聖杖物語(セインステッキストーリーズ)黒の剣編 エピソード5黒の剣最終章聖杖Part1
美琴はついに、真聖巫女となった。
その力を虎牙に託す為、禁断の呪法を唱える。
「ぐがああぁっ、馬鹿な!真聖巫女だと!何故なれる、お前は一体何をしたのだ!」
ジキムがうろたえて叫んだ。
あたしの体を包んだ羽衣がゆっくり開き、真聖巫女の服を着けた姿であたしはジキムに言った。
「北の黒王ジキムよ、黒の剣に戻り長き眠りにつけ、さもなくば光に倒されよう。」
あたしは聖杖の言霊を発する。
「ぐははっはっ!我は戻らぬ。闇でこの世を支配するまではな。」ジキムは九つの首を振りながら答えた。
あたしの口から、
「ならば黒王ジキム、我が力、その身で受けるが良い。」あたしの思念に聖杖が入ってくる。
ー巫女よ、そなたに訊く。我が力を使うか。今、我を使えばそなたの力、過去、記憶全てが<退魔の呪法>により束縛される。元に戻るすべは万に一つ、今一度水晶の光を浴びる事のみ。それでも我を使うか?-
あたしに聖杖が、問い掛けた。
「聖杖。その力で皆を救えるのなら、あたしは力を使います。あたしの身がどうなろうとも、迷いは有りません。」あたしは決意を口にした。
ーよかろう、そなたの決意、意思、受け取った。さあ述べよ、光降臨と!」
あたしは掲げた右手を開き、力一杯叫んだ。
「光降臨!」
あたしの髪が、瞳がピンク色に変わり、光り輝く。そして開いた右手の上に聖杖が現れた。あたしは聖杖を握り締め、左手も合わせ更に高く掲げる。
光の輝きが更に強まり、爆発寸前まで力を溜める。あたしはあらん限りの力を虎牙に託す為、気力の続く限り我慢する。
ー虎牙、勝ってね。-あたしは最期の呪文を唱えた。あたしが唱えられる最期の呪文を。
「退魔の呪法!」
聖杖が光を放ちあたしを包む。あたしは光に、光の意思となった。
光の意志になって、あたしは虎牙の意識に入る。
ー虎牙、あたしの好きな虎牙。良く聞いて、これから虎牙に光を、力を与えるわ。その力でジキムを打ち破って、皆を守ってあげて。-虎牙が美琴に訊く。
ー美琴、解った。約束する、必ずジキムを倒してみせる。安心してくれ。-あたしは言わなければいけない。辛いけど・・・
ー虎牙。あたしね・・あたしちょっとだけ、逢えなくなるかも知れない。けど・・・けど、きっと戻るから、虎牙の元へ。帰ってくるから、待っててくれるかな。-あたしは少し寂しく話した。
ー美琴、何処へ行くんだ。行くな、行かないでくれ。-あたしの心に虎牙の声が突き刺さる。
ーあははっ、虎牙らしくないよ。何処へも行かない。あたしたち何時も一緒って言ったじゃない。ずっときっといつも一緒に居るから、傍に居るから。-半ば自分に言い聞かせるように虎牙に言った。
ー美琴、これからどうなるんだ?美琴に何が起きるんだ?-
ーあたしね、少し疲れちゃったから、眠るんだ。どれ位懸かるか判らないけど、きっときっと戻るから、虎牙の元へ。愛するあなたの元へ。だから、さよならは言わないよ。約束するから、待っててね。-あたしの心は涙が溢れ返っていた。
ー約束だぞ、必ず戻ってきてオレと、オレと一緒に未来へ歩もう。美琴!-
ーうん。必ず、必ず帰るから。虎牙の元へ!-
あたしの思念はマコ、ヒナに飛ぶ。
ーマコ、ヒナ。光をありがとう。あたしね、嬉しかった。すっごく暖かかったよ。-
ー美琴、どうしたんだよ。一緒に帰ろうぜ。-
ーミコッタン、どうする気なのです?-
ーうん、ちょっとね。遠くに行かなきゃならなくってね。でも必ず帰ってくるから、それまで待っててくれるかな。-
ー何処へ行くんだ?美琴。行くな、行くなよ美琴。戻って来いよ!-
ーえへへっ、マコ、ヒナ。もう行かなきゃいけないんだ。帰ったらまた3人で仲良く遊ぼうね。-
ー嫌だ、美琴!行くなぁ!-マコの呼び止める声に、
ーごめんね、マコ、ヒナ。もう行かなきゃ、じゃあ、またね。-そう答えて涙を零す。
白井先生、パクネの思念に入った。
ー白井先生。ありがとう、お母さんに逢えたよ。聖姫お母さんに。今から虎牙に光を託すから、見守ってあげてね。-
ー美琴、お前。<退魔の呪法>を使ってしまったんだな。-
ーうん。あたし・・多分帰って来れないと思う。でも、諦めない。挫けない。虎牙の元へ帰るって約束したから。・・だから、待っててって伝えて。パクネの口からも・・・。お願いします。-
ー解った。見届けてやるよ!虎牙の事も、お前の事も。必ず!-白井先生はあたしに約束してくれた。
ーありがとう、先生!-
あたしは伝えたい事を皆に伝える事が出来て、少しほっとした。
そして、握り締めていた聖杖を虎牙に渡した。
ー虎牙行くよ!受け取って!!-
あたしの光が、虎牙を包んだ。
美琴は力を虎牙に託す。
光は奇跡を起こした。光の騎士は魔王と闘う。
そして、役目を果たした巫女の運命は・・・
次回最終章Part2黄金の騎士
次回も読んでくれなきゃ駄目よーん!