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第1章:べつに3人でもゾーマは倒せますけどね(第1話)

 年の瀬というのは大体人恋しくなる。独りで過ごすのはあまりにも寂しい。特に東京の一人暮らしならなおさら。昨今はどこもかしこも営業しているが、そこに独りいるという事実を悟るだけで寂しさが倍増し身に染みる。しかしここには部屋の許容量限界といわんばかりの人数が集っている(まだ余裕はあるけど)

 勲、佑奈、真白、メグル、リリィ、黒雪、イイチコ(志帆)、アマネ(天音)、合計8名が裕奈の家に勢ぞろい。大忘年会としゃれこんでいる最中。持ち寄った食材と酒、スイーツなどありとあらゆる食べ物が部屋を覆い尽くしている。

 そんな中勲は、世話しなく台所とリビングを行ったり来たり。肉に野菜に白飯にと、各々の希望を聞きせっせと運んでいる。唯一の男手、そして最も高い調理スキル。食うこともままならずただただ小間使いと化している。



「はー、しかしよく当てたもんだ」

 二つの目録をひらひらと、目の前でぶらつかせているのは黒雪。只今夜の8時過ぎ。年末恒例のテレビを掛け、目の前にはすき焼きの鍋。真白が当てた5㌔の牛肉も当然その中に投入されている。

「まったく。今年の運最後の最後に持ってきた感じだね」

「四人でしょ、どうするの? 佑奈と真白はいいとして。町村君誰と行くの?」

「はい、何か言いましたか?」

 流しの音でよく聞き取れない勲。メグルに聞き返す。

「まいっか、彼は後にしよう」

「こういう福引当ててる人初めて見ました。ドラクエⅡのゴー○ドカード当てたことしかないからなー、私」今回初参戦のアマネ。くじ運はないらしい。

「それならワタシもありマス。乱数調整してすぐデシた」

「リリィさん、悲しくなるから言わないで…」

「こういうのって換金できなかったっけ?」

「最近は無理みたいですね。色々確認事項とか規約厳しいみたいなので、行くしかないみたいです」

「なるほどー。ビジネスクラスでしかも4泊6日。換金できればそこそこの金になりそうなんだけどね、もったいない」

「二連荘したとき、町村さんは申し訳ないからって2等のテレビと交換してほしいって言ってましたけど」

「テレビくらい買え」

 モノより思い出。プライスレス。それをわかっている真白が言う。

「ふぅ、これで取り敢えず全部下ごしらえ終わりです」

 すき焼きの材料を抱えリビングに戻ってくる勲。やっと腰を据えて食べることができる。肉は半分消えているが。

「マッチー、ニューヨーク誰と行くデスカ?」

「そうですねー。まだなんとも。一人分だけ換金ってことできればいいんですけど。もしくはその分でホテルのランク上げるとか」

「そう都合ようくはいかないだろう」

「ですよね」卵を割りながら答える。

「行くとしたら春休み、ですよね?」

「うん」

「だね」

 大学生の三人。年が明けひと月もすれば長い冬休みが始まる。勲に関しては普通の大学と違い、更に長めの休みが待っている。勲が二人が休みに入るのをを待つ感じになる。

「それまでに誰か一人見つければいいか。ちなみにこの中で行きたい人っていますか?」

「あたしはリリィと一緒じゃないとダメだからパス」メグルとリリィはペケ。

「私は飛行機苦手だからいい…」黒雪。

「行きたいけどねー。6日も休みがとれるかどうか」志帆も微妙。

「彼氏となら行きたいけどなー、いないけど。ねえ町村君、東大生紹介してよ」アマネ。

「まぁ、すぐに決めることもないか。いざとなったら3人ですね。あ、巽とかどうかな?」

「太平洋に沈めます」無理っぽい。

「ちなみに、町村君。海外行ったことあるの?」志帆が勲に問う。

「そういえば。私たちは高校の修学旅行でシンガポール行ったからパスポートもってるけど」

 佑奈と真白は高校時代既に渡航経験あり。さて田舎者の勲はというと。

「えっと…、北海道しか」それは国内。津軽海峡は渡って入るけど。

「ダメだな、こいつ」

「修学旅行どこだったの?」

「京都です、ベタに」

「じゃあ初海外がニューヨークか。それはそれで羨ましいな、しかもただとは」

「パスポート取りに行かないといけませんね。年明けたら早めにいっておいた方がいいですよ」

「そうしまふ」牛肉もぐもぐしながら返事をする勲。

「お土産どうしようかなー。やめてよ、自由の女神の銅像とか」

「マンハッタン饅頭ってあるかな?」

「ブロードウェイならありそう」

「ベルリンの壁の残骸とか売ってないかな?」ドイツにならあるけど、ニューヨークにはないと思う。

「町村君、お肉の追加ある?」志帆からリクエストが入る。

「え、もうないです? あ、ホントに無い…。10キロあったんですよ」

 満載、山盛りにしていた牛肉の皿の底が既に見えている。

「何人いると思ってるねん」

 改めてキッチンで肉を捌きだす勲。


 時間も巡って11時を回る。そろそろ除夜の鐘が聞こえてきてもいい頃。

「お蕎麦食べる人、いますか?」リクエストを取る勲。

「はーい」7人全員だった。

 実家から届いた蕎麦を茹で、買ってきた惣菜の天ぷらを希望通りに載せ、年越し蕎麦の完成。

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