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第3話

 真白も再び眠りにつき、一人残される勲。どうしても眠くならない。仕方がないので近場の神社に一人初詣に向かう。どうせ明日朝になったら全員でどこかへ行くことにはなっている。フライング詣でになってしまうが、することもないので一人繰り出す。(朝になってフライングしたことを怒られる)


 歩いて15分ほどのところに適度な大きさの神社がある。都心ではないがそれでも人は大勢来ている。出店もかなりの数出ている。佑奈と真白がいれば右から左へ焼野原を作っている可能性もある。寝ててよかった。

 少し並んでお賽銭を投げ、鈴を鳴らしてお参りをする。

「今年は静かに過ごせますように…」

 去年のことを考えれば、これ以上のことはない願い。東京へ出てきてただ静かに大学生活を送る予定だった。彼女くらいいつかできるのかもしれないと考えていたが、まさか開始早々あんなことに。しかも二人。そこからは散々振り回され、学業がおろそか、になるまではいかないが、割りと目まぐるしい日々を送ってきた勲。

 特に、自分の意思とは関係のないところで『男の娘』化してきたことは、できれば思い出したくない過去であり黒歴史。大学生なんてそんなもんだよ、といいたいところだが、公衆の面前に本域の女装を晒すのはなかなか機会はない。

「今年は、ナシで!」強く願う。

「さってと…」

 特に出店に用もなく、裕奈邸へと戻ろうとしたところ「すいませーん」と声が掛かる。

「僕?」

 振り向くとそこにはテレビクルーのような人間が数名、カメラを構えていた。

「すいません。○○テレビのものですが、インタビューいいですか?」

「はい、構いませんけど」

「ありがとうございます。では、去年を振り返ってみて、よかったことと悪かったこと、一つずつ教えてもらえますか?」

 年始のテレビにありそうなインタビューだった。逃げるのも面倒だ、答えるしかあるまい。少し考えて切り出す。

「そうですねぇ。悪かったことは、特に思いつかないですねぇ。良いことなら山ほどあるんですけど」

「おぉ、それはいい人生ですね。じゃあそのよかったこととは?」

「えっと。大学にも受かりましたし、彼女も出来ましたし。あ、それと年末に福引で海外旅行が当たりました」

「なんと! いいことづくめじゃないですか。羨ましい。そんなあなたは今年何を願おうっていうんですか?」

「静かにくらいしたい、です」

「え?」耳を疑うような表情をするレポーター。

「あ、いえ。何事もなければいいって意味です」

「なるほど。叶うといいですね。ありがとうございましたー」

 特にそれ以上なくインタビューは終わる。気になってスタッフの一人に勲が問いかける。

「すいません。今のって録画ですか?」

「いえ、もう流れてます。生なんで」

「あぁ、そうでしたか…」

「なんかマズかったですか?」

「いえ、そういうことはないです。大丈夫ですので」そう言って引き下がる。

 誰も見ていまい、寝ているのだから。こっぱずかしいインタビューは恐らく知り合いの目には触れていない。見られたところであまり害のないことを言ったつもりだ。気にせず帰路に就く。

 しかし、一人だけこのインタビューを見ている、勲を知った人物がいた。それがまさかあんなことになろうとは。



 ―時同じくして某テレビスタジオ―

「あら、今の弟だわ」

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