【16話】意図しない発動 その2
諸事情にて全く更新出来ませんでした。゜(゜^ω^゜)゜。
徐々に更新頻度を上げていけたらと思いますが未定です……。
評価・感想ありがとうございます。
小さい小さい、子供が泣いてる。
ひたすらずっと、泣いている。
その声だけを頼りに、その言葉だけを頼りに。
僕は進むけど、届かない。
どこにでも居るようで、どこにも居ない。
幻のようなその子供。
初めてその声が聞こえたのは、ずっと昔。
自分の力を知った夜、その子供が泣くようになった。
何故泣くのか分からない。
姿形も見えないし、泣き声以外を聞いたことがなかったから。
やがて月に一度のそれが、週に一度になって、その内毎晩、その子供が泣き喚くようになり、気が付けば僕は全く眠れなくなっていた。
◆
それはもう清々しいまでの、笑顔。
隣には、気まずそうな顔をしたヴァルデ・ベルク。
一瞬目が合って…………。
あ、逸らされた。ため息までつかれてる。
ひどい!
さっき私がレイの魔法を意図的に"消した"と思われたすぐあとに、光の速さで背後のレイにとっ捕まって、このだだっ広い王宮の広間に連れてこられた。
私ね、根っからの日本人なの。
ごく普通の。
実家も一人暮らししてた場所も、集合住宅だったし。
転生後に令嬢入りとかしてればまだマシだったんだけど、ご存知の通り残念ながら家系すらない平民スタートだったんだ。
だからこの無駄に煌びやかで、無駄に広い空間の真ん中で、何もせずにつっ立ってるこの状況が、大変気まずいし居心地悪いったらない。
レイはレイでにやにやしてるだけで何も言わないし、ヴァルデはため息つくし、左右にずらって並んでる目のあるモブ一同様達は、自我があるせいでなんだか可哀想なものを見る目で見てくるし。
なんの拷問よこれ。
薄気味悪い笑みを浮かべて、妙にウキウキしてるレイが優雅に座っていらっしゃるのは、様相からして玉座。
王様以外は座れない場所。
まだ王位継いでないくせに、もう王様気取りかいこの人は。
周りもなんか言ってあげなよ。
「ちょ、まだお前王子じゃないかーい!」とかさ。
駄目なことを駄目って教えてあげるのも優しさなのよ?
駄目なこととか嫌なことを、仕方ないとかしょうがないとかで括りつけて形容しちゃうのは、それはただのエゴよ。
そもそも現王ってまだご健全じゃないの?
ゲーム中では一瞬足りとも出てこなかったから知らないけどさ。
親はどうしたよ親は?
もやもやぶつぶつ考え込んでる間にも、レイはひたすらニコニコ笑顔のまま。
何がそんなに面白いのだろうか……。
「まず君の属性を教えて」
ポツリとそう聞かれる。
知らんがな。
属性なんてある訳ないでしょモブなんだから。
いや待てよ。
もしかしたら、水属性のモブとか土属性のモブとかあるのかもしれない。
まぁ仮にそうでも分かんないんだけどね。
「ぞく、せい……ですか?」
「うん」
頭の中ではどれだけのことを考えていても、表には出さない。
プレイヤーとしての私は当然魔法のこともこの国のことも、人のこともほぼ全部知っているけど、いま、ここに立たされてる私は、あくまでたまたま迷い込んでしまっただけの使用人見習いなのだ。
魔法なんかふんわりとしか知りませーんの体で行くことにする。
まぁ実際形だけで中身は知らないし。
「申し訳ございません。何のことだか分からないのですが……」
「属性だよ?」
「はい、属性とは?」
「えー…………そっか。普通あんまり平民に魔力持ち居ないからなぁ」
なーんか考え込む仕草でぶつぶつ言ってるレイ。
「分かった。まぁ君の属性は今度調べるとして、僕が知りたいのはあの魔法式だよ。あれどうやったの?」
だから、知らんがな。
もっとよく考えてよ王子様。
私、自分の"属性"すら知らない子なんだよ?
それが"魔法式"のやり方なんて答えられると思います?
「どうと言われましても、ただ……その…………ちょっと想像しただけでして」
「想像?なにを?」
うぇー……人に妄想内容話さなきゃいけないのって、とんでもなくキツいじゃん。
しかもこんな大勢の前で。
どんな厨二病よ。
もう卒業したのよあの痛い日々は。
なんて逃避したくなっても、レイは逃がしてなんかくれないから。
これ言わなきゃいけないフラグですよね。
ここで私は初めて、長い長い、それはもうさっきのヴァルデ・ベルク以上に長い溜め息を、
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
とついた。
自覚がある状態で黒歴史更新するには、なかなか覚悟がいるんだ。
この世界で王族撒いたり、馴れ馴れしくしたりしちゃってる時点で黒歴史更新しちゃってるんだけども……。
「あの、流れろ〜って」
「流れろ?」
正直に思ったことを言えば、まぁ当然と言うか更に不思議そうな顔をされた。
周りの目のあるモブさん達も、なんか微妙な雰囲気だし。
でもだって聞かれたって分からないもの。
流れろって思ったら流れちゃったんだから。
「魔法陣流れろって思ったら流れました」
若干不貞腐れた態度が言葉に反映されてしまったことに、言ってから気付いた。
仕組みを全く理解してないのに、説明しろなんて言われたって出来る訳がないじゃないの。
私の発言に、呆気に取られたような間の抜けた顔をしているレイ。
そうだよね。
流石に貴方でもそうなるよね。
「流れろってことは……水属性なのかな?」
「さ、さぁ?」
そんな安直なことある?
流れるから水属性でしたーてへっ。
とかある???
そんな単純な世界なわけ?
「んー……いまステータス確認出来る魔導師がいないんだよなぁ」
「はぁ」
そう、さらっとレイが言ったけど、個人的になかなか重要な情報だった。
ステータスの確認って、専用の魔法があるんだね。
ってことは安易に自分のステータス分かります!(ごく一部だけど)とは、言わない方がめんどくさくならないだろうなぁっと。
ちょっと他の人のステータス見たことなかったから見てみたいなぁとか、この人達のステータスあとで見てやれとか思ってたけど、万が一この状況で、また安易に魔法式的なものをうっかり飛ばしてしまったら、もうこれ本気で後には引けなくなってくる気がする。
いつか隙を見てやれたらやろう。そうしよう。
「君のステータス確認はいずれするとして、とりあえず〜僕の使用人にでもなる?」
「はい?」
またぶっ飛んだことを唐突に言われた。
えーまた撒かなきゃいけないの?
実質別の人になってるのに、なんで同じような展開になるのかしら。
ここは、街と違って王宮内だ。
撒くとしても町娘は通用しないし。
どう逃げようか、密かに考えていれば、
「それはなりません殿下」
私でもレイでもない別の方向から声が掛かる。
そう、さっき目を逸らしたヴァルデ・ベルクが物申していた。
「なんでバル?僕はこの子を側に置きたいんだけど。面白そうだし」
若干鋭い、如何にもラスボスです的雰囲気をレイは出し始めたが、なんとヴァルデは全く引かない。
それどころか、レイの視線と明らかに同種のブリザードを出現させていた。
「この者は見習いです。それもまだ洗濯班です。とてもじゃありませんが、殿下の使用人としての業務がこなせるとは思えません」
「そんなのやってれば覚えるよ」
「駄目です。貴方は第一王子なのですよ。例え使用人のミスですら命取りになりかねないのです。ましてやこのような素性の分からぬ見習いを付けるなど」
うんうんそうだその通りだって頷いてたけど、なんかいまさらっと貶された気がするぞ?
"このような"の意味、全然良くないよね。
ただ口出しはしない。
並々ならぬヴァルデのブリザードに、レイが押されつつあったから。
凄いよね。悪逆非道の王様(予定)に反発できるんだ。
ならなんでさっき目逸らしたのって思うけど、気にしないでおいてあげようじゃないの。
このままほっとけば上手い具合に勝手に進んでくれるだろうと、そう、しめしめって感情が私に動くな何もするな黙って見ていろと言っていた(気がする)。
完全に人任せです、はい。
怒るなら後で、藁人形でも作って密かに恨みを込めるだけに留めよう。
頭髪には気を付けろよヴァルデ・ベルク。
心の中でほくそ笑んでいれば、
「素性が分からないなら聞けばいいじゃん。ねぇ、君の名前なに?」
レイが方向転換してプチ爆弾投げてきたじゃないか。
「ナイ(仮)ですよー」ってここで言っても良かったんだけど、私ご存知の通りジョブチェンジしちゃった後だから、パン屋のナイですって言ったところで同一の人間として認識してもらえない気がする。
これは私の予想なんだけど、恐らく私の名前は、"レイにあのナイだと認識してもらうこと"で初めてロックが解除されるような気がなんとなくするから、メイドとしての私じゃ多分ダメなんだ。
ならどうしようかって策を練り始めたところで、なんと都合のいいことに、
「失礼致します。ヴァーレン公爵令嬢がお見えになられたのですが……」
目のあるモブがそうレイに伝える。
「あー来るの忘れてた。相手しないとまずいか…………すぐ行く」
ほんの少し考える素振りを見せたレイが、胡散臭い笑顔で「ごめんね一旦これでおしまい。あとでね」と言ったことで、この緊急尋問イベントが終わったのだった。




