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【19話】ステータス確認


小枝を片手に、適当に地面を引っ掻いて簡単な図を描けば、お嬢様は不思議そうに覗き込んできた。


またしゃがませてしまった、申し訳ない。


「纏めると。えっと……」


「エリー」


「エリー?」


「エリーって呼んで頂戴」


自分を指差すお嬢様ことエリー。


エリーって言うんだ。

うん、エリーって感じする。


図の中から、私は目のある人と目のない人の絵に丸を書いた。


「エリー様には、使用人とか街の人とかがこうやって目元が無いように見えて、その他の人は普通に見えるっと」


「ええ、でもうちの執事の目はちゃんと見えるわよ」


「そうなんですか、何か違いがあるのかな。まぁいいや…………で、目元が見えない以外は会話も出来るし目立たないだけで普通に動いてはいる」


こうやってエリーと話し合ってお互いの見えるものについて並べてみると、色々と私とは違うところが浮き出てきた。


エリーの話によれば、私には微動だにしないように見える目のないモブも、エリーにはちゃんと動いて生活してるように見えるらしい。


そして私には話しかけても反応しないモブも、エリーからするときちんと会話をすることが出来ると言うのだ。


他にも色々と差異はあったけれど、総合すると"一定数の人の目元が見えない"点が、私とエリーとの共通点になる。


「ちなみに目元が見えないのはいつからですか?」


「うーん、よく覚えていないけれど、物心付く頃にはもう見えなかったかしら」


「ほぇー」


それが普通だと思っていたから、そうじゃないと知った時には驚いたとエリーは言う。


「ステータスに違いがあるのかな」


「ナイはステータスが見えるの?」


「一応」


「あらぁ、凄いわねぇそれ」


やっぱりステータス普通は見れるものじゃなかったらしい。


エリーによれば、ステータスは本来16歳の成人式の日に、鑑定士の人に見てもらって初めて分かるもので、通常は自分で確認等は出来ないのだと。


ただ自分の属性に付いては、生まれた瞬間に何かしらの変化が周りに起こるから分かるそうで。


エリーの場合は、部屋に飾っていたカタクリの花が光り輝いたから光属性だと分かったとのこと。


カタクリってなに片栗粉?って聞いたら「カタクリコって何かしら?」って返ってきたから、この世界に片栗粉がない事が判明。


心底どうでもいい。


「ナイは自分のステータスが見れるのよね?」


「見えないところの方が大半なんですけどね」


「んーそれここに書けるかしら?」


「書きたくないところは書かなくてもいいのなら」


「いいわよ」


好感度パラメーターとか流石に書いたらなんだこれ?ってなりそうなものは避けて、知られても問題ない箇所だけを地面に書いていけば、最終的にこうなった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


【名前】ナイ

【年齢】13

【職業】王宮使用人見習い

【■■■】

■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■

【■■】

■■■■■■■■■■■

■■■■■■■■■■■


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ほとんど分からないじゃないか。


エリーもこれには苦笑している。


「この塗りつぶされているところは見えない箇所かしら」


「はい」


「んーおかしいわねぇ」


ほぼ分からないことだらけなのに、それでもエリーはきちんと考えてくれる。


右頬に手を添えて考え込む仕草は、本気でどこかの国のお姫様に見えたくらいだ。


全てがおかしく見える私には、何がおかしいのか判断出来ないから、エリーの次の言葉を待つしかないのだけれど。


ちょっと考えたエリーは、顔を上げて悪戯っぽい表情を浮かべた。


「ものは相談なのだけれど、試しに私のステータス見てみない?」


「えぇ……」


多分とんでもない提案をされた、と思う。


この世界の基準がまだあまり分かっていないからなんとも言えないのだけれど、16歳の成人式の日に初めて見れるくらい大切なステータスって、誰かがずけずけ見ていいものではないんじゃないのかな。


個人情報だし。


躊躇していると、エリーは自分の胸に両手を当てた。


「どうせすぐに見られるものだし、早めに知ったって変わりはないから大丈夫よ」


「そうですかねぇ」


多少困りはしたけれど、エリーの提案はどちらかと言えば魅力的な提案ではあった。


自分以外のステータスが見れるのかってことや、ステータスを見る時に魔法式が飛ぶのかどうなのかとかの確認が出来るから。


どうやって見るのか、方法知らないから勘でやるしかないのが難点だけれど。


「やるだけやってみますけど、失敗するかもですよ?」


「いいわよ。失敗したって本来の16歳で知るだけなんだから」


「分かりました。じゃあやりますよ」


私はエリーをじっと見る。


とにかく穴が開くくらい見る。


今でこそステータス画面の持続が5分くらいに伸びたけど、これが出来た最初の方は自分のステータスすら確認するのに手間が掛かったから、人のステータスまで見える確証なんて少しもない。


それでも凝視を続ければ、だんだん見えてきたエリーのステータス。


「あー見えそう。ちょっと書いていきますね」


顔はエリーの方を向けながら、腕は小枝を動かして地面に文字を書いていく。


そうして分かったエリーのステータス。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


【名前】エヴェリーチェ・ヴァーレン⚠︎

【年齢】15

【職業】公爵令嬢/王太子婚約者候補

【属性】光/水

【称号】

・光の令嬢

・闇魔法耐性Lv2

・毒耐性Lv1

・運命を切り開く者


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



どうやらエリーは愛称で、エヴェリーチェが本来の名前なよう。


やっぱりと言うか、好感度パラメーターはエリーのステータスには無かった。


その代わり気になる箇所がいくつかある。


"王太子婚約者候補"。


件の次期国王婚約者候補は、シナリオで殺されるご令嬢の他にも何人か居るから、エリーだとは思いたくないけれど。


「レ……殿下達とお知り合いだったりします?」


「ええ。さっきもアシュレイ殿下に会ってきたところよ」


エリーだ。


あの殺されるご令嬢はエリーだ。


だからこんなに天使みたいな見た目で、目があってCVもあるんだよ。


重要キャラクターもいいところじゃないの!


エリーのことを私が知らないのにも説明が付く。


エリーは確かに重要キャラクターだけど、シナリオが始まる頃には既に故人になっていたから、キャラクター紹介欄とかに居るはずがない。


それでもエリーが居なければ、あの兄弟が拗れることもなかったし、シナリオも始まらなかったから。


「(そっか……死んじゃうのか……)」


目の前で優しそうに笑っているエリーが、まさかこの後しばらくしてから、死んでしまうとはあまり思いたくない。


知らないモブが犠牲になるのも嫌なのに、ついさっきとは言え、存在を知ってしまったエリーが辛い思いをするのは、なかなかどうして頂けないところがある。


「ナイ、どうしたの?」


「いえ」


身辺警護強化しといた方がいいよ!とか、言った方がいいのだろうか。


ダメだ相手はあのレイだ。


警護を強化したところで済む問題ではない。


ならレイに接触させないとか?


それも不可能だ。


だってエリーはレイとツェルの婚約者候補だから。2人に接触しないことは難しい。


新たに浮上した問題に頭を悩ませていれば、


「何、アンタらどう言う関係?」


私とエリーを見下ろした、


「ツェル……」


シャッテン・スティロ・ア・ビーユ殿下がそこに居た。

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