秋原かざや様の素敵なイラストの話
秋原かざや様の素敵なイラスト(http://8916.mitemin.net/i162796/)のイメージで書いております。
14歳になったあの日、学校帰りにたまたま寄り道した公園で私はそれと出会った。
それはブランコに乗ってきた私の頭の上に降って来て頭に当たり少し痛かった。
丸い白いボールの様なそれは私の頭に当たった後、すぐ傍の地面に転がって……Νんという機械音と共に、銀色の手足と羽が出てくる。
この公園には私しかおらず、この不気味な存在から私は即座に逃走しようとした。
だがそこで、その奇妙なロボットの様なそれが少女の様な声で、
「逃がさないわよ、鈴木晴美」
私のフルネームを知っているのを知り、私は更に悲鳴を上げそうになる。
だが立ち止まって悲鳴を上げるよrも今はここから逃走するべきだと、私の冷静な頭は判断していた。
だからブランコから飛び降りて、公園の外に逃げ出そうと走り出す。けれど、
「なんで? 外に出られない?」
何時まで経っても公園の外に出れない。
それどころか出口の柵との距離が先ほどから全力で走っているのに変わらないのだ。と、
「ちょっと特異点が生じそうだったので結界をはったから出れないよ?」
不気味なロボットらしきものが私にそう話しかけてきて、だから私はそのロボに問い直す。
「結界って何? というか特異点て……」
「結界は、以上のある空間を切り離す手法の一つ。そして特異点は人類に害のある“たゆたう悪意”が外に漏れ出さない様に。そしてそれをこの中で潰すのが君の仕事なんだ」
「……私に何をしろと?」
「魔女っ子に変身して、敵と戦って欲しいんだ」
「……変身するには契約が必要で、後々とんでもない事になったりしないでしょうね」
「確かこの時代だと数年前に、大ヒットした“魔法少女”のアニメがありましたね」
「そ、そうなの……そもそも魔女っ子って何よ。魔法少女なんじゃないの?」
そこは普通魔法少女だと私は思うのだが、そのロボットは分かっていないなと手の部分を曲げて上向きにして肩をすくめる。
「魔法少女なんて、もう時代遅れですよ。今は魔女っ子の時代です」
「え? いや、でも……」
「まあまだ過去の古臭いこの時代ですから、魔法少女が人気なのでしょう」
何となくこのロボットを一発殴りたい衝動にかられたがそこで私は見た。
地面がぼこぼこと泡立ち、黒い丸い物が幾つも浮かび上がってくる。
「な、何あれ」
「あれが“たゆたう悪意”だよ。まあ頑張って倒してね」
「倒すってどうやって」
「変身用のタブレットがあったから、確かこれね」
そう言ってそのロボは体の中からにゅんと銀色のスマホサイズの板を渡してくる。
金属製なのかは分からないが、持っているのか分からないくらいに軽い。
そこで、小さくその金属が震えるとともに緑色の画面が中に現れる。
幅は30センチ程度、縦は20センチほどの画面で、多分、立体映像という物なのだろうと思う。
そしてそこにふっと黒い文字が現れる。
「えっと、敵の出現波長を観測したため、強制変身モードを起動します」
何だそれはと思っている内に、その銀色の箱の様な物が、やけに宝石の様な物がついたピンク色の杖に代わる。
変身とか魔法少女って、小学生で卒業したというか恥ずかしいと思って声を上げる前に私の服が光り出す。
それは2、3秒の間に、胸にはハートマークの宝石がついたリボンがそこら中についたピンク色を基調としたドレスに代わる。
しかも髪はツインテールにされて、触ってみるとリボンが付いている。
だがそれよりも気になるのは、
「何故こんなピンク色の髪に」
「属性値の関係だよ。瞳が赤になっているから炎の属性と、それよりは少ない風の属性が晴美にはあるみたいだね」
「そ、そうなんだ……というか魔女っ子に変身したら、何か名前を名乗った方が良いのかな?」
「何でもいいよ。目的が果たされれば私達はどうでもいいし」
このロボの投げ槍っぷりがむかつくと私は思った。
思ったけれど先ほど湧いてきたその黒い玉は徐々に、黒いマネキン人形の様な形を作り始める。
不気味な物が20―30体ほど現れてくるそれを見ながら私は、
「ロボ、これから私はどうすればいいの?」
「杖に聞いて。音声認識でチュートリアルが出てくるから」
「……いやいや、チュートリアルって、今すぐに倒さないと」
「実践こみのチュートリアルだから大丈夫よ」
もう少し丁寧な説明のサポートキャラが欲しかったと私は思った。
思いながらも小声で私は、
「チュートリアルをお願いします」
それと同時に先ほどの画面に、まず敵を認識する為に“空間探査”を行いましょうと出てきて、
①魔力を込める様なイメージで杖に力を送りましょう。
②“空間探査”を起動させると、心の中で念じる(魔力から指令を読みとります)、もしくは声で(音声認識により指令を読みとります)指示して下さい。
③同時に目の前に杖を振りかざして下さい。
やり方について記載されていた。
とりあえずは言われた通りに魔力を込めるイメージをして、
「“空間探査”を起動」
そう叫ぶとともに杖を前に出して、そこから赤い線上の光が複数飛んでいく。
けれどある場所に来ると跳ね返り、また他の場所に飛んでいく。
跳ね返っている場所がこのロボが作りあげた結界のある場所なのだろう。
やがてその赤い光は私の杖に戻り、傍に表示された画面には空間認識、終了、すぐに、“捕縛探査”についての発動と現れる。
先ほどと同様に杖を掲げると、そこから再び赤い光が先ほど以上に放たれるが、それらはその黒いマネキンの頭の上に、小さな球状になって静止する。
ターゲットを確認と現れた所で黒いマネキンが私の方に動き出す。
私はまだこの後どうすればいいのか分からないのにと焦っているとそこで、画面上に、
「緊急事態につき、敵を自動でせん滅します……」
そんな表示が出たかと思うと、杖から赤い炎が浮かび上がりその黒いマネキンに向かって打ち出される。
その黒いマネキンは炎が触れると同時に炎上して、すぐにガラスの割れるような音を出して砕けて消えていく。
そして私の杖から炎が出なくなると、全てのマネキンは消えていた。
助かったと私が思っているとそこでロボが、
「よし、やっぱり魔力が強くて適性があるわね。というわけで、これからしばらくよろしくね」
「え?」
「魔女っ子としてこれから頑張ってもらうから」
「いや、こんな怖い思いをするのも嫌だし」
「無理。いざとなったらこの特異点が生じた所に強制転送するし」
「ちょ、私の意見は……」
「仕方がないよ適性があったわけだし。というわけでこれからもそこそこサポートするのでよろしく。あ、私はミルキーだよ。よろしく」
「名前だけは可愛いけれど、私は絶対嫌だから!」
そう叫んだあの日から、私は魔女っ子として変身させられ、謎の生物たちと戦う事になるのだった。