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第六話 『仲間』

 火の海となった地下牢から脱出した後、なんとか外に出ることが出来た。

 地下牢は外からは見えない森の奥で、以前言った森の様な雰囲気があった。


 しばらく外を見渡していると、首根っこを男に捕まれて馬車の中に入れられる。

 中には、とてつもなく長い青髪をひもで束ねた大柄な男や、どことなく優しそうなピンク髪の女が座っていた。


「そんで、お前たちはどこに住んでるんだ?」

「……家は、さっきの人たちに燃やされてしまいました」

「そうか。……じゃあどうすっかなぁ」


 会長……だったか? そう自称した男は面倒くさそうに頭をかいてこちらを見る。

 しばらく気まずい沈黙が流れていると、大柄な男が話しかけてくる。


「ともかく、行く当てがないんだろう? なら、ウチで働くのなんてどうかな?」

「あ、それ私も賛成です」


 大柄な男に笑顔で賛同する女性。

 その様子に、ため息をつく会長(自称)。


「……ったく、わかったよ。お前たちはどうする?」

「え?」

「働くのか、それともここでたくましく生きるのかどっちだ?」


 俺としては働く一択なのだが、ルークは一切意見を話さないため俺は返答しようがない。

 彼女は、ただ俯いて何かの言葉をつぶやき続ける。

 祖母の死に様を見せられたのだ。こうなっても仕方がないのだろう。


「ダリウス、とりあえず一度帰ってから決めないか? この子たちにも決める時間が必要だろう」

「ダリウス『会長』だ。……おいガキども、今から俺たちはお前たちを連れて一度帰る。それまでに考えとけ」




 俺達はあの後アマンダの家だった場所から反対方向に位置しているレンガの家が立ち並んでいる、活気あふれる国に連れていかれた。

 その間、前に座っている三人は仲良く話していたのだが、こちら……つまりルークとは、何も話せてはいなかった。


「助けを呼んできてくれてありがとう」とか、「これからどうする?」とか、話す内容は少なくなかったが、今の俺には彼女に話しかける勇気がなかったのだ。

 ルークは人一倍心優しい上に、責任感の強い女の子だ。だからこそ、今回の事件を自分一人のせいと思っているのではないだろうか。


「さて、ここが俺たちの国、『クロフォード帝国』なんだが……お前たちの腹は決まったか?」

「……俺は決まってるんですけど、ルーク……彼女の意見が知りたいんです」

「あ? もしかして、喧嘩か? 女と喧嘩するなんて、お前はまだまだだな」


 この人は何を言っているのだろうか。

 家が燃やされた、という時点で察してもいいのだろうが、そこらへんは察しが悪いのだろう。

 返答に困りしばらく黙っていると、御者である男が振り返り話しかけてくる。


「……ダリウス。今はそっとしておけ」

「あぁ? ライ、そりゃどういう意味だ」

「そのままの意味だ。家が焼かれたとあれば、それなりの事情もあるのだろう。それに、彼女はまだ子供だ」

「……まあ、お前が言うならそうなんだろうな」


 ライという男によって話は事なきを得たが、ルークの態度は何も変わらなかった。

 ただ俯き、膝の上に置かれた拳に力を入れるだけ。

 俺はそんな彼女の姿をただ黙って見つめていると、ライが振り向いて話しかけてくる。


「……着いたぞ。降りろ」

「お。やっと終わったか! いやー、疲れたなぁ!」

「まだ終わってませんよぉ。会長は依頼人に盗まれたワインを返してきてください」

「……セシル、お前行ってきてくれないか? ほら、取り戻したのは俺だし、そのくらいしてくれても……」

「何を言ってるんだ。会長がいかないで僕が行ったら、それこそ僕たちの信用を地に落とすようなものだろう」


 セシルという男の正論によって押し黙るダリウス。

 しばらく項垂れた後、ワインの入った箱を持ち上げ、とぼとぼと歩き始める。


「さて、歓迎するよ……といっても、まだ決めてないんだったね。ともかく、中に入るといい」

「……お邪魔します」


 俺が返事をすると、微笑んで俺達を見つめてくる。

 ……いや、怖いのですが。


 目の前にあるのは、レンガの家が主流らしいこの国には似つかわしくない木造の家だった。

 セシルがその扉を開けると、中から幼女……幼い女の子が飛び出してくる。多分、一歳くらいの。


「おかえりなさい!」

「ただいま、ティアちゃん。お留守番できたかな?」

「……う、うん」


 セシルが膝を曲げて同じ目線で話しかけるが、少女にはそれが恐怖心を煽るらしく、一歩後ずさってしまう。

 それを見た女性が、少し笑いながらもティアと呼ばれた少女を抱きかかえて、奥に入っていく。


「中に入っていいですよ。とりあえず、客室に案内しますので」

「あ、はい」


 俺達はその女性の後姿を追うようにその家に入っていく。




「さて、えっと……」

「センリ・ブリュンスタッドです。隣にいるのはルーク・ガレシア」


 俺が軽く紹介をすると、ルークは軽く頭を下げる。

 女性はそんな様子が微笑ましいのか、少しだけ微笑む。


「『フィオナ・パートリッジ』です。フィオナでいいですよ」

「よろしくお願いします、フィオナさん」

「よろしくお願いします。ほら、ティナちゃんも挨拶して」

「えっと……『ティナ・クルサード』です。えっと……よろしくお願いします」

「うん、よろしくね。ティナちゃん」


 俺は少女に軽く微笑むと、怯えたようにフィオナの服に顔を隠してしまう。


「ごめんなさい。この子、人見知りなんです」

「あ、いえ。大丈夫ですよ」


 ……まあ、一歳は普通こんなものだろう。転生しない限りは。


「さて、センリ君。キミはどうします?」

「俺は……働きたいと思います。でもルークが……」

「駄目ですよセンリ君。男の子なんだから、女の子は引っ張っていかないと。ダメおと……あのダリウスみたいになっちゃいますよ」


 気のせいだろうか。今『ダメ男』と言おうとしなかったか?

 ……少しだけ彼に同情しようと思った。


「……ルーク。お前はどうするんだ? 俺としては、お前にはここにいてほしい」

「……」

「ルーク」

「……うん、わかったよ」


 ルークは消え入るようなか細い声で返事をする。

 ……少し強引な気がしたが、彼女を今一人にするわけにはいかない。


「……わかりました。それじゃあ、みんなにこの事を伝えに行きましょうか」



 俺達はフィオナに連れていかれるように一階のロビーに戻ると、そこではライとセシルがトランプをしていた。

 どうにもライの方が弱いらしく、セシルの方には大量のコインが積み重なっている。


「皆さん、集まってください。新しい仲間を紹介しますね」

「センリ・ブリュンスタッドです。こっちは……えっと……」

「……ルーク・ガレシア。よろしく」

「よろしくね。二人とも。僕は『セシル・クラム』。セシルで構わないよ」

「俺の名は……『ライオット・マットン』。まあ、好きに呼ぶといい……」


 ……ああ、『ライ』オットでライか。

 俺は納得したように息を吐くと、フィオナがこちらをのぞき込んでくる。


「それと、今ここにいないですけど、あの男が『ダリウス・オックスフォード』。この商会の会長です」

「……商会、ですか?」

「はい。では改めて……」


「『オックスフォード商会』へようこそ!」

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