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ロードゼロ2

辺境で見事な手腕を発揮するティムニートに、ドルマリア連邦女王リズベルが興味を抱いた。そこで女王派の辺境元伯バーザルを使者に立てて、元騎士で、部下アルキメデスと会うため。西の村を訪ねていた。

ティムニートがホディーアン砦村の領主になって、一年が過ぎようとしていた。地方特に辺境に住まう民にとって。名を知らぬ者はいなくなっていた。



━━そんなある日のこと。西の村の領主アルキメディスの元に。ドルメリア財務大臣、宰相連名による手紙が届いた。内容はティムニートの人となり。領主としての手腕を問う手紙であった。しばし迷ったが、詳しい内容と自分がどう思い。信頼を寄せてるか書いて送っていた。それを何度か繰り返す内に。ティムニートが、魔族の大規模進行が近々あるのではないかと考え。警戒してる胸を伝えてから。半年過ぎた頃。地方領主を束ねる辺境伯バーザルが、少ない護衛を率いてアルキメディスを訪ねて来たのは、何故わざわざ辺境伯バーザル様が、元部下であるアルキメディスを訪ねて来たのか、些か戸惑いながら出迎えていた。

武人として名を馳せていたバーザルも往年の力を失い。家督を子息のブラーゼル様に譲っており。元バーザル伯爵と言うのが正しいが、長年主として敬って来た人物である。

「お久しぶりです伯爵様」

そうアルキメディスが発しても。叱責する人物ではない。多少苦笑を浮かべたが、

「懐かしいのアル」

すっかりお髪が白くなってしまったが、こうして無事な姿を見れるなら、アルキメディスにとって喜ばしいことであった。どうして辺境伯爵、元伯爵のバーザルが自ら足を運んで来たのか、質素な館に案内したのち知ることになった。

「なんですと!、魔族の大規模進行の疑いが強い。そう申されますか」

顔から色を無くしたアルキメディスに。重々しい顔を崩さず頷いていた。

「リズベル陛下から辺境領主でしかないお前と。手紙のやり取りをしてると聞いて、眉を潜めたが、最近噂になっておる御仁の能力を知りたくなったらしいのだ」

「それで女王派の財務大臣と宰相様が……」

リズベル女王陛下は、在位数年の若き女王である。まだ15と若いが、聡明な方だと聞いていた。だがタカ派に属する貴族会筆頭ラルバルト侯爵は、前王弟ラギナード公爵の後ろ楯を受けて結託して、王都の内情は割れている。そんな大変な時期に魔族の大規模進行が起こる可能性が、取りただされたと前置きしていた。

「女王やラギナード公爵様達が動くよりも一年も早く。大規模進行に備えていた貴族がいた。それを知り両陣営が、ティムニートと呼ばれる少年領主を調べ始めた。わしはリズベル女王の数少ない理解者でな、辺境伯の貴族ならばわし自ら人となりを確認する必要を感じたのだ」

思いもよらない話だったが、ティムニートの鋭い慧眼に気が付いて、息を詰めていた。

「伯爵様、この話はここだけの話にして頂きたい……」

先日東の巨人族の長カムイと謁見した時に。ある相談を受けていた。

「私アルキメディス、東の村長カムイは、ティムニート殿にそれぞれの村の統治権を譲りたいと考えております」

これは予想外な展開に。目を丸くしていると。理由を語った。



この一年で、西の村とホディーアン砦村は三倍に準ずる民を受け入れ。ティムニートの助言に従い。村はみるみる発展を遂げたこと。西の村民からも尊敬を集め人となりから。十二分3つの村を統治するだけの才覚を認めてることを上げていた。バーザルも今日初めて知った事実もあったが、その一つが商業・工業ギルドの発足である。既に商家を営んでると聞いていたので、ゆくゆくはバーザルの方で働きかけようかと、統治者の威厳を持って対応する心構えでいた。しかし手紙に認めれない詳しい内容は、バーザル持ってしても舌を巻く手腕だった。

「なるほど……陛下が気になさる筈だ」自分と変わらぬ年齢の領主が、辺境を変えつつあると知り。ティムニートのこと知りたくなるのも仕方ない。その程度の考えであった。これは考えを改めてねばならぬな、嬉しい誤算につい笑みを浮かべていた。

「アル、姫様が気にしてる最大の懸念がある。辺境部隊はどうだ?」

まさか謀反を企ててるのではないか、それだけ優秀な領主が統治するならば、その手の野望を抱き兼ねない。

「ぷっ。あはははははは、あはははははは、ティム殿が謀反ですと?、いくら伯爵様とて今の言葉聞き捨てなりまぬぞ!」いきなり立ち上がったアルキメディスは。怒りを露にして、元主である。辺境伯を怒鳴り付けたのだ。ポカーンとする他なかった。

「おっおいアル……」

どうにか宥めようとして、持参した酒を薦めることにした。しばらく怒りが納まらぬ様子だったが、良質な酒の助けもあってか、どうにか話を聞けるところまで自分を取り戻した。

「伯爵様、怒鳴り付けたことは謝りましょう。しかし二度とティム殿の悪口は言わぬようお願いいたします。村人が聞き付ければ面倒になりますので……」

何か含む言葉に。思わずうめき声を飲み込んでいた。伯爵側やドルマリア連邦の対応次第では、独立を計るくらいやるとアルキメディスは示唆していた。唸らずにはいられない。あの生真面目で、融通の利かないアルキメディスがそこまで評する人物が、凡庸な貴族の少年とは思えなかったのだ。



翌日、辺境部隊の護衛を受けて、ホディーアン砦村を訪れたバーザル伯は、道すがら辺境騎士の称号を与えられた。ひとかどのな雰囲気を纏う、オリーアと名乗った青年にそれとなく話を聞いてみることにした。すると都にいる名ばかりの騎士よりよっぽど有益な話を聞くことが出来た。

「古戦場跡で訓練をとな……」

「流石に地下遺跡には入り込めませんが、街道からある一定の地を浄化が進み。商人の安全を守っておりまする」

まだ若いが、辺境部隊長を任せるに十分な力量を感じれる好青年であり、見たところ、腕もありそうだ。

「はっ、領主様の命で、訓練を重ねた結果。スキルホルダーが潤沢に増えておりまして……」

見習い商人達を守る訓練にて、護衛任務に慣れてる辺境部隊は、バーザルから見てもレベル。練度、士気が高いのが見て取れた。何よりも新人訓練の内容は、非常に興味深く拝聴していた。

「現在の辺境部隊砦の任務は、街道の治安維持の他、材木の加工、石材の加工技術が発展しておりますホディーアン砦村から、ラディア商会を通じて、これを輸出。外貨を稼いでおります」その辺りはアルキメディスからも聞いて、とても驚いていた。辺境では、家屋の材料が不足していた。危険な森に入り木を伐採、加工なんて難しいことだ。それを生業にする以上材木、石材は割高になるが、安全に欲しい量を買えるのならば、購入する側は無数にいる筈だ。

「我々辺境部隊はその他、商隊の護衛任務をやっております。初期の訓練で木こり、狩人と行動を供にするので、そちら方面のスキルホルダーもおります」

兵士に必要とされるスキルは、狩人、木こりのスキルに重なる部分があって、辺境部隊の士気と練度が高い理由を察した。

バーザルから見ても隊長格の者は、人柄、腕前、何れかに才を見せた者と感じれた。だがそうした物の中にも自分本意な人間もいるはずなのだが……、そう思ってると。

「やあコルマ、サムル」

側を通った馬車に乗る商人に手を上げた。後々バーザルは知る。自分本意な性格の人間は、案外職人や商人に向いていたことを。




人を見て、向いた職業に着ける。まるで職業斡旋所のようになってる領主の屋敷入り口に。村長バルメデ、娘エリシア他、数名のステータス確認スキル『看破』『鑑定』重複させるダブルスキル発動によって、見ることが出来るようになるホルダーが、職業相談所を作って、窓口の責任者を引き受けていた。「村長、バーザル伯爵様の護衛任務終了致しました」

「これはこれはバーザル伯爵様、遠いところご足労ありがとうございました。オリーア砦に運ぶ食料は用意してあるから、一休みしたら運んでくれ」

「わかった村長。伯爵様これにて失礼いたします」

「ああ護衛御苦労だった」


にこやかに一礼するオリーア他、辺境部隊の面々はきびきびとした足取りで屋敷を後にする。村長の娘と紹介されたハーフエルフの少女エリシアの案内で、領主の執務室に入ると。使用人のコディーがお茶を出してくれた。領主ティムが現れるまで、二人からもそれとなく領主のこと聞いていた。最初にティムを村近くの森で見つけたのが、ハーフエルフのエリシアであることを聞いて、ティムニートが他国にいた貴族だったのではないか、そんな懸念を抱いた。

「父によりますとアルメリア辺境・ホディーアン村、領主ティムニートとありましたので」

前降りして、村長バルメデのスキルについて教えていた。

「なるほど……」

エリシアはあくまでもと、自分の考えを語っていた。ティムニートが未来のホディーアン村で、領主だったのではないかと教えてくれたのだ。この瞬間肌が粟立つような恐怖を味わう。

(それが本当ならば……、魔族大進行も強ち冗談とは言えなくなったことになった)

エリシアはハーフエルフである。父のバルメデが優秀な魔法使いだったのは知っていた。転移の魔法か何らかの事故で誤差動して。過去に送り込まれたのではないかと。過去には違う世界から迷い込んだ事例があった。この場合ティムニートが事故にあったと過程すれば、多少なり未来を知っててもおかしな話ではない。恐らくこの世界の自分は、未来に飛ばされてしまうが、今のバーザルやリズベル姫様にとっては朗報である。もしも味方に引き入れることが出来たら……。これ程心強い軍師はいないのだ。

最後に記憶の一部を失ってること、使用人コディーを快く雇ってくれた話など。ちょっとした笑い話を交え。ようやく問題の主。ティムニートがやってきたのは、コディーの失敗料理に微妙な苦笑を浮かべた後だった。



見た目凡庸。外で見れば気が付かない風貌、若い少年にしか見えないが、彼が有能なことは、バーザルも知っていた。

「お待たせ致しましたバーザル伯爵様、森の採石場に厄介なモンスターが出まして、討伐に出てました」

申し訳なさそうに、頭を下げたことから詳しい話を聞くと。採石場近くにホーネットスピアと呼ばれる。蜂のモンスター、体長60センチ、妖精と変わらない大きさだが、麻痺毒を持った毒針攻撃、巣を作ると100以上の群れで、大蜥蜴サーペトドラゴンすら襲い倒すことがある。巣を作ったと言う。

「それは大変だったね」

「はい、見習い狩人の訓練を兼ねたので、かなり大変でしたが、無事駆除成功しましたよ」朗らかに告げていた。

「そうだエリシアさん。大量に蜂蜜が取れたから。村人に少しずつ振る舞ってくれるかい」

「はい承知しました」

「ここはいいからコディーも手伝ってあけて」

「はい領主様」

甘いものが食べれるかもと百面相していたコディーは、パッと顔を輝かせ二つ返事でエリシアの後を追った。

「優しいのだなティム。そう呼んでも?」

「はい構いません、貴方のことは、良く知ってます。どのような目的で会いに来たのかも」

にっこり人好きする笑みを浮かべていたが。凍りついたバーザルは確信する。彼がエリシアの言う通り未来から来た可能性を察した。

「君に頼みがあってね……」

軋轢があるので確約は出来ないが、辺境子爵、実質爵位は変わらないが、西の村含めた二つの砦、町の統治を認めることリズベル女王の名の元に命じられた。

「慎んでお受けいたしましょう。つきましては……」

西の村を城塞都市にする許可を求めた。「正式な書類とすり合わせが必要になるが……」

(噂による魔族の大進行を防ぎ、しばし防衛を考えるならば)

「……いたしかあるまい」

「付きましては、ホディーアン村を村長バルメデに任せたいので、御了承下さい」「うむ……あいわかった。バルメデを地方領主に任じよう」

伯爵の権限によって、貴族でなくとも領主に命ずることがあった。伯爵は地方と貴族を纏める役職を兼ねていて、地方采配と呼ばれる権限を持っていた。伯爵が村長等に領主に任じられて力を付けた者を、地方豪族と呼ばれるのがこれに当たる。多くは一代限りの領主だが、広大な辺境のしかも村を任せる人材となれば、不足は、どの国でも深刻である。

「これからは辺境騎士団長を名乗るがよい。地方子爵ティムニートよ」

「慎んでお受け致します」

恭しく一礼したティムニートに。元バーザル伯爵は、不可思議な思いを抱いた。まるでまだ羽化して間もない王族と対面したような……、



色々試すつもりで、バーザルは、城塞都市建設にいくら掛かり、また費用をいくら国に負担させるつもりか、またどのような運営をして、辺境騎士団の役割ほか、訪ねてみた、

「基本。辺境騎士団は。今ある辺境部隊とは別と考えるので。あくまでも辺境騎士団の一部隊と扱いに止めます」

「ほう、それはまた何故だ?」

「はい今はまだ。辺境部隊は、地域の流通を護衛する要として、代わりに辺境騎士団は戦争を生業にする軍隊と定めるべきだからです」

少し意味が理解出来ず戸惑っていると。「伯爵様は軍役についてたので、優秀な兵と、戦士は別物と知っておられますよね?」逆に問いされて、何となく言いたいことが理解出来てきた。地方とはいえ軍属となれば、色々と制約を受けてしまう、だが辺境部隊、領主が雇う私兵の一部だとなれば、意味は変わってくる。

「優秀なみんなを軍属させるよりも私兵とさせたほうが、都合が良いこともありましょう」

ましてや軍属の兵隊になれば、領主の私兵上がりと謗られ。地方騎士団と対立しかねないのだから。扱いが難しい。だが最初から私兵と軍属を切り分ければ、衝突は少なくなる。

「予定では師団を3つ作って、二つの砦、城塞都市を守る任に付けさせます。これが辺境騎士団正確には、辺境守備隊と呼んで下されば幸いです」実際に伯爵家には、辺境騎士団と傭兵部隊を抱えているので、中には村民上がりの騎士とかいる。表面上は平気だが、内部ではいざこざが起こっていた。ならば先に起こらない方にしとけばいいのだが……、普通の貴族はそこまで考えが及ばず。弊害が起きてからあたふたするものだ。

「とりあえず辺境守備兵とは、民衆から募集したいと思います、正式に城塞都市建設が決まれば、仕事を求めて、多くの働き手、また商人なども訪れましょう、ですから先にホディーアン砦村で、基礎訓練を重ねさせる予定です。これらを纏める人物としてアルキメディス殿を。補佐としてバルメデ領主に任ます」なんだろうか……、この敗北感は、まるで騎士団の運営はこうする物と諭され。教えられてる気持ちになっていた。

「姫様……、陛下と相談して決めるが、ティムニートよ。お前の申し出は委細承知されるだろうな」「ラギナード公爵、ラルバルト侯爵様には気をつけておりますのでご心配なさらぬように」そこまで知っていたか……、

(いずれ姫様に。ティムニートを目通り。賜せることも考えてやらねばならぬな)

こうしてバーザルとティムニートは、辺境王となるため。最初の難関を突破した。だが本人は。過去の歴史の中に居ることを。まだ知らない。



バーザル伯爵が、自治領に戻って数日後……、ドルマリア連邦女王リズベル署名にて、ティムニートに子爵位を与え。騎士団長職地方アルメルを治める。要職の守備隊長に任じた。

与力としてホディーアン村長を領主に。補佐アキメディスとした。

「ティム様、領主任命拝命致します」

「バルメデさん。これかも宜しくお願いしますね」

「はい、お任せを」「ソーニア、君をバルメデ領主付きホディーアン砦村守備隊長に任命する」

黒髪、寡黙な青年は切れ長の眼を見開き、

「はっ!拝命受けました」

「これから君には新兵を育てる重要な役目を担ってもらう、そのつもりで」

「はい!」

泣きそうな顔をしたが、きっぱりとした良い返事をしていた。

「タナップには東砦守備隊長として、同じく新兵を鍛え上げるように」

「おっお任せ下さい子爵様」

上ずった口調で力強く頷いた。本当は辺境部隊を軍属にしたくなかったが、三人は軍属に入ること。ティムの部下になるほうを選んだ。後々問題は起きようが、三人に地方騎士に任命して、重要な隊長職に着けた。

「オリーア、城塞都市アルメル守備隊長に任じる」

すっかり幼さが抜けて、落ちていた。精悍な顔立ち、若いながらこの一年あまりで、地方騎士団長職を任せれる逸材に育っていた。よって三団を指揮する守備大隊長職に任じた。

「ハッ、有りがたく拝命致します」

「バルメデさん、申し訳ない、エリシアさんを秘書として雇うことになって……」

少しだけ寂しそうな顔はしたが、首を振っていた。表情は柔らかく。穏やかな顔をして、娘の髪を撫でていた。

「ティム様なら。安心してお預けできます。宜しくお願いします」

「はい、お任せを」「ティム様、コディーもコディーも!」自己主張する使用人はどうかと思ったが、

「そうだね、宜しくコディー」

「はい、お任せ下さい!」

元気一杯だが、料理の失敗は直ってない。そろそろまともな料理が作れる使用人を雇いたいところだ。

「後は、ドンペナさんに挨拶して、リドラム神官長、雑貨屋にも顔をださなきゃ、悪いけどこれで失礼するね」

「はい、ティム様お気をつけて向かわれませ」

守秘隊長の三人には、城塞都市が完成するまで、今までと同じく。商人の護衛の仕事と訓練が待っていた。今頃西の村、改名してレディナスの町に。職を求めて連日人が集まっていた。アルキメディス補佐官と見習い秘書が対応を行っているはずだ。




カンカンカン規則正しく叩かれる金属。最初は1人だったが、今や6人の弟子を育てる工房主ドンペナは、相も変わらず気難しい顔をしていた。今や辺境守備隊の初期装備製作は、急ぎの仕事となっていた。

「あっティムさんいらっしゃい」

ドンペナの弟子で、僅か一年未満で一人前の鍛冶職人と認められた天才少女エレオルは、そばかすの残った顔を綻ばせた。

「待たせたね」

彼女は若いが、ドンペナに認められた職人である。まだまだ未熟なところはあるが、後は自分で研鑽を積んでく時期なので、レディナス工房を開き、守備隊の仕事をさせながら腕を磨いてくことになっていた。だからティムが最後の挨拶に尋ねたが、ドンペナはドンペナだった。最後にチラリ此方を見て、小さく頷いた。

「行こうかエレオル」

「はい!、師匠行ってきます」

わざと大声で声を掛けると、不機嫌そうにティムの前を歩いて行った。



雑貨屋に顔を出すと。店主コルマが、

「コルマ!、たまに顔出すからきっちりやらないと……」

眼鏡をスチャリ直しながらきっちり言われて、コクコク素直に頷いていた。

「サマル!」

「はっはい姉さん」背筋ぴーんとした少女サマル、色々言いたいことはあるが、

「あんまり恋愛にうつつ抜かすんじゃないよ」

チラリコルマを睨み付けていた。冷や汗を流す若い恋人たちに。フンと鼻を鳴らしてから、ティム、エレオル、コディー、エリシアを一瞥して。

「さっさと行くよ」相変わらずである。ラディアは村長バルメデの弟子で、魔法も使えるが、どちらかと言えば薬を作る錬金術、薬剤師に向いていた。ついでで始めた雑貨屋が、何故か大きな商いをするようになってしまい、あれよあれよと言う間に。商会長をやらされていたが、お気に入りの領主ティムに強く頼まれてしまい、仕方な~く。城塞都市レディナスの建築に伴い。ギルド長に就任することになった。本当は不本意だ、

(でも……)

微妙に嬉しいかも。複雑な乙女心に戸惑いつつも、商人気質のギルド長ラディアだった。最後にアルマ教会を訪れたティム。既に待っていた幼い風貌の少女神官プラナは、相変わらず緊張しいな顔をしていた。「リドラム、神官プラナをお預かりします」

出会った頃痩せた青年だったリドラムは、すっかり精悍な風貌の神官戦士、鍛え上げられた身体をしていた。アルマ神殿から地方の神官長を拝命していて、近日中に新しい見習いが、ホディアン砦村を訪れることになっていた。

「シスタークレア。新しい教会が出来た頃。レディナスでお会いしましょう」

おっとりした風貌、小柄なシスターは、ある意味精神安定剤のような人で、ティムが時々子供と混じ遊んでいたので、わりと話す機会があった女性の1人だ。

「はいティムさん、でも私が行くまで、あんまりおいたしちゃいけませんよ」まるで姉さんのような口調である。これには苦笑するしかない。

「ティム様、色々とお世話になりました。プラナのこと宜しくお願いします」

「いえ此方こそお世話になりました。バルメデのこと宜しくお願いしますね」

虚を突かれたようだが、にっこり微笑み。力強く握手を交わした。



領主をただ見送るにしては、異例の数。多くの村人が見守るなか、馬車はゆっくり走り始める。



━━この日のことを。王の門出と語り継がれる一場面となるが。そう言わしめる理由があった。数多の奇跡を起こすティムニートこと、アルメル辺境王は、最初の一歩を確実に歩み始めていた。



ティムニートが、アルメルの町に居を移してからは。内政を任せる側近アルキメディス補佐官、バルメデ、ギルド長ラディアにとって、驚きの連続を味わい。時々見せる非凡な判断である。先を読み的確な行動をしていく様を間近で見て、ますます信頼を寄せていた。



実際はサーガ、伝承、書籍の知識を駆使して、自治領を発展させていたのだが、外から見ればあまりにも見事な政治的手腕に。近隣の貴族、領主は泡を食ったものだ。周りから見れば恐ろしい勢いで。当事者にとってはめぐるましい日々の中。僅か半年で。城塞都市レディナスを完成させていた。その間にも商業・工業ギルドを領事館の入り口に窓口を開き、仕事の斡旋を行うようになったため。仕事はあるが人はいない。仕事はないのに人がいっぱい。いわゆるニアミスが無くしたので。全体的な仕事の効率が上がった結果である。

昼間から夜まで、ほぼ1日中多くの人が訪ねてくるのが、冒険者と呼ばれる人達で、彼等の多くは元兵士、傭兵である。そうした人向けにも仕事の斡旋を始めた結果。買い取り窓口まで営むようになってしまい、領主邸宅に詰める職員の多くは残業残業の毎日となっていた。



ティムニート子爵付き秘書エリシアは、5人の秘書見習いと。15人いる斡旋窓口を束ねる立場にあった。

「冒険者支援グループ(ギルド)作るのはかなり大変そうね。ピナム、タリアは引き続き。密偵を使ってこの裏をとってくれるかしら。どうも嫌な予感がするし。場合によれば隊長の誰か、子爵様にクレイブドラコン討伐をお願いしなくてはならないわね」

多忙な子爵様にお願いするのは気が引ける。しかし今動員出来る守備兵や冒険者では実力不足であった。

「おっみんなご苦労様」

お土産だと。焼き菓子を持って来てくれた。さすがに疲れがたまっていたので、お茶にすることにした。

「ああ~成る程ね。だったらちょうどよかったたかも」

にこやかに笑って、守備兵第四師団400が、さっき着いたこと。弓兵であり隊長はアスマンだと知らせると。

「あっ確かに!。クレイブドラゴンなら、弓兵にピッタリです!」

名前こそドラゴンと付くが、飛行する蜥蜴である。体長1m足らずの大きさ。集団で現れる。歩行を苦手としてる点からも。悪い提案ではなかったのだ。

「今なら荷物卸してないから、恨まれるの覚悟で言ってくるから。詳しい書類を頼む」

「直ちに」

ピナム、タリアがお菓子を口に入れて、

「すぐに」

パタパタ走って行った。




数日後、見事守備第四師団は、クレイブドラゴンの群れを討伐を果たし。しばらくクレイブ肉が安く食べられると。冒険者が喜んでいた。この頃になると辺境守備隊大隊長オリーア、

第1隊長タナップ

第2隊長ソーニアの武名・勇名を馳せていて、近隣領主、貴族から、困った内容の仕事を頼まれる事が増えていた。



実はもう1つ師団がある。予備と新兵ばかりの第3隊である。この師団にはまだ隊長が決まっていなかった。そんな時に第4隊長アスマンの勇名を聞いて、第3隊のメンバーは動揺していた。隊士クルム、ホーテン、ライム、ファナ、サーディの五人は、第3予備師団所属である。特筆する才ある物はいないが、わりと何でもこなせる器用な隊士ばかり集められていた。何故自分たちに隊長がいないのか。日々考え込んでしまう五人に、第4隊長アスマンの参入によっていよいよ焦りだしていた。



城塞都市レディナスから東の砦を越えて、徒歩で2日、馬車なら半日程で。巨人の村はあった。家屋は僅か70あまり。家族で住む家もあるにはあるが、総勢100にも満たない小さな村に。沢山の旅人が訪れるようになったのは、人間の領主ティムニートと出会ってからだった。最初は二つの砦、改築と築城の依頼で、ノーブル巨人族としては喜びたいところだった。しかし今まで人間貴族、領主の所業に打ちのめされていた。だからカムイではなく。若い土木建築家レオを交渉役に送り出した。運が良ければ賃金の半分、悪ければタダ働きさせられてしまう、疑念を抱いていたからだ。

翌日、レオは驚くべき知らせをもたらせた。なんとホディーアン村の砦改築賃金は、全額前払い、東の砦築城は半分支払いされたと聞いたのだ。

「それは真か?」「はい長、西の村の領主ともお会いしましたが、人間にしては実直な方でした。でも……ホディーアン村の領主様は、なんだろう今まで出会った事がない素晴らしい人だったんです」

とても信じられないことをレオは呟いた。まあ金さえ払ってくれたら仕事はする。それがノーブル巨人族の誇りであった。

無事砦を完成させ。残りの賃金が払われた。後日人間の女商人が訪ねて来て、ある提案をしてきた。それが巨人族の職人を雇い。木こりの伐採技術、石材切り出し技術を学びたいとのこと。契約金として纏まった金額を支払いすると言われて迷いはあったが、一族の者に話したところ。工事に携わった皆が手を上げていた。

「まだ人間は信用出来ぬ。よってレオだけをホディーアン村に住まわせる。それで良ければ行け、どうするレオ」

ここまで厳しい対応ならば、諦めるとカムイは思った。

「はい、おら頑張ります」

あっさり了承していた。さすがにおかしいと思って、カムイが同行することにした。長であるカムイは戦士として、アルマ歴以前では魔族、人間と戦った戦歴を持っていた。領主の中に魔法使いがいるのは知っていた。もしや操られているのではないか、懸念を抱いた。予想と違ったのが、人間が巨人を恐れないこと。時折顔見知りの人間と話すレオ。そして見覚えのある女商人相手に、興味深い話をしていた若い男こそ。ホディーアン村の領主であった。若き領主は、カムイのこと知っていた。キラキラした憧憬の眼差しにさらされ。居心地の悪い思いはしたが、ティムニートに興味を抱いた。


再び依頼された大仕事。城塞都市の建設である。ノーブル巨人族の長として、陣頭指揮を取りながら、人間の様子を見ていた。興味深いのが、沢山の人間が集まっていて、自分たちと仕事をしていたことだ。何故予備師団が投入されたのか、この日まで分からなかった。久しぶりに領主のティムニートが現れて、とんでもないことを言いやがった。

「ねえカムイさん頼みがあるんだけど」 「どうさした領主様」

時折フラリと現れて、巨人族の歴史を聞きに来ていた。別段隠す話でもないので、聞かれるまま話してやった。変わった奴だと思って、相手をしてやっていた。今日もどんな話を聞かせてやろうか。内心ウキウキしながら、ティムニートの言葉を待っていた。

「カムイさん、貴方の力を貸してくれませんか……、もう一度戦士として、ぼくと一緒に戦って欲しい」

ポロリ……巨大なハンマーを落としていた。

「危ないだろ」

慌てた人間の職人達の声に。

「すっ済まねえ」

慌てて謝った。再び領主のティムニートを見たが、真剣な眼差しをしていた。思わずゴクリ唾を飲んでいた。本気なようだ……。



この時カムイは言い知れぬ気持ちに。身を震わせていた。かーっと全身に血が巡り。まるで全身が炎で焼かれてるような衝撃で、心が震えていたのだ。

「おっ俺に部下となれというがか……」

「そうだね。ぼくはそれを強要することになる」

何を馬鹿正直なこと言ってるんだよ。心の中で突っ込んでいた。

「ただぼくなら貴方に一つだけ約束が出来る事があるんだ」 「それはなんだべか」

真っ直ぐ見つめ会うカムイとティムニート、いつの間にか領主と言うよりも対等な立場の者に話しかける口調になっていた。

「伝説の戦士、ぼくなら貴方を世界中に知られる戦士として、貴方を働かせて見せるよ」ズシンと五臓六腑に染み込むような言葉に。ストンと府に落ちた気がした。

「本当に……」

「必ず」

「そうか……、そうか……」

ずっと待っていた気がした。ノーブル巨人族でありながら、戦いに身を落とす喜びを知ってしまった今……。一族を守るため一度は諦めた野望に、ティムニートは火を付けていた。面白いと思った。一人では出来なかった高みに。人間のそれも少年が連れて行くと囁き、自分はそれを可能だと信じてしまった。だったら答えは決まっていた。

「良かろう、死ぬ日まで宜しくな主よ」

「ダメだ。死んだ後も武名を伝えよ。それがお前の役目だ」 「!?……承知した」歓喜に震えながら。カムイは仕事を全うする。



後年この日。アルメルは最強の戦士を手にしたと言われていた。三戸の礼を持って、迎えたと言われた。



その日は突然やってきた。今まで予備兵力扱いの第3師団に。隊長が任命されたと聞いて、ずっと城塞都市の建設に携わっていた。五人の表情が明るくなっていた。だから最後の仕事も頑張ってこなし。いよいよ隊長と御対面だとわくわくしていたら。何やらでっかい馬車が第3師団の前に横付けされていた、

「お待たせ、特注の武器五種出来上がったよ隊長さん」

鍛冶職人のエレオルが、片付けをしていた巨人族の1人に声を掛けてるではないか、ポカーンとしていた第3師団の兵。「ご苦労だったエレオル。ティム様に礼を述べてくれ」

「はいは~い了解。じゃあんた達。隊長さんの武器しっかり運ぶんだよ」

もはや意味が分からなかった。

「なっなあ~これが武器?」

五人の中で、比較的すぐに我に返ったクルムが、馬車の幌を開けて唖然と中身を見ていた。




人間の腕よりも太い鋼鉄製の支柱。その先に人間の頭より二回り大きな鉄球が、片側だけ付けられた武器モール。またはモーニングスターと呼ばれる凶悪な武器。どう見ても人間には扱えない。隣には斬馬刀と呼ばれる両刃の剣で、切れ味はなく。重さで馬の背骨すら断ち切るのだが。大きさが桁違いで、重装騎兵の装備である。その隣にあるのが金棒、または六角と呼ばれる武器で、茨のようないがいがが付いていて、鎧すら貫通して肋骨、大腿骨をへし折る凶悪な武器だ。


━━そして、カムイが伝説の戦士と名を馳せた。武器と出会った。破城槌はじょうつち普通は、丸太に鋼鉄を巻き付けた物を。100名程の死兵に滑車を押させて、特攻させる兵器だが、カムイの怪力に合わせて、肩に担いで運べる作りに変えられていた。またカムイならば投げられるのだから敵にとって最悪の兵器であった。最後の武器が無数の鉄球である。箱に入れられて置いてあった。

「今日から正式に第3師団隊長になったカムイだ。お前達の役割は、俺に武器を届けること。特殊工作部隊、それがお前達の役割だ」

衝撃の事実を語っていた。それを聞いた五人と兵達。しかしデモンストレーションが行われてしまい。文句の言葉もなく納得していた。

「確かに武器の輸送とか、工作は必要だよな……」

巨大な岩山が、僅か数分で破壊されたのを見て、妙な連帯感を覚えた五人だった。何故守備隊に工作部隊を作って、ティムニートは必要としたか、間もなく辺境貴族、それどころか中央と呼ばれる有力貴族は知ることになった。



時間は少し戻り、ティムニートが、ホディーアン砦村が完成した頃。魔族が支配する地下世界、闇の大陸と呼ばれてる大陸中央にある闇に包まれた。魔気漂う、変異の地。諸説あるが、人間に猛毒である魔気に、曝され。耐えられた生き物は、細胞から変化させられてしまうと言うもの……。自然界にも変化は存在する。それは何百年、何千年と掛けて緩やかに行う進化と呼ばれる物。しかし生き物が大量に、短時間に魔気を接種することで、突然変異を起こした物を魔物といい。その中でも人語を発し。理解出来る存在を魔族と呼んでいた。しかし魔族は魔物の中でも希少で少なく。全体の1%に満たない。しかし魔物とは比べることが出来ない程の魔力、知力、力を持っていた。本能的に魔族に敵わないと分かっていた魔物は、魔族に従う事が多く。主従の関係が成り立っていた。人間で言う、王族と位置付けされる種族もいた。そうした一部の魔族は大きなところで、国を形成、次に市町村、最下層の群れであろうか、群れを作って、わりと多いのが種族ごとのコロニーである。運良く知恵が回る長ならば集落を、人語を理解出来るコミュニティは市町村を作っていて、わりと平和に暮らす世界を。地下世界。または魔界と呼ばれていた。地上世界に比べて、魔界は魔物の数が膨大である。また非常に強い個体もいて、中には魔族よりも強い伝説的な魔物なんてのもいるが、基本分布領域を出ることはない。



力ある魔族が一つ。蒼髪碧眼。整った風貌が多い。長耳種族と呼ばれる中でも珍しく。男は尊大な風貌、粗野な雰囲気をまとっていた。エルメダスは人間世界に大規模進行を決めた8幹部の1人である。長耳族の幹部は他にもいるが、軍勢として最大グループに分類されていた。主な支配する魔物だが、二足歩行して武器を使う下級亜人。ゴブリン、ホブゴブリン種、オーガ種、トロール種、一部巨人種を支配していた。エルメダスはグラドル公国進軍を朋友リユルル、パルメニア王国をメデリスに任せていた。よって軍備増強を見てきた帰りであった。

「使えぬコボルトどもめ……」猛虎族から借りてきた職人故。手荒な真似はしなかったが、武器の納期の遅れに辟易していた。見せしめに何匹か血祭りに上げたくなったが、どうにか怒りを飲み込んだ。

魔界で三候と呼ばれる国があった。長耳族、猛虎族、闇の舞闘である。ようやく三候のすり合わせが済んで、戦の準備が始まった。中でも闇の舞闘が参加してくれたのは大きく。人間世界で呼ばれる化学者と呼ばれる人種に当たり、正直付き合うには辟易するが、強力な兵器を有していた。支配領域からあれを運んでくるとなると一年以上時間を要するため。そこから地上に上げるにも莫大な魔力と一年以上の時間を必要とした。その名も移動巨大城塞キガントに。兵はあまり連れて行けぬ。それを補うためコボルトに作らせてる魔人形ガーゴイル、石ゴーレムこそ、兵の変わりであった。どうにか人間の支配領域に、出城は必要だ。五大国の中でも内乱の疑いがあるドルマリア連邦の辺境ならば、容易に魔物の軍勢で支配出来ると考えていた。移動巨大城塞が大穴を抜けて、辺境に拠点を置くとして、当然人間が黙って見てる筈はない。しかしそこは脆弱な人間である。いきなり大国のお膝元を狙うのならば、さほど問題なく。拠点が手に入る。そこは闇の舞闘側の二人、猛虎族メディアル将軍も同意見であった。

せめて10万は必要である。いくらガーゴイル、石ゴーレムといえど。準備するだけで一年は見なくてはならないのが辛いところであった、

「闇の舞闘がもっと魔法生物を出してくれたら……」

エルメダスは焦っていた。耳長族の右翼、タカ派に所属していた、仮にも大規模進行の幹部に任じられる程度には、魔族の中でも高い地位にある。エルメダースは耳長族の王子の1人で、父と約束していた二年の期限内に。結果を出したく。それが純然たる焦りを産み出していた。

「戻ったかエルメダス殿よ」

猛虎族の将軍メディアルである。猛虎族は主に三人の王によって統治されていて、メディアルは金虎王アディマスの右腕と呼ばれる。獣人の中でも知勇備えた武人である。俗に獣人族と呼ばれる種族は、ラインスカロープと呼ばれていて、肉体の一部または変身能力を持った魔族である。多くは身体能力の向上、魔力による破壊力アップ、脅威的な回復力を持つ個体は、好戦的な種族が多い。

「ああ、リュルル、メデリスの様子と将軍の配下、ギルベス、マークア殿の状況を見てきた」

「そうか、ご足労感謝いたす」

実直で、分をわきまえたメディアル将軍とは友人関係を築きつつあった。よって粗暴であるがエルメダスにとって、信頼出来る同僚の願いを叶える分なら。さほど労とは思っていない。

「気にするな。ご子息ギルベス殿も遅々と進まぬ進軍に焦れていたが、それは地上に出れば晴れるものだ」「あれも初陣。将として優れた才はあるがまだ若い。迷惑を掛ける」

「その辺り、部下達は大変そうだが、気にすることではないぞ」

若く血気盛んなギルベスを。エルメダスは気に入っていた。

「後もうしばらくの我慢なのだ。我とて焦れておるからな」 今すぐにでも人間を八つ裂きにして、70年前の敗戦をした兄バルローザ。心情としては敵を取りたいと考えていた。魔族とはいえ兄弟仲は良く。兄は魔族の中でも尊敬出来た人物だ。

「待っていろバルローザ兄上!、俺が汚名を注いでやる」

二人が見下ろすのは、地底世界。巨大要塞の最上階である。円錐形の巨大要塞は、横幅350m、縦700mもある巨大建物であるが、地底世界を歩くよりも遅いスピードで、進んでいた。影の舞闘が誇る巨大要塞には、飛行機能が取り付けられていて、重量のためこれ以上のスピードを出すと瓦解してしまうため。仕方ないのだが……、そもそも移動巨大要塞に拘るのには、先ほど視察していた理由が重なる。実際この巨大要塞には、5500の魔物が魔力を吸われるのに使われていた。魔族2000は巨大要塞の保全を行っていた。幹部である四人は、自国にて大規模進行の準備をしていた。内部に各国に向かえる転移装置があって、地上に着いたら。大規模進行軍を呼び出すことになっていた。拠点にするドルマリア連邦の辺境から四大国に進軍。拠点を守るため様々な防衛機能搭載の要塞は、脆弱な人間の軍勢など問題にならない力を持っていた。もしも大群が来ようと大砲がある。魔力波動砲ギガレイブを見舞えば蹴散らせる。ギルベス同様エルメダスも血気に逸る。

動き始めた魔族の大規模進行、世界を震撼させた魔族の侵略が間もなく始まろうとしていた……。ただ1人未来を知る少年領主ティムニートは、未だに過去にいるとは思ってもいないのだが……、また同じ物語で背徳の魔王でした。

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