教訓
ジオナール視点です
甘かった。
その一言に尽きる。
我々はあの聖女様を、ハルナ・ヒノ様を完全に見誤っていた。
そもそもの間違いは、ハルナ・ヒノ様を、私やテオに言い寄るあの貴族の令嬢と同じ人種だと思っていた事だろう。
あの令嬢は、甘い顔を見せてさえいれば、他の令嬢を見下すだけで危害を加えるような事はなかったから、ハルナ・ヒノ様もそうしてさえいれば大丈夫だろうと安易に考えてしまった。
まさか、かの令嬢よりも厄介な相手だとは、露程も考えなかった事が悔やまれる。
彼女からナツメ・ハヅキ様を完全に守るには、我々四人だけでは手が足りない。
隣国へたどり着きさえすれば隣国の猛者が更なる仲間となって旅路に加わる予定だが、それまでにまだ数日はかかる。
その間にまたハルナ・ヒノ様が我々の隙をついてナツメ・ハヅキ様の排除に動けば、今度こそどうなるかわからないだろう。
……仕方がない。
「レオ。隣国まで、ナツメ・ハヅキ様とは別行動を取る。お前はナツメ・ハヅキ様の護衛につけ。……一人で担って貰う事になるが、確実に守り抜け。……できるな?」
私がそう言ってレオを見据えれば、レオはまっすぐに見つめ返し、直ぐ様頷いた。
そして、『勿論です!』と力強い返答が返ってくる。
これならば、大丈夫だろう。
ハルナ・ヒノ様とて、別行動をしている相手には、さすがに危害は加えられないはず。
私達も、今後は彼女を油断なく見張る。
誰か人を使う事すらさせはしない。
ああ、ハルナ・ヒノ様は勿論、ナツメ・ハヅキ様の能力についても、隣国で合流して次第、改めて調べなくてはな。
まずは最寄りの街に着き次第、ハルナ・ヒノ様の能力について早急に調べさせて貰うが。
……それにしても、歴代の聖女様は、浄化以外の能力は使えなかったと記録にあるのだが……まさかそれが覆される事になろうとはな。
何に対しても、思い込みは危険ということか……随分と心に刺さる授業料を払わされた気分だ。
まもなく、夜が明ける。
改めて気を引き締め、旅路に臨まなければ。
これ以上の失態は、決して犯しはしない。