聖杖物語黒の剣編エピソード5黒の剣第1章オーガの罠Part1
古来より聖なる者と邪なる者との闘いは続いてきた。闇より現れ、人の魂を喰らう魔獣ダークホラー。その闇から人を守る守りし者、獅騎導士ビーストナイツ。彼らの闘いは今夜も・・・・
「黒王、ジキム様。四天王3名が敗れ去りました。このオーガめに索がございます。」魔獣城の謁見の魔で、オーガが玉座の前で畏まっていた。
「水晶の巫女を陛下に奉げる為、その仲間を我が下僕とする案でございます。・・・ご認可を。」
「くくくっ、オーガよ。連れてまいれ、巫女を。さすれば余は復活の儀を奉らん。」
「ははっ。」オーガが玉座に頭を下げ引き下がる。
「ふっ、ジキムめ。何時までも王の座に居られると思うなよ。オレ様が大王を復活させれば、オレこそが、この世の支配者だ。」オーガは自らの欲におぼれて言い放った。
「はい!今日はこれで終了だ。今日も宿題どっさりあるからな。忘れるなよ。」白井先生がニカッと笑いながら言う。
ーむぅ。なんとか赤点は、取らなくなったけど。宿題多いと大変だよ。-
「あーはいはい。文句言わずに。それでは諸君、また明日ナ。」白井先生は手を振りながら、出て行った。
「美琴。どーだった?」
「うーん、これかな。」あたしは、指で丸を作ってマコに見せた。
「おっ、そっか。それは良かった。」「です。」ヒナも同調してくれる。
「そんじゃ、パーティだな。」
「そんな、パーティだなんて大袈裟な。」あたしは手を振って断った。
「でも、それ位の事です。」ヒナはマコに同調している。
「落第しなくて良かったです。」
ーいや、マジでやばかったよ。ヒナ。-
「あはは、それはどうも・・・」あたしは頭を下げてヒナとマコに感謝する。
「美琴はやれば出来るんだけど、どうもスイッチ入るの遅いからな。」
「ホンとに、追い詰められないと動かないタイプ・・・です。」
ーう、まあ。言われた通りだけど・・・-
「美琴、お前、Mか?」
「え!M?」
「そーです。マゾです。」
ーちょっと、酷すぎない?あたしがマゾな訳ないじゃん。-
「言過ぎよ。マコ、ヒナ。」あたしが嗜めるように言うと、
「美琴、お前最近変わったな。」
「?」
「妙に女っぽくなったと言うか。大人びてきたと言うか。」マコが真剣に言う。
「そ、そっかな。」
「まあ、男を知ったんだし、当たり前か。です。」
ー赤!ー 顔が一気に赤面する。
「あああっ、あなた達!何を言ってるのよ!」
「ほら、そこ。昔はあなた達なんて言ってなかったぞ。美琴。」
「ふえ?」
「ミコッタンは、お姉ちゃんになったのです。」
「はあ?」
「だって、虎牙兄さんとCたんでしょ?」マコとヒナがとんでもない事を言ってくる。
「ひっ!何言ってるのよ。もう!」あたしは顔を真っ赤にして引く。
「ごまかしても駄目です。このヒナ様の前では、隠しても無駄な事です。」
「あは、あはははっ。」あたしは宙に目を彷徨わせて笑った。
「いーよねー。虎牙-とか呼び捨てにしてさ。」
「へ?」
「皆が見ているの気にせず、大胆にキスしてくれてさ。」
「ひっ!?」
「お姫様抱っこして貰って・・・あの後何処かにしけこんで・・・してたんだろ?美琴。」
ーあああっ!完全にバレてるぅ。ど、どうしてこうなった?-
「あわわっ、マコとヒナ、どうしてそれを!」
「くっくっくっ、引っ掛かったわね!美琴!!」
「ひきぃ、ま、またマコに負けてしまったあ!」
「あほ、です。」ヒナが呆れた様に言った。
ーとほほっー
「で、これですか。」あたしは涙目でうな垂れる。2人は美味しそうに白森屋のパフェを食べて、
「うん、口止め料だからね、んまっ!」
ーしくしく・・・-
「それで、美琴。学校出たら、すぐするのか?」
「?えっ、何を?」あたしが訊くとヒナが、
「結婚です。」あたしは慌てて、
「けっ、結婚?」
「したいんじゃないの?美琴は、家事出きるし。いいお嫁さんになれるんじゃないの。」マコが断言する。
ーうー。考えた事ないとは、言えないけど・・・-
「あのさ、マコ、ヒナ。一応あたし妹だから。結婚とかは・・・ね。」
「そうですね。」
「うっ、すまなかった。美琴。」ヒナとマコまで落ち込んでくれる。
「ううん、いいんだ。あたし今、すっごく幸せだから。これからの事は、これからなんだから。」マコとヒナが目を丸くして、
「うそっ!これ美琴じゃ無い!!」
ーあのー。一応あたしなんだけど・・・-
「ただいまー。」家に帰って、玄関を開けると、
ーあっ、珍しい。虎牙兄と獅道兄さんが帰ってる。-パタパタとダイニングに入ると、真剣に話し合っていた。
「獅道兄さんお帰り。」
「おっ、美琴。お帰り・・・」
「ん?獅道兄さん、あたしの顔に何か付いてる?」あたしの顔をじっと見つめている獅道兄さんに訊く。
「美琴、変わったな。お前。」
「ふぇ、何が?太ってないよ。あたし。」
「・・・何か、大人になったと言うか。美琴って、こんな美人だったっけ、と思ってな。」
「あははっ、獅道兄さん。褒めたってお茶位しか出ないよ。」そう言ってあたしは、コーヒーメーカーのスイッチを押した。
「じゃあ、着替えてくるね。獅道兄さんも、食べるでしょ。たまには兄妹で食べようよ。ね、あたし造るから・・・」そう言って二階の自室へ上がった。獅道兄さんの視線を感じながら・・・。
食事の後・・・
「で、さっき何話してたの?」あたしは食器を洗いながら、2人に訊いてみた。獅道兄さんが、
「ああ、それはな・・・」獅道兄さんが何か喋ろうとすると、虎牙兄が目配せする。
ー?何かな?-
「あ、いや、僕今度、JMBに入社が決まってさ。」
「へー、そうなんだ。これからは、虎牙兄の後輩になるんだ。」
「そーだけど。兄さんの居る部署じゃなくて、研究部なんだ。」
「研究部?何をする所なの?」
「あまり詳しくは言えないんだけど、聖導器の研究をメインにする所なんだ。」
「聖導器を?どんな風に?」
「うーん、簡単に言うとパワーアップ。」
「パワーアップ?」
「そうなんだ、聖導士でも獅騎導士並みの力が出せる様にね。」
「凄いね、それが出来たら、守りし者は戦力倍増だね。」
「まー、倍増とまで行くか解らないけど・・・。少しでも悲しむ人が減ればって思って。」
「・・・そうだね。」
ー獅道兄さん、ユキさんの事、引っ張っているのかな・・・-
「でも、獅道にいさんイキイキしてるね。良かった。」
「ああ、好きなことをしていられるのは楽しいよ。」
「うん。」あたしは、食器を洗いながら獅道兄さんが元気になってくれて、良かったと思った。
「美琴。」獅道兄さんが訊く。あたしは小首を傾げて、
「何?獅道兄さん?」と振り向くと、
「なんか、半年前と比べて急に大人っぽくなったな、と思ってさ。」
ーあははっ、最近皆言うんだけど、実感ないなー。-
「そーかな、何も変わんないと思うけど。」
「前と比べて落ち着いたと言うか、何と言うか。胸大きくなったな。」
ーがん!それ言うか?兄妹で・・-
「お兄ちゃん、それセクハラだよー。」
「え?本当だから・・・凄く魅力的に見えるから。妹じゃなかったらほっとけないよ。」
「うーん。それ褒め言葉かな?」あたしはちょっと嬉しかった。
「はははっ、獅道も惚れやすいからな。」虎牙兄が突然笑った。久しぶりの兄弟揃っての食事、少し楽しかった。
<ピロピロピロ>携帯が鳴る。
ー嫌な予感がする。魔獣鬼が出たのかな。- 獅道兄さんが取る。
「はい、獅道です。・・・解りました。向います。」そう答えると、こちらを振り向き、
「ヤツラが出た。一番街らしい。兄さん行こう。」虎牙兄は上着を着ながら、
「どの程度のヤツだ?獅道。」と訊くが、
「解らない。用心した方が良いかもしれない。」と、獅道兄さんが言い返した。あたしも急いで上着を羽織る。すると獅道兄さんが、
「美琴、頼みがある。取猫の所へ寄って、ある物を取って来てくれないか。」
「えっ、はい。獅道兄さん、一体何を?」
「さっき話しただろ。パワーアップ用の聖導器。試作品だけど、ね。」
「えっ!もう出来ていたの?」
「試作品だから、今テストしてみたいんだ。頼むよ。」
「うん、早くテストした方が良いもんね。取ってくるから、待っててよ。」そう言ってあたしは、玄関から飛び出した。
ーうん、早く持ってかないと、虎牙兄が片付けちゃうよ。-あたしはその時、虎牙兄の身にまさかが起きるなんて、露ほども思ってなかった。