31日目「時間のまほう」
みよとマリーは手を繋ぎながら長い廊下を歩く。
「それにしても大きなお屋敷だよね、みいは走って行っちゃったし、シエルもいつのまにかどこかへ飛んでいっちゃったけど、どうする? マリー」
みよはこれからどうしたものかとマリーに話しかけるが、反応はなかった。
「マリー? どうしたの?」
そう言うとマリーはハッとしたように
「あ、ごめんなさい! 少し考えごとをしてたの」
と答える。
「考え事? 何かあった?」
「リリ達は森に逃げてきたって言ってたわよね? だったらこのお屋敷はどうしたのかしら」
(確かにそうだ。この家ってどうしたんだろう。逃げてきたのなら家を買う余裕とかないよね。それとも知り合いの家? うーん。でもここにきてからルキアさんとリリ以外見てないし......)
「確かにそうだね! うーんなんでだろう」
とみよも考え込んでいると、
「あんまり詮索するのも良くないわよね! 今は別にいいわ。行きましょ!」
マリーはそう言いながら近くにあった扉に手をかける。ガチャリと扉を開けると、そこにはたくさんの本が広がっていた。みよは目をキラキラさせている。
「マリー、見て見て! 本だよ。こんなにいっぱい」
その姿を見たマリーは、
「良かったわね、みよ! 少し見ていく?」
と提案した。
みよがうんうんと頷くと一冊の本を手に取る。
「なんだろうこれ......」
表紙には時間魔法と書かれていた。恐る恐るページをめくるとそこには"対象の時を戻す魔法"について書かれていた。これを見たみよは少し興奮した様子でマリーに話しかける。
「時を戻すって、魔法ってこんなこともできるの?!」
そういうとマリーは、
「そうね......聞いたことないかも。でも本当だったらすごく素敵ね!」
マリーとみよは近くにあったソファに座り、肩を寄せ合いながら本を読む。
「うーん、結構長いしちょっとむずかしいね。とりあえず最初の方だけ読んでみる?」
みよがそう言うと
「それがいいわね!」
と、マリーも同意する。
冒頭を少し読むと、次のようなことが書かれていた。
"時間魔法とは対象の時を戻す魔法です。多くの場合その対象は無機物に限定されます。修復魔法と呼ばれることもあり、古来からものの修復や建物の改修などに用いられてきました"
「思ってたのとはちょっと違うけど、でも色々できそう!」
みよがそう言うと、マリーは本のある部分を指しながら
「あ、でもここに使える人間はとても少ないって書いてあるわ」
と呟いた。
「え、うーん。そっか。マリーはどう? 使えそう?」
とみよが聞くと、マリーは静かに首を振った。
「ごめんなさい......私にはできないみたい」
マリーが少し申し訳なさそうにそう言うので、
「ううん、いつかこういうのが見て見たいな~って思っただけだから全然大丈夫! マリーの魔法はすごいんだから、気にしなくていいんだよ?」
とみよはマリーに優しく微笑みかける。
「やっぱりみよ"先生"のおかげね!」
とマリーが少し揶揄うように言うと、
「もーそれやめてって言ったでしょ?」
とみよは答えながらも満更でもない表情をしていた。
そんなやりとりをしている時、後ろからガチャリと扉の開く音が聞こえた。