表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

嵐の前の静けさ? ~其の八~

「ところで、真由美さん達はなぜここに?」

みゆりが今更ながらに聞いた。

「あー、このバカ兄貴がいつの間にか失踪してたんで捜索に出たら、何でか森の中で久保くんからパクった車に乗って丸一日寝てて、なんでやねんって思ってたら、獣に追われてるから逃げるぞって、時速百十キロでここまで来て、そしたら何故か久保くんとスィフトちゃんがいて、そうしてるうちにみゆりが来て、連れて来られた感じ」

真由美が今までの経緯を話すと、直人が目を見開きぎょっとしていた。真由美はてっきり、彼は車を盗んだ犯人が博で驚いているんだと思ったが、

「え………パクったの?!」

と更に目を丸くして聞くので、さすがの周りも引き気味だった。

「えっ………。もしかして、盗まれたの気付いてなかったんですか?!」

みゆりが《ありえない》と口をあんぐり開ける。

「…………もしかして、すごい天然?」

真由美も正直、大丈夫かこの男、と失礼ながら思ったが、博は平然と

「直兄も天然だけど、あっきーに比べりゃ全然まともだよな~?あいつ恐ろしくて家事とかさせられねぇもん」

「あ、ムリムリ。絶対無理だね。一人暮らしとか出来ないからアイツ。てかそもそも俺天然じゃねぇよ。おまえ、ちゃんと書き置きしてっただろ?そういう場合パクったって言わないんじゃねーの?」

「え?書き置き?」

発覚した事実に驚きつつ、真由美が聞き返す。

「ほら、これ」

そう言って直人がポケットから差し出した紙切れには。

《車借りっぞ。by平成のどらえもん》

それを見た一同しばし沈黙。

「用件短っ!」

「六文字だわ」

綾子やリーナが口々に言う横で、真由美が兄を問い詰める。

「書き置きなんてしてったの!?」

「ふふん。男としてのマナーだからな」

ニヤリと何故か得意気に笑う博に、いつもの真由美のツッコミが炸裂。

「威張るなー!」

「てか書き置きしてたってパクリはパクリだろ」

ルシフェルは直人のお人好しというべきか天然と言うべきかの発言に正論をぶつけるが、

「え……だって返ってきたし。返ってこなかったら盗まれたことになるけど」

と、きょとんとしたままの直人。

(やっぱり天然だよこの男……!!)

と、誰もが思った。大体、かなり年下のルシフェルに言われる時点でどうなんだ。

そして彼より天然の望月兄とは一体どんな天然っぷりを発揮しているのか、想像するだに恐ろしい。

「平成のどらえもんでよく誰か解りましたね」

到がその紙切れを掴んで呆れ顔で見ていた。

「むしろ名前書かれるよりわかりやすいし。かなり強烈なガキで、いつもどらえもんがどうのって騒いでたから」

直人は博の事などどうでも良さそうに、幸せそうに大好物のフルーツ牛乳を飲んだ。

「直っちもどらえもん、可愛いと思うだろ?」

と言う博の問いかけにも

「別に」

と即答する始末。

「ひでぇ!直っち!おまえはどらえもんよりキティの方が可愛いというのか!?この少女趣味!!」

「は!?」

博の意味不明な台詞にまたもぎょっとする直人。このままでは彼の表情のイメージが、ぎょっとした顔とどうでもよさげな顔の二種類に固定されてしまいそうだ。実際美人のぎょっと顔というのは笑顔よりインパクトがある。

「誰もキティがいいなんて言ってないでしょ!」

「やー、久保君からかうとおもしれぇんだもん」

ケラケラしながらおどけてみせる博。真由美は確信した。

(やっぱり………!やっぱりお兄ちゃんがみんなをからかっていじめてたんだ……!!)

「でも……気になりますね。その追ってきた獣………。まさかまだ魔物がいたりしないですよね?」

到が先ほどの《第二の戦いが起こる》という事実を連想し、思案気に眉をしかめる。

「魔物よりこえーよ!!何てったって鷲だぜ、鷲!!あんなでけぇ、しかも空飛ぶ鳥!!」

「……………は?鷲?」

二メートルはある肉食獣とか言ってなかったか、兄は。真由美は頭が混乱してきた。

「なんだ、鷲だったんですか?」

到は拍子抜けと同時に安堵して聞き返す。

「なんだじゃねー!!俺はなぁっ!空飛ぶものが大っ嫌いなんだよ!!大きければ大きいほどな!!存在自体が俺に対する嫌がらせだぜ!!あー思い出しただけで鳥肌がッッ!!」

ガタガタ震えわめき散らす博を見て、綾子はいつもの如くこう言った。

「………やっぱおまえ、わけわかんねぇ」

「別に、博さんの強さなら、恐るるに足らずじゃありませんの」

みゆりも呆気にとられていた。

「でもそういえば、博さんて飛竜嫌いでしたよね」

「やっぱトラウマ?」

到とリーナがそう気にする横で、直人が少しだけ驚いた顔を見せて、それから目を細めて笑った。

「鷲なんて滅多に低空飛行しないから、そんな怖がるようなもんじゃないのに。お前にも苦手なものがあったんだな。今度からかって遊ぼう……」

「なんだとー!!俺は直兄の弱点を知ってんだぞ!!返り討ちにしてくれるわ!!」

博が威勢よく言い返すが

「……………要らないのか?」

と、直人が持っていた紙袋から饅頭の箱を出した途端、

「嘘です!要ります!ごめんなさーいっ!!」

と泣き付くのだった。

(アホだ………ここに正真正銘のアホがいる!!)

真由美はせめてもう少し幸広を見習って欲しいと思った。確か兄の方が年上のハズ……なんだけど。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ