狂犬騎士団Twitter小話集②(柴犬と狼1~7)
『柴犬と狼』
シバ一族は困っていた。
駄犬のせいで柴犬がみんな《アレ》だと思われてしまう。
賢く凛々しい我々が……!
「アレを柴犬として認めるわけには行かぬ。アレに似ている犬は帰国させるな」
当主マメノスケは宰相に手紙を送った。
「アレはダ・シバ。シバではない。決して!」
****
黒柴の親戚三人が泣いている。
「マメタロウ叔父さん。もう泣かないでよ」
『マメタ。少しムチムチなだけなんだ!』
『『帰りたいよう』』
《凛々しい》シバ一族は、女王様の戴冠式に合わせて帰国する。
だけど少し駄犬臭のするせいで選ばれなかった親族がごねて、船が出ない。
僕も泣きたい。
****
船着き場に大きな巨体の犬たちが来た。
新大陸で最後まで生き残った、狼犬の犬人だ。
『ではオマメ様。行くぞ。そいつらは』
「ロボさん。連れていけませんよ。父が怒ります」
「「きゅーん」」
ならば、と眼光鋭い狼犬。
『狼犬の子供ということにすれば良い』
「……」
****
戴冠式の後。僕の上に雷が落ちた。
「マメタ! なんでこの連中を連れてきた!」
「父上。それは……」
『マメ当主。これはお前の弟ではない。私の子供だちだ』
大きな狼犬に首を銜えられた黒柴たち。
「いくらなんでも」
「まあ!可愛らしい!」
まさかの陛下が喜んだ。
****
美しきリーゼロッテ様がデブ黒柴を見て一言。
「ダシバに似ていますね!」
((言われたくなかった!))
父上と一緒に動揺していると、ロボさんはふっと笑う。
『魂の系譜が一番近いですから』
「そうなのですか……」
優しく撫でられて、幸せそうな黒柴たち。
あいつら、と怒る父上。
****
――――でも。
「皆様がこんなに可愛らしいおかげで、新大陸の住民の皆様が余計な緊張をせずに暮らせています」
そう、陛下はおっしゃった。
「……」
父上は黙り、黒柴三人は固まる。
狼犬たちはすまし顔。
「ですから、《賢く可愛い》シバ一族に御礼を」
お土産は高級ホネだった。
****
船の中。
眼光鋭い男前のロボさんにお礼を言う。
『父上が叔父さんたちに帰国許可をくれたよ』
「良かったな」
『ロボさんの作戦勝ちだね』
「本音さ。生活に癒しは大切だ」
お礼を寄越せと、彼は僕の頬袋をひっぱりながら笑う。
――――新大陸では、シバ一族の頬袋が流行っているのだ。




