【24話】魔法と新たな出会い
スランプ期間が長すぎて使い方を忘れてました。
放置期間中にも関わらず感想くださった方ありがとうございます。色々あり、まだまだスランプ続行中ですが、とりあえず稚拙でも終わりまでは書いてみようって気になりました。
訓練に勤しむ騎士の人達の声をBGMに、ぼーっと空を見つめている。
今回はサボりじゃないよ。
急にお昼休憩が、お外で取りたくなったから取ってるだけで。
硬めのパンを齧りながら、ため息1つ。
見ていたのは空じゃなくてステータス。
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【名前】ナイ/女A ⚠︎
【年齢】13
【職業】王宮使用人▼
【■■■】
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【好感度パラメーター】
・シャッテン・スティロアビーユ▼
015/100 ︎ ⤴︎
・ヴァルデ・ベルク▼
005/100 ⤴︎
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・アシュレイ・スティロアビーユ▼
055/100 ⤴︎
【■■】
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見習いが取れている。
仕事内容は変わらず洗濯と掃除ばかりしているのに、妙に動くモブ達からひそひそされるから何かなぁっと思ったらこれだ。
極めつけはいつも通り部屋に戻ったら、マリーナから、
「昇格おめでとうナイ!」
と、盛大に祝われたこと。
なんだなんだ怖いんだけど。
何もしていないのに何かしたことになって、ステータスが著しく変化する。
同じようなことが去年あった。
「(絶対レイがなんかした)」
だから関わらないようにしてたのに……。
レイの好感度が、恐ろしいくらいに伸びてるのも気になるし。
現状把握しているツェルとヴァルデの2人が50以下なのに対して、レイだけが55と言う脅威の数字を叩き出している。
30も伸びている。おかしい。
こんな簡単に好感度上がる人だっけ?
一応隠れキャラだよねあの人。
私の何がここまでレイに気に入られてるのか分からないけれど、原因は分かってる。
「(絶対レイの部屋で暴れたことだ……)」
あの日から3日間ほど、レイの寝具と言う寝具全てに口を出して、やれそうな所は片っ端から直していった。
それこそ枕とかベッドとか。
業者が関わってくることまでは即日で対応出来なかったけど、私がやれそうにないことはヴァルデに任せて対応してもらった。
食事面にも口を出したし、果てはレイが寝る前にハーブティーなりホットワインなりを飲ますように要求もした。
徹底的にやってから、目が覚めて悔いた時には全部の指摘が終わった後だった。
「(だってあんなに酷いなんて思わなかったんだもん)」
生粋の接客魂は、異世界でも発動してしまったようで。
やってしまったことに変わりは無いから、諦めて現実逃避していた、がいまの状態に近い。
「魔力溜まってるなんて言われたけど、魔法なんて使えないしさー」
自分の中に魔力があると知ってから、何回か魔法に挑戦してみたけれど、結果は無意味だった。
それっぽい詠唱を唱えてみたところで出来やしない。
「ファイヤーボール出ろー…………出ないよねー」
折角ファンタジーな世界に来たんだから、魔法使ってみたいんだけど。
何か手掛かりが掴めるかなぁって思って、騎士団の練習風景を観察させてもらってるけど、奴ら剣を振り回すばかりで魔法を使わない。
「騎士は魔法を使わないんですかそうですか」
しょげていれば、
「そんなことねぇぞ?今の時間が剣の訓練なだけだ」
頭の上から声がする。
「.......……なんでそんな所に居るんです?」
「サボり?」
どうして疑問形。
私の座っていた根っこに繋がる形で、大きな木の幹にその人は居た。
赤い髪なのに緑色の目。
そのミスマッチさが逆に、その少年の明るさを表現している。
もっとも、記憶の中にあるその人はもう少し大人びていて、着ている服も黒じゃなくて白だった。
「俺はアストリット・フォンハルデン。お前は?」
「(攻略対象来ちゃった……)」
このタイミングで主要キャラクターと遭遇するとは。
彼ーーアストリット・フォンハルデンは、【フォーチュンラブ❤︎アドベンチャー】において、主人公の幼馴染に属するキャラクターだ。
幼い頃に危険に晒された主人公を守れなかったことから、強くなる為に最年少で騎士団入りをした所謂エース。
その信念は常に主人公を守ることに特化していて、王宮で再会した主人公を色々と手伝ってくれたりする為、共通ルート内において1番登場頻度が高い。
故に、彼を1番初めに攻略するユーザーが多いのだ。
かく言う私も、ゲームを買ってすぐに攻略した。
ただアストリットルートでは敵が違う為、ツェル率いる王宮組はほとんど出てこないし、レイに至っては序盤でちらっとそれらしい人物の一言が入るだけで、あとは全くシナリオに参戦してこない。
だから関わることはないと思って、特に考えないようにしてたのに。
ここで遭遇するとは誰が思っただろう。
「聞こえてんのか?」
「あ、えっとナイです」
「ナイか。メイドがここに居んのは珍しいから声掛けたんだが、お前魔法に興味あんのか?」
まじまじと見られつつそう言われる。
確かに彼の言う通り、騎士達の訓練場にメイドらしき姿のモブは私しかいない。
「魔力があるって言われたんですけど、使い方が分からなくて」
「それで見てたんか」
嘘は言ってない嘘は。
誰がとかなんでとか主語を抜かしただけで。
だってこの国の第1王子が落ちてたから、介抱してたら魔力あるって言われました!なんて言った暁にはどうなる事か。
最早お決まりの考え込みを発動していれば、木の幹に座っているアストリットが器用に上半身を傾けて、覗き込むような動作をした。
「お前、さっき妙な事言ってたけどあれなんだ?」
「妙な事?」
「ふぁいあーぼーるとかなんとか」
「あー」
哀しきかな。どこまでも否定され続けているファイアーボール。
存在しないのはもう分かってるよ。でも口に出しちゃうのよなんでか。
「魔法で火の玉?が出せたらなぁって思って」
「嗚呼だからファイヤーボールか」
私が考えたんじゃないけどね。だいたい火の魔法と言えばファイヤーボールだって、そう決まってるのよ初めから。
だから頼むから、頭の弱い子を見るみたいな悲しい視線を、私の遥か上からなみなみと注がないで欲しい。
「火の玉ねぇ。火の第二魔法か」
「第二魔法?」
初めて聞いた単語に疑問を持てば、
「ちょっと待ってろ。そっちに行く」
と言って、アストリットが落ちてきた。
落ちてきた?
スローモーションみたいに、前屈みになったアストリットが落下する。
慌てて意味もなく両腕を伸ばせば、強い風が私の手を弾き返した。
そして、あわや大惨事になりそうな体勢で落っこちたアストリットは、
「わりぃ、髪の毛ぐしゃぐしゃにしたな」
涼しい顔をして私の頭を撫でた。
何が起きたのか分からなくて、両腕を不自然な姿勢で伸ばしたまま微動だに出来ずにいれば、小さく笑われてしまう。
「何?今の」
「風の第一魔法。慣れれば無詠唱で発動出来る低級魔法だ」
「ほへぇ」
ぱちくり2回、瞬きをした。
「で、お前魔法に興味あんのか?」
隣に立ったアストリットが、先程私に投げかけた質問をもう一度言ってきたから頷けば、
「魔法についてどこまで知ってる?」
と返ってくる。
教えてくれるのだろうか。初対面のモブメイドに。
接している限りでは裏がありそうには見えないし、そもそもただのモブに打算目当てで近付いてくる主要キャラはいないだろう。
そう結論づけて、素直に有難かったから教授してもらうことにした。
「魔力と属性……あと、魔法式?しか知りません。言葉だけ知ってる程度なので意味はよく……」
「分かった、じゃあ基礎から簡単に言うとだな」
そうしてアストリットが説明してくれた魔法とは、難解なようで単純にも見えるものだった。




