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【3話】役職を手に入れよう!その2


転生してから、1週間が経った。

あの後更に半日かけて私は、とある求人広告を見付けた。

幸い店主さんが、目があって会話もある程度出来るタイプのモブだったから、コミュニケーションも上手いこと取れて、あっという間に役職を手に入れる事が出来た。


【パン屋の店員A】


と言う新しい肩書きを。


いやいやいやパン屋かよ!

異世界転生して私パン屋の店員になったのかよ!

って自分でツッコミ入れるくらいには、ファンタジーのファの字もない普通職なんだけれども……。


これには訳がある。


そもそも私ブラック勤めでステータス異常起こしていたこと以外では、至って特徴のない凡人なのだ。


趣味なんかも無いし、生まれ持った才能とかもない。

仕事で必要だったから、ある分野にだけ偏った知識だけはそこそこ豊富にあるけれど、残念ながらこの世界にその知識は全く役に立たないし、生前持ってた資格と言えば、ワープロ検定とエクセルだった。

勿論ここは異世界。PCなんか存在しない。


生前なけなしに持ってたスキルが何一つ通用しない私が、唯一この世界で生きていく為に使えそうなものと言えば、長年培った【接客スキル】のみ。


いらっしゃいませからありがとうございましたまで、接客だけは並以上にやれるから、それをフル発揮するしかなかった。

あとパン屋さんなら余ったパン貰えそうだし。

と言った下心付きで。


ともかくこう言った事情があって、晴れて女Aからパン屋の店員に昇格したのだ。



実は、昇格してすぐに少し変わったことがある。


それは見た目。

まだ顔面には鼻と口しかないし、髪の色も普通。

だけど、髪型と服装が結構大幅に変わった。


3人に1人くらいのどこにでもいる女Aのビジュアルから、パン屋の店員っぽい黄色いエプロンと焦げ茶のYシャツ+ロングスカートの服装と、左右2つに結ったふわふわの髪にまでがらりと変わった。


ちなみにここが不思議なんだけれど、私一切着替えていなかったりする。


パン屋の仕事が決まった瞬間に辺りが一瞬光って、収まった頃にはこの格好になっていたのだ。

スキル名とか分からないから、命名して"自動お着替え機能"。なんかファンタジーって言うか、ゲームの装備変更っぽいと思ったのはご愛嬌。


まぁこの自動お着替え機能により、街中に大中小様々な大きさの私と同じような見た目のモブがわんさか居た状態から、数える程度にまで絞ることが出来たので、当面の目標【目を獲得】まで一歩近付いた……と思いたい。



あともう1つ、嬉しい?事。


役職持ちになって行動範囲が微妙に増えたからなのか、前述の自動お着替え機能とは別に、私は僅かながら転生者っぽい仕様をほんの少しだけ使えるようになった。


それは、ものすごーく目を凝らすと辛うじて見えるもの。


【ステータス画面】


ものすごーく目を凝らしているから、ほとんど見えないし持続性もすこぶる悪いけれど。なんとものすごーく目を凝らせば、自分の名前と役職と年齢が把握出来るようになった。ステータス見えるって、ますますゲームっぽくなったけれどまぁいいや。


"ゲームでは見えないだけでキャラにもその世界では人生がある"の法則は、モブに転生した時点であっさり打ち砕かれたから、その辺に対して全く期待していないので、もうゲームっぽくなろうが現実引きずってようが心の底からどうでもいい。


まぁこのステータス見える機能も、ものすごーく目を凝らしているから、人のステータスまではまだ見えないせいでほぼ役に立っていないのだけれども。


それで分かった私の最低限のステータス。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


【名前】女A

【年齢】12

【職業】パン屋の店員▼

【■■■】

■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■


【■■■■■■■■■】


■■■■■■■■■■■

■■■/■■■


■■■■■■■■■■■

■■■/■■■


■■■■■■■■■■■

■■■/■■■


■■■■■■■■■■■

■■■/■■■


■■■■■■■■■■■

■■■/■■■


【■■】

■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



うん、重要なことほぼ分からない!


【パン屋の店員A】って肩書きを得ても、名前は相変わらず【女A】なのね?!


とか。


下の■■■/■■■はいったい何を表してるの?


そもそも■■■とか、どうやって発音するの?


とか思うけれど、ひとまず置いておいて。


予測した通り、私の年齢は12歳。

それが分かっただけでも十分な収穫と言えるだろう。


だって自分が、年齢詐称していなかったのが分かったのだから。



実は1週間前。

履歴書とかは書かなかったんだけれど、私、店主さんにちゃっかり「12歳です☆」って言っちゃったりしてたのだ。若い方が体力あるし、就職率上がるかなぁって思って。

ただ結局見た目だけで推測するしかなくて、ほぼ賭けに近いから内心違ったらどうしようってドキドキしてた。万が一、実は12歳に見えるだけのロリババアとかだったら、ねぇ?ちょっと罪悪感あるじゃない。


まぁモブだからそんな事はまず起きないって、分かってはいたんですけれどね。

ロリババア属性持ちの通行人とか、キャラ濃すぎるからモブとして成り立たないだろうし。

それでも一応、一応ね。



転生しても結局仕事をしなくちゃいけないのは、ちょっとしんどいなぁってなるけれど、生前とは仕事をやる意味が違う。


前は稼ぐ為に仕事をしていたけれど、今は最終目標【脱モブキャラ】する為に仕事をしているから、まだこっちの方がやりがいがある。生きる為の難易度は大幅に上がっちゃったけれど。


あんまり望んだ形では無かったとしても、せっかくの異世界転生。第2の人生、モブライフ楽しむぞー!


なんて鼻歌混じりに浮かれていたから、


だいぶ早めのバチが当たったのかもしれない……。



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