表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/49

【11話】もう一人と遭遇


「ねぇマリーナ」


私の数歩前で、乾いた洗濯物を回収しているマリーナに話しかける。


薄ピンクの髪をふわふわ揺らしながら、


「なーに?」


と、マリーナは返してきた。


「ちょっと変なこと聞いてもいい?」


「うん?」


会話しながら手は動かす。

これ、使用人の基本中の基本ね。


まぁ仕事中にお喋りしちゃってる時点で、"見習い"なんだけど。


大量に干された洗濯物を、1枚1枚回収してくのって地味に大変な作業だ。


転生して1年経って、私は13歳になったけど、体格はそこまで変わらず。

ちょっとだけ背が伸びたくらいで、まだまだ子供体型。

いくら私達以外もやっていると言っても、この量の洗濯物を外しては入れ。外しては入れって繰り返すのはなかなかしんどい。


それでも決められた仕事だから、そこは投げ出さないでやり遂げますよ。お金貰ってるし。


そうやって作業をしながら、私はずっと思ってたことをついにマリーナに聞いてみる覚悟を決めた。


「あのさ、私の顔ってどう?」


「え?」


マリーナから、困惑した視線を注がれる。


うん、そうだよね。ごめんね。

急に「顔面どう?」とか聞かれても困るよね。


「あ、私可愛い?とかじゃないからね?!

えっと、なんて言うかなぁ〜……あの〜…………私の主に目元付近で何か気になることないかな?」


「目元?」


こてんと首を傾げるマリーナ。


私が知りたいことーーそれは、主要キャラとかサブキャラみたいに、モブ以外のキャラに"私達"がどう見えてるか。


王宮に入るまで、マリーナみたいに自由に活動出来るキャラを見掛けることはあっても、長期に渡って接触することは出来なかったから、確認のしようがなかったこと。


もし私と同じように、"モブをモブとして認識している"のなら、私がレイに"変わってる"と言われた意味も分かるから。


その手始めに、1番手っ取り早い確認方法が、"私の目の有無"だった。


それで聞いてみたんだけど、マリーナは不思議そうな顔をしながら、


「気になることねぇ……うーん右目のホクロとか?」


「私ホクロあるのっっ?!」


「え、うん、あるよ」


なんてこったい。

私、右目にホクロがあるらしい。

全然気付かなかったよ。


地味な新発見をしたが、これで少し分かった。


少なくともマリーナには、私の目が見えている。

はっきり「右目」って言ったし。


「じゃあ、私以外の他の子達については?

何か変わってるなぁとか、逆にこの人同じことしか言わないなぁっとか」


「別にそう思ったこと無いけどなぁ。みんな普通だよ?」


マリーナの答えから推測すると、恐らくサブキャラは"モブをモブとして認識していない"ってことになる。


主要キャラはどうなのかまだ分からないけど、この命名"モブフィルター"も、もしかしたらステータスと同じで、私にしか見えてないだけで、実は他の人から見れば"普通の人"として見えているのかもしれない。


とりあえずちゃんと確かめるには、やっぱり脱モブしなくちゃいけないのだ。

脱モブすれば、また何かしらの変化があるかもしれないし。


マリーナにお礼を言って、私は彼女よりひと足早く回収し終わって満杯になった洗濯カゴを持ち上げる。


これを今度は別の部屋で、畳まなくちゃいけないからだ。


そう言えば、この王宮には広い庭園がある。


その庭園って言うのが、洗濯物を畳む部屋の途中にあって、実はこの場所、私にとってちょっと重要な場所だったりした。


最終的に中古ショップで売り払っちゃったけど、私元々【フォーチュンラブ❤︎アドベンチャー】の生粋のヲタだったんだ。

勿論全クリしたし、スチルも全て回収済み。

公式ファンブックも全て入手してたし、グッズも大量に持っていた。


だからね、この世界もだけど特にここ!王宮って個人的には、聖地巡礼の宝庫だったりする。


で、庭園がなんだって言うと。


ゲームの序盤。

主人公が王宮入りしてすぐに開かれる、1番初めのイベント。


薔薇が咲き誇る庭園の中で、一際蕾が多い薔薇の木の下。

そこで主人公は、人形のように美しい顔の少年が、眠っているのを見付ける。

あまり見掛けない全身黒の少年が気になって、そっと近付いてこう言うのだ。


『風邪を引きますよ』


そうすると、綺麗な少年ーーツェルが目覚めて口を開く。


『アンタだれ?』


髪も服も真っ黒だったから、当然目も黒だと思っていた主人公は、金色に輝くツェルの瞳に、つい見とれてしまう。


と言った、ツェル遭遇イベント。


そのシーン、スチルもすごくこだわっていて、ちゃんと眠っていたツェルがゆっくり瞼を開くのだ。


薔薇の花弁に囲まれた、美少年のお目覚めスチル。


私ショタコンでは無かったんだけど、うっかり沼にハマりそうになったくらいだ。


その【フォーチュンラブ❤︎アドベンチャー】の中でも、重要なイベントが起きた場所が王宮庭園。


通り掛かるついでに、ちょっとだけ入っちゃおうかなぁとか、るんるんしながら向かえば…………。








確かに。


うん、確かに薔薇の木の下に黒い人が居た。

確かに全身黒い人が寝てる。


ただ薔薇の木が…………なんか低いんだ。


私の背丈かそれ以上はあるかなって思ってたんだけど、なんとそれ以下。腰くらいの高さ。


で、その下で眠ってる基ぶっ倒れてるようにしか見えない黒い男の人は、薔薇の生い茂った葉に頭を突っ込んでるみたいな体制。


……………………え?


え、ちょっと待って。

もっとこうさ、幻想的な綺麗な光景じゃなかった???


確かに「生きてるのか死んでるのか分からないくらいに」とかシナリオで言ってたけど、生死不明ってこう言うことなの?!


人形みたいに美しいから生きてるのか分からないじゃなくて、がちの生死不明だったのちょっと?!


これじゃ、庭で眠る人形めいた綺麗な美少年に出会うじゃなくて、庭にぶっ倒れてる謎の変死体の第1発見者だよ。


乙女ゲームじゃなくて、火曜がサスペンスしちゃってるんですけどちょっと!


どうしてこうなった。


頭の中は大混乱。


とりあえず洗濯物を置いて、ツェルらしきぶっ倒れてる人の所まで寄ってみる。


一応念の為、体調不良で倒れてる可能性も考慮して。


「あの〜……もしもーし。生きてますかー」


でも主人公は「風邪引きますよ」って優しく肩を揺すって起こしてたけど、私はちょっとなんか怖いから足でちょんちょんってだけ触った。


雑な生存確認とも言う。


「もしもーし。ちょっと生きてますー?死んでるなら死んでるって言ってください」


いや死んでる人に、こんにちははされたくないんだけども。


足でちょんちょんしてたのが効いたのか、男の人が、


「んん……」


って動く。


あーよかった生きてた。

第1発見者にならなくて済んだわ。


ただこの人が動く度に、頭の上の薔薇がガサガサ動きまくるから、なんかちょっとそう言うモンスターみたい。冬虫夏草とか………………冬虫夏草はモンスターじゃないか。


と言うかこれだけガサガサやってて痛くないのかなぁって思ってたら、案の定、


「痛っっ」


って小さい悲鳴が聞こえた。


「大丈夫です?」


ガサガサしながら頭を擦る姿が、ちょっと不憫だったから、声を掛けると、


「っっ?!」


びっくりさせたみたいで、まぁ大袈裟にばっと振り返って私を見た男の人。


レイに似た、でもレイより幾分か可愛い感じの顔に金色の目。

陶器みたいに白い肌のせいで、黒い髪と金色の目が映える映える。


間違いない。この人【ツェル】で確定だ。


正確には【シャッテン】なんだけど、ツェルの方が呼び慣れてるからツェルで。


目の前のツェルは、ゲームの時よりも成長していて男の子ではない。


たぶんまだ身を挺して、兄を封じてないからだと思う。


ゲームの中のツェルは、レイと正反対の闇属性に特化してたんだけど、それでも兄に対抗出来るほど魔力が無かった為、代わりに命を掛けてレイを封じた。


その時に色々レイに抵抗されて、結果、子供の姿になってしまったーーって記憶してる。


どっかの白い人がパン屋をぶっ潰しさえしなければ、ツェルは子供にならずにちゃんと成長出来たのだ。


そしていま、まだちゃんと成長している最中のツェルが居る。

これは転生しなきゃ見れない姿だったから、ちょっと転生したことに感謝した。


ほとんど子供の姿しか知らなかった分、大人になりかけの年齢のツェルってなんか新鮮だなぁ。



なんて、近所のおばさんみたいに思ってる場合じゃなかった。



いま私、物凄く不審者を見る目で見られてるから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ