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【第二回・文章×絵企画】の作品  作者: りちうむいおん
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ももちゃん様の素敵なイラストのお話

ももちゃん様の素敵なイラスト(http://9532.mitemin.net/i164780/)のイメージで書いております。

挿絵(By みてみん)





 その日は満月だった。

 僕は今日こそは果たしたい約束がというか決意したというか、こう……こう……。

 未だに緊張するので、あまり考えないようにしていた。


 今日までの準備は、全てこの日のためにあり、それ以上でもそれ以下でもない。

 平常心平常心と思いながら僕は、とある家の玄関の扉をたたく。

 木造の家で僕の家の近くにある家で、昔からよく僕はここに出入りをしていた。


 幼い頃は男女混ざって遊ぶことが多かったが、多くの子供達がそうであるように、成長するにつれて男は男同士、女は女同士に分かれてしまう。

 それでも時々彼女達との交流があったのは良かったと思う。

 そして今日は他の幼馴染達には事情を話して協力してもらい、彼女と二人っきりになれるように段取りをしてもらった。


 そういえば女友達がやけににやにやしていた気がするが、何でだろうと僕は思ったが特に問題がなかったので放っておいた。

 あとはそう、僕が頑張るだけなのだ。

 なので勇気を振りしぼりドアノックを数回叩くと、


「カミラ、いるか?」

「エイベル! ちょ、待って、来るのが早すぎるよぅ」

「? でももう約束の時間だぞ?」

「え、ええ! だって時計……止まってるぅうううう」


 悲鳴を上げる彼女の声を聞きながら俺は、よくある事だと深々と嘆息して、


「大体の状況は分かったから、落ち着け。僕はここで待ってるから」

「ふわぁああ、う、うう。まだお出かけ用の服も着替えてないよ」

「別に服が変わろうが、カミラはカミラだろう?」


 何を言っているんだと僕が思っているとそこで、短い沈黙があった後、恨めしそうな声で、


「エーイーベールーゥゥゥ、覚えていなさいよ……」

「何で怒るんだよ」


 意味が分からないと僕は思う。

 そんな格好をしていても、カミラはカミラで、普通にこう、何時だって凄く可愛いと思うのだ。

 それを言って怒られるのは不条理だと僕は思う。

 

 そこでどたんと大きな音がして、


「ふわわわ、転びかけた」

「だから焦らなくていいよ。僕は逃げないし」

「……何よ。あさってには都市に行っちゃうくせに」

「それは大学が都市にしかないんだから仕方がないだろう」

「ふん、昔からエイベルは勉強だけはできたからね」

「それを言うなら、カミラはお菓子と料理以外はさっぱりだったな」

「エイベルの意地悪!」


 そう叫んで勢いよく、カミラがドアを開けた。

 それを予想していた僕は、すでにそのドアが開いてもああたらない場所に避難していたが。

 目の前には怒った様なカミラが耳をぴくぴくさせて、ふわふわの茶色の尻尾を大きく揺らしている。


 相変わらず想像を絶する可愛さである。

 彼女、カミラはこの国でそこそこいる獣人(獣耳人間)の一人で、狼の獣人である。

 ちなみに狼の獣人は満月の夜になると、治癒能力が上がるらしい。


 なので風邪になっても満月の夜になると治るのだそうだ。

 羨ましい話しである。

 さて、それはいいとしてそんなカミラの紫色の瞳が涙で潤んでいるのを見ながら、


「悪かった。ほら、行こう」


 そう言って手を差し出すと、カミラはかあっと顔を赤くさせてからおずおずと手を伸ばしてくる。

 僕の手とカミラの手が重なる。

 ふとこのままずっと繋いでいられたらなと思ってしまうが、今日にはやるべき事があるので気を引き締めねばと僕は思う。


 そう、今日この日のために僕はここしばらく一年以上頑張ってきたのだから。と、


「そういえば他の皆は?」

「あー、先に行っていてくれって」

「そうなんだ。うんそうだね。じゃあ行こう」


 特に断られなかったので、僕は良かったと心の中で安堵したのだった。








 森の一角にある白い花の花畑。

 月の光が降り注ぐ中、カミラが走りだす。


「わぁああ、綺麗!」

「満月の夜に咲く花、“満月花”……それに今の時期見ごろの、“白桜草”も見ごろで綺麗だな」

「うん、この花大好きなんだ~」


 楽しそうに花畑を走り回るカミラ。

 茶色い髪が月の光の中であわく光を帯びている。

 こんな花畑の花よりも髪らの方がずっと綺麗だと僕は思うが、そんな事を言える勇気は僕にはない。


 もっとすらすらカミラの魅力を伝えられたならもっと前に違う関係になれたのではとふと思ってしまう。

 思いながらも出来なかった過去を振り返っても仕方がないので、僕はこれからに目を向ける。

 そこで風が吹く。


 白い花弁がふわりと宙に舞い、彼女の姿と相まって酷く幻想的だ。

 けれどそのはかなさに僕は思わず駆け出して彼女を抱きしめてしまう。


「ちょ、エイベル、どうしたの?」


 驚いた様なカミラの声を聞きながら、一瞬だけ正気に戻った僕は即座に離れるべきだと思ったけれど、でも、もう彼女を放したくないという衝動につき動かれてしまい、熱に浮かされたように僕はカミラに、


「僕は、カミラが好きだ。この村に戻ってきたら、結婚して欲しい」

「! エ、エイベル、突然何を……」

「こ、告白するのだって勇気がいるんだからな! だから答えてくれ!」


 とうとう僕は言ってしまったと思った。

 前からずっと思っていてすでに準備をして二月ほど悶々と考えて考え抜いて今日この日ようやく告げる事の出来た言葉だ。

 これでこれからもお友達でいてねと言われたらどうしよう。

 そんな不安を僕が抱えていると、


「うん、いいよ」

「……本当に? というか軽い様な気がする」

「いや、うん、何て言うんだろうね……その、ね、実は今日、私、エイベルに告白する予定だったんだ」

「……そう、なのか?」

「うん、今日来るはずの女友達には事情を全部話して、協力してもらって……二人きりになれるようにしたんだ」

「カミラなのになかなか考えるな」

「むかっ、わ、私だって必死だったんだから!」


 怒るカミラにごめんごめんと答えてから俺はそっとある物を取り出す。

 不思議そうなカミラに、手を出し手とお願をして、その白く細い指に僕は……銀色の指輪をはめる。

 顔を赤くするカミラに僕は、


「ど、どうかな」

「無理しすぎじゃない? こんな紫色の宝石が三つも入っているし」

「! だって、カミラがこの宝石が好きって言うから……」

「……覚えていてくれたの?」

「それは、カミラの事だし」


 最後の方は照れ隠しもあってか声が小さくなる。

 そこでカミラは指にはめだ指輪をkもう片方の手でそっと触れてから頬笑み、


「ありがとう、大事にするね」

「……そうしてくれ」


 と僕が答えた所で、全てを目撃していたらしい男友達と女友達が何人も現れる。

 初めから隠れて僕達の様子を見ていたらしい;。


「ちょ、何で皆が!」

「どうしてお前らがいるんだ!」


 その問いかけに、上手くいったらお祝いで、失敗したら慰め回の予定だったんだと彼らは答える。

 そして僕達は酒場に連れて行かれ(この国では16歳からお酒が飲める)、その日は明け方まで、宴は続いたのだった。




「おしまい」


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