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冒険者のお仕事、公王のお仕事

元連邦兵士のルノは、ティムニートと出会い辺境で、冒険者となった。ホディーアン砦村を拠点に。狩人の訓練を受ける事になったのだが……。アーマド族の少女ファンダとの出会いから。異種族の交流を真剣に考え始めるようになった。

城塞都市レディナスに到着した。新しい冒険者15人は、予想外に大きな町に驚き、また民の領主を称える姿に。感銘を受けた。まさか自分たちが護衛していた人物が、これ程民に慕われていることに非常に驚いていた。


先日オーリアから。メイド一人のために。わざわざ遠回りして、家族に会わせた姿を見たが、貴族と呼ばれる人種が、今まで信用出来なかった彼等にとって。少なくとも良い為政者だと。好印象を抱いた。



代表してルノを屋敷に呼んで、当面の生活費。だいたい一月は生活出来る金と。職業斡旋ギルドに行けば仕事を受けられる話など。王都でも初めて聞く。進んだ内容に感心していた。「それから冒険者初心者には、モンスター戦闘訓練も受けられるから興味があれば参加してみるといいよ」

ホディーアン砦村領主バルメデ、または守備隊長ソーニアに名前を出せば、スキル獲得訓練に参加させて貰えると聞いてとても驚いていた。王都でもスキル持ちは希少である。

「スキル獲得ですか……」

「ああ、辺境守備隊の正規メンバーは、皆スキル持ちだよ」

それを聞いて、オリーアの言葉を思いだした。

「最初は慣れるまで、簡単な仕事や訓練を重ねてくといいよ」

詳しい話を聞いて、気合いも入った。



そのあとみんなにティム様の話をして、当面の生活費を渡し。今日は休む者、酒を飲みに行く者、町を見て歩く者、ルノともう一人は、仕事を探しに出かけた。



ルノの知識では主に町で、仕事を受ける方法は幾つかあって、各ギルドから仕事を受ける。町から公共事業の募集に応募、各商店の求人や、町の住民から仕事頼まれたりある。それを一括で集めたのがレディナスの仕事斡旋ギルドである。初めてギルドに足を踏み入れたルノは、様々な仕事があるのに驚いた。もう一人とは入り口で別れ。ルノが物珍しそうに、うろうろしていると。

「今日は、仕事斡旋ギルドのご利用初めてですか?」

「ああ初めてで……」

振り返った先に、ウサ耳の美しい女性が立っていた驚いていた。女性はルノの視線に。少し悲しそうな顔をして、

「ごめんなさい……、私だといやですよね」

シュンと落ち込んだ口振りに慌てる。

「あっ、済まない。俺今日ティム様を護衛して、この町に着いたばりで、本当ごめんな」

じろじろ女性の顔を見て、自分の方が不敬だと謝っていた。

「あら?、では貴方は、領主様が連れて来た期待の冒険者ですね」

クスリと笑う姿はとても可愛らしく。ルノの胸は高鳴っていた。

「そうなるといいんだが……」

「でしたら、ステータス確認を受けてから、職業アドバイスを受けてみませんか?」

素直に謝ったのが良かったのか、ミズリーさんから。仕事斡旋ギルドの説明を受ける。

「じゃギルドに登録すれば、自分のステータスを見て貰えたり、それにあった仕事を斡旋してもらえたりするるのか、へぇーずいぶんと便利だね」

だったら悩む必要はない。早速ギルドに登録して、今日は空いていたステータス確認を頼み。自分にあった仕事を幾つか説明付きで、教えてもらえた。

「ルノさんは弓の才能が高いようですし。ホディーアン砦村で、狩人の訓練を受けられて。スキル獲得を目指すと仕事の幅が増えますよ」

「それはちょっと興味あるな、因みにホディーアン砦村までどれくらいで行けるのかな?」

「町から近いですよ。馬車で半日ですね。ついでに商業ギルドの護衛を兼ねれば、少しですが謝礼を貰えて、楽にホディーアン砦村まで行けますよ」なるほどそれはいい。では早速ホディーアン砦村に行く商業ギルドの護衛の仕事を受けた。


翌朝商業ギルドの事務所に向かうと。受付で直ぐに何番の札が掛かってる馬車のところに行ってくれと言われた。馬車の前に行くと。黒髪の女の子が待っていて、ルノが声を掛けると。

「あっ良かった護衛見つかったんだね。あたしサムルよろしくね~、悪いけど早く出発したいから乗って」

「わかった、俺はルノ今日はよろしく頼む」

「はいは~いよろしくね冒険者さん」

にぱり笑っていたが、どうやら仕事上の付き合いと割りきるタイプのようだ。


馬車は町の外壁近くを通って城門に。そこから南に向かって街道を走って行くと。

「あっバッタが現れたわ。そんな訳でよろしく」

サムルの言った通り、ぴょんぴょん跳ねながら、三匹のバッタが現れた。ルノは素早く弓を取り出して。矢をつがえ。瞬く間に倒していた。

「ご苦労様~、冒険者さんなかなかの腕ね。良かったわ~。これは安心してダーリンの元に戻れるわね」

上機嫌に笑う女商人に。しっかりした女だとルノは苦笑していた。


それからモンスターが現れることもなく。無事にホディーアン砦村に着いた。

「おっサムル久しぶり、そっちは初めて見るな、ギルドカード持ちか?」

「あっはい」斡旋ギルドで発行されたカードを。兵士らしい二人に見せると。

「おっ弓の技量が高いな、領主様に話せば、スキル獲得訓練を受けられるし。他にも仕事は色々あるから、屋敷の窓口で詳しく聞いてくれ」「あっありがとうございます」親切な兵士に別れを告げて、サムルと砦村に入る。


村と聞いて、小さな物と考えていたが、通りを歩く人も多く。町並みに通りは整備されていた。また大きなアルマ教会があるのに驚き、色々な種族の姿を見ることが出来た。領主の屋敷は、通りを真っ直ぐ行った三番目に大きな物で、一番大きいのが巨人族の家で、次に宿屋だそうだ。村の領主の屋敷としては。一般的な大きさである。一階は改装されていて、仕事斡旋ギルドの窓口があった。

「ようこそいらっしゃいました。ホディーアン砦村ギルド窓口担当のエリアともうします」

「俺はルノと言って、ティムニート様に誘われ。先日レディナスに着いた冒険者の1人なんですが」「まあ~ティム様。お戻りになられたのですね」

「ええ。昨日」

「まあ~それは朗報ですわ。領主様にお知らせしますから少々お待ちください」


上品なギルド職員エリアが、奥の扉に消えてほどなく。細面の青いローブを着た中年男性が、柔和な顔を此方に向け、軽く会釈して。エリアに何やら話す。

「お待たせ致しました、二階でお話を伺いたいと申されました。ルノ様お願い出来ますか?」

「ええ構いませんよ」

あまり領主らしくないバルメデさんに薦められて。しっかりした造りのソファーに腰掛けた。

「初めまして地方領主バルメデともうします」「初めまして、ドルマリア連邦軍所属ルノともうします」


これには驚いたようバルメデに、ここは詳しく話すべきだと判断した。

「なるほどそのような事を。分かりました私かソーニア隊長を尋ねた冒険者には優遇いたしましょう」

「ありがとうございます」

「それでルノさんは訓練を希望しますか」

「ええ狩人のに興味があって」

それからスキル獲得訓練は、直ぐに結果が出ないので、村の仕事をしたりして空いた時間に。狩人の訓練を重ねることにした。



その頃ティムは、新しい使用人メイド長リノンのお陰で。まとも食事にありつき、感激したものだから、コディーを膨れさせた。



そんな日から。数日後……。

「それでリノンさん、屋敷に慣れてきたみたいだから。今度宿屋や酒場の主を交えて、乾物を使った料理の作り方など実演して欲しいんだけど……」

お茶を頂きながらティムは提案した。きょとんとしたリノン。

「あのティム様?」

「ああこの間リノンさんの実家にお伺いした時に見たのですが、あの辺りのお店で扱ってる乾物って、今のところ海沿いのお土産として作られただげですよね」「あっはい、王都に向かう商人さんや、旅人さんに好評なんですよ」多くは日持ちする干物、塩漬けの他にリノンの実家では、珍しい食材のナマコ、あわび、貝ひも、昆布等も扱っていた。

「でもあれって、調理の仕方教えてもらった旅人が買うとしても。割高な物も多いですよね?」

「え~とまあ、そのため原価ギリギリで売らないとダメなもの多くて、利益少ないんですよ」

流通していないのもあれだが、乾物の良さをアピールしていないのが、流通が滞る理由である。

「王都でも思いましたが、海産物が非常に少ないですよね。海があるのに」

ティムの呟きにリノンは困ったように首を傾げた。それには幾つか理由があった。ドルマリア連邦の国風と言うか、王家では海の幸をあまら食べて来なかった歴史があった。アルマ歴以前から数えると。腐りやすい海産物を食べるよりも、穀物、野菜の加工の方が楽だったことも一員である。しかしティムが生を受けた千年代では、流通網が発達して、たまにではあるが生魚が食卓に上がる程度に。庶民に馴染み深い安価な食材になっていた。逆に乾物の値が上がってたりするが……、

「それで明後日の夜。宿の主人、酒場の主人、今度始める。お食事処の主人達を集めて、乾物を使った料理。出汁と言った概念を。食に携わる人に味わって貰い。その様子を見せるため商業、農業ギルドの幹部も呼んで、試食会を行います」

今に始まったことではないが、やはりきょとんとしていた。

「料理を作るのは構いませんが、そのわざわざ私に知らせるのは……」

確かに故郷の味を食べて貰えるのは嬉しい。でもわざわざそんなに沢山の人に食べて貰わなくても。リノンはそう思ったのだ。

「何か勘違いされてるようなので、一つ断りますね」

そう言って、ティムは料理を振る舞うつもりでは無いこと。これが大きな仕事になるとにこやかに言われて、ますます理解出来ずに困惑していた。

「流石に難しかったですかね。ただこれだけは心に止めて下さいね。明後日の結果次第ては、リノンさんのご実家は、リノンさんに感謝することになるでしょうね」

まるで謎かけのような言葉に。この時のリノンは、はあ~としか言えなかったのである。そもそもティムが、海産物、それも乾物を流通させよと思ったか、この時代は、まだ保存食の数が少なく。でも魔族の大規模進行もあって食料不足になった時期で、野菜など手に入らなくなりある病気が蔓延した。それを辺境王アルメルは、海の幸を流通させることで、辺境は比較的ましだった。


後々ドルマリア連邦も、だったらやりますてな感じで、同じ方策を取り入れ。多くの命を助けた。実際はかなり先の話だが、ティムはついでとばかりに。みんなを仲間にしておくそんな考えからでの試食会であった。


後日。屋敷の食堂に招待された面々は、やや緊張して、運ばれてくる料理の数々を味わう、スープは昆布を水から煮出し。炒めた玉ねぎ、ベーコンだけで、味付けは一切無いものをラディアは一口飲んで、驚きの表情を浮かべた。俗に一般家庭で飲まれるスープを。昆布から出汁を取った物を使っただけだ。

「……」

次に戻した海藻のサラダ、多少癖はあるが、不味くはなく。なかでもコリコリした食感の不思議な食べ物は、非常に気に入った。メインのあわびステーキ、干物のフライ、干しホタテと穀物粥。ちょっとした贅沢ではあるが、かなり満足出来る食事に。商業ギルド長ラディアは嬉しそうな顔をして、主賓のティムからの事前招待と新しい交易品の試食に。新鮮な驚きを持って唸っていた。

「領主様、今宵のご招待ありがとうございました。私は個人でございますが、ぜひ仕入れて、お客様に食べて頂きたいと思いました」

宿屋の主が口を開けば、揃って同意を口にした。「領主様……」酒場を営む主が、おずおずと手を上げて発言を求めた。

「え~とあの、価格はどのくらいなのでしょうか」

問題はそこだ。乾物だけあって安い物ではない。だから流通網が出来るまでは、人々に覚えて貰う必要があった。

「この商品を扱って頂く前にそうですね。二月の期間を区切り量を限定して、税を掛けず輸入したいと考えております。コディー」

控えていた少女を促して、集まっていた皆に非課税、課税した乾物の値段。今日用意された料理のレシピ。原材料の価格。それを引いた金額。一人前いくらで出来るか、どれくらいの量を作ることが出来るか、細かい試算がされた書類だった。

「少々高いですが、ちょっとした冒険には面白そうですな」

「ああ確かに。スープだけなら銅貨一枚上乗せすれば元は取れるし。冒険者は油っぽいもの好きだし。金があれば旨いもの食いたがる。乾物だったら日持ちするのは間違いないからな」

比較的に好意見があった。しかし商人にはあまり旨味を感じない仕事と写る。「ティム良いかな」

肩口で髪を切り揃えた。眼鏡美人ラディアが、ズバズバ商人側の意見を上げていく。それに追従していく。

「やはり海のある町まで、どんなに急いでも片道10日は掛かりますし。危険を犯すまでのメリットを感じませんな」

大柄な商人の言葉に同席した商業ギルドの幹部三人も頷いた。「そうでしょうねだからこう言った方が、分かりやすいかな。新しく町を2つ作るから、さほどサムルーフとの交易はさほど難しく無くなると言ったらどうします?」



辺境から海沿いにある町と交易をするには幾つかの障害がある。一つはモンスターが徘徊する闇の森、一つは盗賊村ザイン、奴隷商人の町タウルであった。この2つは辺境の暗部とも知られる場所で、歴代の領主達は、見てみぬフリをしてきた訳だが……、

「こことここに町を2つ作るから、幾つかの障害は排除される」

指指したのはなんと闇の森の一部であった。

「あのなティム、幾らなんでもそんなところに町なんて」

「あっラディアさんゴメン。そこは問題ないんだ。だってその為にカムイと第3師団。それに巨人族に仕事を依頼してあったから。そもそもの勘違いさせたのなら謝りますね。乾物の輸入はついでと言ったら怒ります?」

ティムはこの場に集まった人に内密にと断り。アルメル地方と名付けられた。危険地域を含めた辺境を領土に任んじられたこと、既に沼地の村村長、盗賊村ザイン、奴隷商人の町タウルには告げてあり。「アルメル公国としてザインとタウルには直ちに立ち退きをするようにとね」この場で口にしてないが、東砦の第2師団タナップ、第4師団アスマンを差し向けていて、相手の態度により。後数日で結果が出る。そのことは内緒にしてあった。ティムとしては、タウルの奴隷商人を一掃してから、二年掛けてまともな町に作り替えて行く計画であった。盗賊村ザインは新しい砦とする予定だ。

「ティムまさかそこまでやるとはな……」

「ラディアさん。内緒にしてたのは謝ります。何分奴隷商人は貴族と繋がってますからね、公国の領土内のこと。ギルドに迷惑はかけたくありませんでした」

まだ公王を名乗ってないが、ティムはドルマリア連邦に認められた。公王である。急ぎ国内を安定させるなら、それくらいやっても可笑しくなかった。

「まあ~私を。心配してと言われたら。女として嬉しいけど、ティム一応いっとくわね。ザインの頭マウテは危険な相手よ。それに奴隷商人もしぶといわ、油断しないでね」

ありがとうございます。微笑んでいた。


時間はティムが王都から出る数日前に戻る。カムイはティムに呼ばれて、ノーブル巨人族に新しい町の建築について、頼まれた。

「闇の森を削り町をですか……」

「正確には、ここに街道を通すだけだから、それほど難しいことではないよ」

さらに詳しく内容を聞けば、大変だが出来ない話ではないなと納得出来た

「ぼくが帰る頃は、噂を聞いた民が集まって来てるだろう。人手は足りる筈だ」

それと同時に。司政官アルキメデスに。幾つか準備とタナップ、アスマンに別の命令を認めた手紙を託す。その日。早々にカムイは王都を後にした。


人間の足で20日は掛かる距離を。カムイの足なら7日で走りきる力があった。今回は遠慮なく飛ばして帰った。


久しぶりに東の村に立ち寄ったカムイは。新しく村長となったレオに。ティム様の計画を進めるため準備を依頼する。

「これはまた大仕事だなや~、カムイさん」

「うむ、大変だと思うが、よろしく頼んだ」

「はいおまかせくだせい」

若い長は嬉しそうに笑った。


翌日東砦に寄ってタナップにティム様の手紙を渡した。中肉中背愛嬌のある顔立ちの青年は、魔物との戦いで多大な功績を上げていて、地方騎士の職を与えられ。オリーアと同じ大隊長に昇進していた。また部下も増えて東砦は800近い兵が常駐していた。第4師団は西の荒れ地で増殖した。ゴブリンの群れを討伐に出てるので、東砦に戻るのは7日後になる。それから準備を整え。盗賊村ザイン、奴隷商人の町タウルを落とすのは、大仕事である危険も伴う、

「おいおい流石はティム様だな、まさか公王となるとはな……」

何度も手紙を読み。気合いを入れていた。


砦を後にした翌日。城塞都市レディナスに立ち寄り。司政官アルキメデスにティム様からの手紙を渡して、

翌朝。ホディーアン砦村の地方領土バルメデに手紙を届け。ようやくカムイの仕事は終わった。数日休みをもらい。それからレディナスに戻り第3師団を引き連れ。闇の森に向かうことになった。


森の伐採を始めて30日あまり。ようやく海に抜ける道が出来上がり。これで新しい町の工期に移れる。


新しい道が通った日から前後して、第1、第4師団は盗賊村ザインを急襲、これを殲滅、奴隷商人の町タウルを包囲して奴隷解放。商人を投獄していた。


ホディーアン砦村。奴隷解放と盗賊村ザイン壊滅が知らされたのは、翌日のこと。その日は大いに話題となり。酒場では新しい仕事が増えると喜びの声を上げていた。ルノが村に戻ったのは、そんな中であった。


早速仕事の達成を報せに。領主の館兼仕事斡旋ギルド受付に行くと顔馴染みのエリアから金を受け取り、随分騒がしいからとりあえず聞いていた。

「実はですね。盗賊村ザインと奴隷商人の町タウルがなくなったんですよ」

「大事じゃないか!、誰がどうやって」

気色ばみ思わず聞いてみると。

「実は公王様が、王都を出る前から準備なさってたようですよ」

にっこり上品に笑う、彼女が噂通り、良家のお嬢様ではないかそんなこと考えながら。小さく唸っていた。

(あの方は本当に俺達と同じ人間か?)

側で見てると、聖人君主のようだととりとめなく考えていた。

「あっそうだルノさんが戻ったら。ソーニア大隊長が顔を出して欲しいと申してましたよ」

ソーニアとは砦村の守備大隊長のことで、バルメデさんの副官だ。エリアの話では元ティム様の側近のお一人で、四天王に数えられた武人である。魔族の要塞破壊、魔物の殲滅戦に参加。ホディーアン砦村の守護者と言われてるすごい人だ。ルノは彼から弓の技とスキル『追跡』を学び、アビリティも教わっていた。いわゆるちょっとした師弟関係を結んでいた。今学んでいるのは属性付与と呼ばれるアビリティで、火矢のような魔法に近いアビリティとは違うが、覚えればモンスターに有利な属性アップが付けられる物だ。今のルノならば、グレータドラゴンにも傷を与えられる可能性があるとのこと。

「そうか、守備隊の宿舎に顔を出すよ」

「そうして下さい。ルノさんまたのご利用お待ちしております」

にっこり上品に笑うエリアに見送られ。ルノは窓口を後にする。


守備隊の宿舎に行くならついでと。鍛冶屋を訪れた。相変わらず数人の弟子が、ドワーフの親方と汗を流していた。

「あっルノさんいらっしゃい」

「どうもドーラさん」

「今日は弓のメンテ?、矢の補充?」

「新しい弓を作って貰おうかと。ようやく素材が集まったからさ」

「あっそうなんですね♪。ようやく鉄の弓卒業ですか」悪意はないが、ルノの腕で鉄の弓と言うのはさすがにどうかと散々言われていたので、苦笑していた。

「それで、何を作るつもりですか?」


興味深そうに聞かれると、思わず苦笑しながら。素材を並べていた。ワイバードの羽、暴れ樹の材木、岩石ボアの外皮、ビリリワームの糸、補強材に屑鉄50個、鋼のインゴット1、

「おっ、これだけあれば、属性弓の一つ雷弓が出来ますね」

「ああそれが目的で素材を集めてたからな」

自慢ではないが、なかなか大変な道のりだったのだ。

「どれくらいで出来る」

「そうですね……、4日で、出来ると思いますよ」

「そうかそれで、後鉄の矢を10、属性付与矢を10頼む」「はいです。矢は先に持ってきますか」

「そうだな頼む」

矢を受け取り、弓の代金を払って、鍛冶屋を後にした。



ルノがこの村に来てから知ったが、魔界の魔物が複数逃げてしまい、新たな新種が増えていた。そのため冒険者は、強くなるしかなかった。そこでホディーアン砦村にある。鍛冶屋が始めた新しいサービスがある。新しい武器の製造だ。一般的に作られてる武器ではダメージすら与えられないモンスターが増えたからで。随分前から準備はされていた。



村の入り口近くにある鍛冶屋から、さらに左の奥に進むと。砦の見張り台が見えてきた。その下に広場があって、守備隊の新人が訓練をしていた。

「よお~ルノ!」

「アシジスどうも」

長身のスレンダー美人アシジスは、ルノの3つ下で、第2師団少隊長である。長身が高いせいか年下なのに。しっかり者に見られるので、彼氏が出来にくく部下からも。残念なお姉さん扱いされていた。ちょっと可哀想な女性である。

「ここしばらく見なかったけど。仕事か?」

「ああ依頼で、ファンダと岩石ボアを狩りに行ってた」

「あっ、じゃあ素材が集まったのね」

「うん、これもアシジスのお陰だよ。ありがとうな」

素直にお礼を言うと。パッと華やいだ笑顔を浮かべた。

「それはそうとアシジス、ソーニアさんかローダスさんいるかな」

せっかく喜んであげたのに。朴念人のルノは相変わらず真面目な男だった。

「副隊長はいないけど……。大隊長なら中よ~、それよりルノ。たまには付き合いなさい」

飲む真似をして、部下達の訓練に戻った。



守備隊の宿舎隣。同じ大きさの建物があって、一階は会議室と。奥が食堂とお風呂、二階がソーニアの執務室があった。二階の奥にある扉を叩いて、返事があったので中に入る。室内は質素な造り、あまり広くないが、ソーニアの趣味で、花が窓枠に飾られていた。書類から顔を上げて整った顔に、親しみの笑みを浮かべた。


茶色の髪、整った顔。ぺーぺーをそこそこ使える兵にする。人を育てる技術に関して、有能な人物であった。また軍の内政にも明るく。バルメデ領主の紛れもない右腕であった。

「お久しぶりソーニアさん」

「うん元気そうだねルノ、どうだいそろそろ素材集まって、まともな武器揃をえたかな?」

「うん、今日依頼してきたよ」

「それは何より、ところでどれくらい掛かる?」

「4日かな」

ルノが答えると。

「うん、それなら大丈夫か」

ソファーに座るよう進められて、ルノはこの一月あまりのこと思い出していた。


ホディーアン砦村に着いて二日目。ルノは昨日申し込んだスキル訓練に参加するため。



早朝。南の入り口に行くと。四人の冒険者らしき若者がいた。

「やあ~君が、ルノかいよろしくね」茶色の髪、軽装に身を包んだ整った顔の青年がにこやかに手を差し出した。

「ルノと言います」

「俺はソーニア一応この村を預かる1人さね。よろしくな」

パチリウインク残して、三人に挨拶している時。長身のスレンダーな女性が慌てて走って来た。一般的な皮の服を着た冒険者ファッションである。手には重そうなメイスを手にしていた。

「だっソーニア大隊長!、大隊長自ら訓練を指揮すると聞き、不精アシジスご指導賜りたく参りました!」

やはりかルノは納得して、あまり強そうには見えないソーニアを伺う。真っ先に反応したのは、小柄な少女、右手を怪我してるのかぼろぼろの布で覆い、珍しい青いモンスターの皮を鞣した皮鎧を身に付けていた、腰に大降りの戦ダガーを吊るしていた。

「アなた本ものですか、アなたがソーニア様?」

少女のしゃべり方が多少気になった。

「おやお嬢さん、君はアマード族かい」

「アっ、ハい!、ソーニア様が助けてクれた。感謝」

アマード族とは、沼地の村に住まう種族で、身体の一部に蛇や鰐の遺伝子が組み込まれており、彼らをキマイラと呼ぶ者もいた。

「そうか君はあの時にいたんだね」

屈託なく笑い。挨拶をした後。明らかに苦笑を滲ませると。事の発端を起こした部下ぽい女性を。呆れた顔をしてじっとりした眼差しでみやる。

「アシジス……、君は本当に困った子だね」仕方なさそうな口調で言われて、アシジスは首を竦めていた。

「皆さんには申し訳ないが、五人で訓練を行うことになったから」



最初に学んだのは、森の中にある獣道の見つけ方だ。

「これが魔族の破壊兵器跡ですか」

黒髪の少年がキラキラした顔でソーニアに聞いていた。

「えっ破壊兵器?」

驚いた声を上げたルノに。ソーニアは小さく笑い。獣道を探しながら。ついでとばかりに移動巨大要塞ギガントが起こした殺戮兵器の顛末を話してくれて、この場にいたみんなで恐怖に震えていた。

「ティム様がいなければ、今頃ホディーアン砦村はこの世から消滅していただろうね」この目で、破壊跡を見なければ、とても信じれなかった話だ。

「その内、要塞跡を探索することもあるだろう、あの地下にはグレータデーモンが入り込んでしまってね。厄介なダンジョンを作っていてね、出現モンスターのレベルも高いから。気を付けるようになね」

その日は森で採集できる薬草、珍しい薬の材料など。モンスターの中には素材があることや、

「それを集めて珍しい武器、防具が作れるから。詳しいことが知りたければ鍛冶屋のカウンターで聞くか。仕事斡旋窓口にあるカタログで見れるから。自分たちで調べてみるように」

そんな感じで3日間『追跡』スキル覚えるため必要な訓練の仕方を学んだ。

「運が良かったら10日程で覚えれるから、その間モンスターの討伐、採集にチャレンジするといいよ」

僅か3日であったが、実り多い時間であった。


翌日、朝から仕事斡旋窓口に顔を出して、モンスター討伐依頼、採集依頼を物色していた。

「アのアなた」

聞いた声だった。振り返り見るとこの3日顔を合わせ訓練生の1人、確かファンダと言ったか、

「どうも昨日ぶり」

「アの……お願いアります」

彼女の話はしばらく仲間になってくれないか、そんな話しでした。

「それなら昨日まで一緒だった。二人に声をかければ良かったのに」すると少し暗い顔をして、訳を話してくれた。



アーマド族は別名キマイラと呼ばれていて、身体の一部に蛇や鰐の遺伝子が組み込まれ現れる種族だ。辺境でも病気じゃないか、うつるんじゃないか、少し前まで迫害されてきた歴史があった。それゆえに忌避されてると。悲しそうに呟く。昨日の二人にも頼んだそうだが、断られたそうだ。

「そうか、俺でいいんなら構わないよ」「本当!」

「ああ~、俺はルノ、改めてよろしくなファンダ」

「ハい!」

パッと顔を輝かせた笑顔は、とても綺麗だと思った。二人になったが、最初の仕事は、採集を選び地形を知ることが、自分やスキル覚えるのに必要だとわかっていた。

「ファンダ行こうか」

「ハい」仕事斡旋窓口で、採集の仕事のこと訪ねると。増血剤40錠分の材料の一つ。アルミネの実を20取りに行く依頼である。



アルミネが実を付けるのは、採石場の先にある古い炭坑近くで、植物系のモンスターが徘徊しているため。採集は大変である。

「これがアルミネです、ピンク色なんですが、熟すと黒色となります。お二人には黒色のアルミネをお願いしますね」

数日前に話したエリアとは別の職員が説明してくれた。お金を出すとコピーしてくれるので、一枚頼んだ。

「銅貨3枚になります。汚さずお持ち下されば銅貨2枚で買い取らせて頂きますので無くさぬようお持ち下さい」礼を述べて二人は、屋敷の近くにある屋台で軽食を買って食べてから、早速南の入り口から森に向かった。


まずは村から少し歩いてくと。しばらくして看板が立てられており。採石場に向かう道が見えてきた。時々荷馬車が通るので、人が使う時はもう少し先にある。細い畦道を使う、二人は畦道を見つけ、そこから森に入った。



先頭はファンダ、戦ダガーを抜いて、張り出した葉を切り落としていく。しばらくして慣れてないようなので交代した。ルノが用意していたのは鍛冶屋で安く買える山刀である。包丁のでかいやつと言えば分かりやすいか、何度か訓練でやってたので慣れた物だ。日が高くなって来た頃。ようやく視界が開け、採石場が上から見渡せた。この道は普段石切職人が通る程度なので、時々畦道近く木々の伐採やモンスターの駆除を定期的に行っているので。モンスターに出くわすことは少ないようだ。しばらく山なりに坂を登って行くと。段々茂みが増えて、モンスターと遭遇することが増える。

「おっ、動く茂みだな……」

通称迷い草の一種で、植物系のモンスターである。そこらに何体かいて畦道をわからなくしていたようだ。

「ファンダ行けるか?」

コクン頷いた。二人は近くにある茂みを次々に伐採して行く。数がいたので多少時間は掛かったがどうにか倒せた。

「炭坑まで、もう少しだな」茂みに隠れてた立て札を見つけていた。少し休んでから、二人は先を急いだ。あまり遅くなるようなら。炭坑近くにある山小屋で、一泊することも考えなければならないからだ。


途中、新種のビリビリワームが現れたが、ルノが鉄の弓と鉄の矢で撃退した。「思ったよりもスタミナが高いな」

「ルノ、アりがとう」

「あれは仕方ないさ、見た目は黄色い芋虫だし。触ると麻痺する弱い電流が流れてるからな……」

このままでは素材にならないが、オオマイ蛾に変化するときに取れる糸は、弓の素材、防具の素材に使われ、中身も特殊な薬の素材となる。「この辺りはビリビリワームが生息しているか」

お金が貯まったら、武器をもう少し良くしたいな、ルノは切実にそう思った。


炭坑まで着いて、その少し上に。沢山のアルミネが実を付けていた。二人で手分けして。20個無事採集済ませた。その日の夕方に村に戻る。

「はい確かに、銀貨3枚になりますお確かめ下さい」

「確かに」

二枚をファンダに渡した。

「ルノ!、これ」

「とりあえず俺と同じ宿なら3日は泊まれる。飯に行こうぜファンダ」

「ハい!」

村に共同浴場があるから、飯を食った後ファンダを誘い風呂に行った。入浴料銅貨3枚は安くないが、疲れが取れるのはありがたい。

「初めてお風呂ハいりました。気持ち良かったです」ニコニコしているファンダは、女の子らしい服に着替えていた。

「そうか良かったな、明日も仕事探しだな、頑張ろうぜ」

「ハい、頑張ります」

クスクス笑いながら、その日は早めに休んだ。



翌朝、あいにくの曇り空であった。昨日と同じアルミネの採集があったのでそれをやることにした。

「おはようございます。アルミネの採集は初めてですか」

にっこりと上品に笑うエリアに。

「いや昨日やってるから大丈夫だよ」

「あっそれは良かった。でしたら少し増量してはどうですか?、ちょうどお二人ですので」

そう言って、料金表を取り出していた。

「最近ビリビリワームが出ておりますので、直接攻撃の冒険者は苦手としており……」

今村にいる冒険は残念ながら、魔法使いがいないこと。弓使いも少ない事を説明された。

「なあ~リックの貸し出しか中古品の販売とかしてるか?」

ルノが聞くと直ぐに気が付き、「確か以前いた冒険者さんが置いてた物が、倉庫にあります。ルノさん大量にお持ち下さってくれたら。そのなかからお好きな物を一つ。お二人ですのでお二つ差し上げましょう、確か武器や防具もありましたので、そう言うともう一人の職員を呼んで、倉庫に案内してくれた。

「リックを二つでしたねどうぞ」

職員としばらく倉庫を探していると。ようやく古ぼけたリック二つ見つけた。職員にお礼を述べた後。二人は急ぎ足で、アルミネの収穫に向かう、



途中ビリビリワームを二匹仕留め。昨日の半分の時間で炭坑まで到着。何組か冒険が炭坑に入ってくのを見送った。

「さて頑張ろうぜファンダ」

「ハい、沢山取ります」

二人は早速アルミネの収穫を始め。日が高くなるまでには、リックがパンパンになる大量であった。



「全部で143個ですね。これだけあればしばらくは持ちますありがとうございました、では此方を」

金貨二枚と銀貨8枚思ったより稼げた事になる。早速半分をファンダに渡した。それを大切そうにしまう、

「ではルノさんお約束通り」

間もなく交代だと言うエリアを待っていた、話を聞くと彼女は。仕事斡旋ギルドホディーアン砦村の責任者だった。「まさか責任者だったとは……」

「実はティム様の意向で、窓口業務は女性の方が、よっぽど愚かな人じゃなければ、相手も柔らかな対応になりますからね」「なるほど……」

城塞都市でも感じたが、下手をすれば王都よりもしっかりしたシステムが、辺境にあることを自分たちは知らなかった。これを知れば王都もそれどころか、国が変わる可能性を感じていた。

「さあ~お一人一つ。お好きな物をお選び下さいね」

昨日も思ったが、広い倉庫には、武器・防具から衣服まで色々な物があった。色々考えてファンダは丈夫そうな革のブーツを、俺は革のリックをもらった。


そんな感じで仕事こなしながら採集に慣れた8日目。森に入ると異変を感じていた。森の獣道が直ぐに分かるようになっていて、動物が通った足跡や、モンスターの通った跡も簡単に見つけられるようになっていた。その日仕事の報告を済ませエリアさんがいたので、自分の変化を言うと。目を丸くしていた。

「もしかしてスキルを習得なされたかもしれませんね」

そう説明されて、初日に行ったたように。ステータスチェックを受ける事に。ついでにファンダも流れで受ける。

「あっ!、おめでとうございます『追跡』スキルを覚えられましたね」

「おっ、おお~やった!、マジでスキル所持者かよ」

興奮して喜んだ。

「おめでとうルノ、アっアのーお願いします」続いてファンダを見てもらうと。

「あらファンダさんは、スキル所持者ですね」驚きの話をされた。

辺境を舞台に元兵士が、少しずつ成長して行くルノと、相棒のファンダ、いつしか二人は辺境に。大いなる奇跡をもたらせますが、それはまだまだ先の話。やがて魔族との戦いにも巻き込まれる運命にあります。また同じ物語で背徳の魔王でした。

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