聖杖物語(セインステッキストーリーズ)黒の剣編エピソード5黒の剣第4章決戦Part3
一本の光の矢がドラゴンの炎を貫き、美琴に届く。
それは光の絆、想い。今、美琴は戻る。魔王の前に、仲間の前に・・・
虎牙は見た、光の矢がドラゴンの吹き出した炎を打ち抜き、美琴に吸い込まれるのを。
光が美琴を包み、やがて・・・
「ぐがああっ、何だとぉ!そんな馬鹿な事が、巫女が目覚めたと言うのか!!」ドラゴンが急に苦しみだした。美琴を包んだ光はだんだん大きく、強く輝きだす。
「美琴!」虎牙は叫ぶ、愛する人の名を。
「美琴、美琴ぉっ!」虎牙は、ドラゴンの元へ走る、美琴を取り戻すために。
美琴を包む光が閃光と共に弾けた。
<ゴォオオオオッ>光の渦がドラゴンに穴を穿つ。
「ぐぅがああああっ!」ジキムの絶叫が空気を振るわせ響き渡った。九つの首を持つドラゴンが、後退りよろける。驚愕の声でジキムが叫んだ。
「何故だ!巫女よ、お前は我の一部となった筈だ。我が喰った筈だ。その力は何処に持っていたのだ!」
ジキムが九つの首を振りながら絶叫する。
ー光があたしを呼んでいる。-あたしは、聖姫お母さんに言った。
「聖姫お母さん、光が呼んでいる。あたしの事を。」微笑むお母さんは、
「そう、あの光が絆。貴女への想い。さあ!あの光と共にお行きなさい、美琴。」あたしは頷き、
「はい!行きます。お母さんありがとう。」聖姫お母さんがあたしの背中を押してくれる。
ーお母さん。・・また逢おうね。-別れを心の中で告げ、あたしは光の中へ飛び込んだ。
あたしの瞳に光が戻る。咄嗟に振り返り、聖姫お母さんを見た。
ーああっ!見える。お母さんがはっきりと見える!-優しく微笑み掛けてくれているその顔は、あたしが大人になった様な、そっくりの顔をしていた。
ーさよなら、お母さん。さよなら、本当のお母さん。-別れを心の中で言ったあたしは光の中で、
ー暖かい光。この光があれば、あたしは戻れる。そして、虎牙の力になれる。-意識が戻り始めて、瞼を見開き光と共にジキムから解放された。
<ゴォオオオッ>光の渦と共に、ドラゴンの肉体から飛び出して、祈りを捧げる。
「ピンク水晶よ、力を貸して。あたしの願いを形に現し給え。」あたしは自分の髪飾りを外し、右手で高く高く掲げた。
「美琴、我が主よ。貴女の力になりましょう。さあ!私も共にまいりましょう。」ハープブレスレットが光を放ちながら、あたしに語りかける。
「うん。ハープブレスレット、ありがとう。」右手の中で髪飾りが光を増す。そして・・・
「あたしは水晶の巫女!冴騎美琴!!聖杖よ、今こそ光を!」
あたしの服がかき消され、真聖巫女の羽衣があたしを覆う。
あたしはゆっくり目を開きジキムと対峙した。
ついに其の時が来た。巫女の宿命に美琴は応じる。
聖杖を発動して、その力の元魔王に挑む。
次回最終章聖杖
いよいよ次回から最終章です。これは読んでくれなきゃ駄目よーん!