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第6話

 ミランダはなぜか勲が旅行を当てたことを知っていた。当ててから丸一日と経過していない。当然コンタクトも取っていない。今が初めてである。あけましておめでとうすら言わずに、話題の矛先は旅行のこと。訳がわからない勲。

「何で知ってんのさ。え、もしかして…」

「察しがいいわね」

「テレビのインタビューか…」頭を抱える勲。

「ご名答。私その番組の出演者よ」

「恐ろしい奇跡だな」

「珍しいわね。くじ運の悪いアンタがそんなすごいもの当てるなんて。死ぬんじゃない?」

「まぁ、それはちょっと思った。悪いことの一つくらいありそうだなって」

「ねぇ、電話だれ?」横から真白が聞いてくる。

「あぁ、兄貴ですよ」

「え、ミランダねえさん? 替わってー!」

「はい、どうぞ」スマホを真白に手渡す勲。

「ねえさーん、あけおめー!」

「あら真白ちゃん。おめでとう。なに初詣?」

「うん。そうだ、ねえさんニューヨーク行きませんか?」

「何いっ㌧じゃー!」卒倒しそうなほど焦り慌てる勲。

「あら、ちょうどその話してたのよ」

「佑奈とダーリンが福引当ててさ、ペアが二つで四人なの。あと一人探してたんだー」

「あら、都合のいいこと」

「でね、ねえさんの仕事さえなければ、一緒にどうかなーって」

「話勝手に進めないでー!」勲の制止も何のその、勝手に進むニューヨーク旅行の予定。

「いいわよ、だったらスケジュール開けるから」

「やったー!」

 その声を聞いて「あぁ、もう決まったんだ」と、その場に膝から崩れ落ちる勲。これは予定調和だったのでは、と思いたくなるほどスラスラ進んでしまったため、もう後には引けない。

「じゃあ、その件については後から勲に電話させて。じゃあアディオース!」

 いつもの別れ方で電話を切るミランダ。着れた電話を勲に返す真白。力なくスマホを受け取る勲。

「よかったねー、一人分無駄にならなくて」

「ミランダさん英語できるんですかね? 私英検三級だから自信ないですし」

 既に現地に行った時のことを考え始める佑奈と真白。なんて羨ましい性格、勲は思った。

「兄貴はペラペラですよ。僕も旅行レベルなら困らないくらいには…」落ちてもいい涙が出てこない。正月早々、白くカサカサになっていく勲。

「んあ、何だ少年。正月早々落ち込んで」その姿を見た、片手にこちらもたこ焼きのメグルが問いかける。

「聞かないでください」

「マッチー、おみくじ大凶でも引いたんデスカ?」こちらは焼きそば、リリィも続けて問いかける。

「ある意味それに相当することかもしれません」

 落ち込んでいるわりに受け答えはしっかりしているのがコイツらしいといえばらしい。律儀を絵にかいたような性格。

「あとで詳細電話してだって。日取り決めないとねー」

「わかりやした…」力なく立ち上がる勲。

「別に三人でもいいと思ったんだけどなぁ。賢者いなくても問題ないし…」

「ん、なんか言った?」

「いえ、独り言です」

「さて、初詣も済んだことだし。戻ろうかね」

「おー」

 食うだけ食った。参るだけ参った。願うだけ願った。一人心ここにあらずの人間を引きずり佑奈邸へと戻る一同。


「あー、出てる出てる」

 佑奈邸に帰り、正月特番を見ている一同。アマネのみ実家に帰るとのことで一足お先に退散しているが、それ以外はまだ居座っている。

「これが町村君のお兄さんだったのか。お姉さんていった方がいい?」

「どっちでもいいですよ」このやり取りも何度したことか。志帆に返事をする勲。

「かっこいいよねー、オネエとして。背も高いしセンスもいいし」

「でも、売れっ子だしさ、そんな旅行する時間作れるのかな?」

「どうなんでしょう? 芸能人のプライベートってよくわからないですし」

 佑奈と真白が、ミランダの予定を心配する。決まったはいいが、自分たちと生きる世界が違う人間。勝手がわからない。

「僕もその辺りまでは把握してないのでなんとも。でも本人が行くといったらなんとかするんじゃないですか」

 不服そうに話す勲。持ち帰ってきた大量のたこ焼きを突きながら、テレビ越しの兄の姿を見ている。最近てデビで見ない日はない、といって過言ではない。それほど出ている売れっ子オネエ。世間にそういった人種が認められたいい証拠ではあるが、身内だと複雑。

「ったく、どうするつもりなんだよ兄貴のヤツ」

『お正月からごめんなさい オネエだらけの大喜利大会』の司会を務める兄の姿を見ながら、もらった目録を開けて、中に入っている説明書きを読みだす勲。

「当然ホテルも決まってるのか。飛行機とホテル、それ以外は基本自由か。良いプランだな」

「どんななんですか?」横から覗き込む佑奈。

「こんな感じです。割りとフリーなので行きたいところに行けそうですね」

「よかった。近郊の街も回れそうですね」

「ですね。…ん? あぁ、そりゃそうか」説明に目を通していた勲が、一文で目が留まる。

「これ、兄貴大丈夫かな?」

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