」
ミイがそう言うとみよは少し青ざめた顔をしている。
「え、四人......?」
恐る恐るみいの隣をみやるとそこにいたのはシエルだった。
「ばあ! どう? 驚いた? 戻ってきたら誰もいないんだからびっくりしちゃったわ。貴方達、こんなとこにいたのね」
「い、いま驚かす必要あったですか! 本当に心配したのに......」
みいはご機嫌斜めのようだ。
「だって貴方達なんだか怖がりながら三人で一緒に歩いてたんだからそりゃあ驚かしたくもなるでしょ」
「えっと、じゃあこの廊下もシエルの仕業ってこと?」
「人様のお屋敷に何かするのはあんまり良くないかもしれないわね!」
(珍しくマリーがシエルを責めてる。マリーも怖かったのかな。こういうどこも可愛いから私としてはおっけいなんだけど)
「廊下? 何のことかしら。私はたまたま歩いてたら貴方達を見かけただけよ」
シエルは本当に何も知らないという顔でふわふわと浮かんでいる。
「それに今は広間に戻ってまた折り返してきただけなんだから何もおかしなところなんて......」
と言いながらしえるは後ろを振り向いた。
「あるわね。」
四人に静寂が訪れた。