私がSFを書く理由(1)
私がなぜSFを書くのか?
それは、私自身が科学者・技術者であることももちろんですが。
一番の理由は。
めんどくさい。
からです。
たとえば、人の心のとても深いところを穿つような物語を書こうと思ったら。
それに相当する深い人生経験をしなきゃならないし、あるいは、それ相応の深い人間観察能力が必要です。
そんなんめんどくさい。
たとえば、ファンタジー世界の冒険物語を書こうと思ったら。
魔法とか言い始める時点で法則は違うでしょうから、その世界のいろんな法則とかを考えなきゃならないし、その法則の上で、じゃあ人々はどんなふうに集まって組織を作っていくだろう、とか考えなきゃならないし。
その上、人間じゃない知的種族でも出てこようものなら収拾がつきません。オーク心理学とかエルフ心理学まで一人で体系を作らなきゃならない。
狭義のハードSFでは、そういうのが一切必要ないんですよね。
楽ちん。
そういう意味では、「なろう」でちょっと流行ってるネットゲームベースの話って作りやすいんでしょうね。
法則なんてのは、要は「ゲームのルール」なので、運営がこういう風に作ったんです、の一言でそれ以上の深堀や裏付けは必要ないし。
異種族が出てきても、たいていは中の人は人間だし、異種族がNPCだとしてもそれは運営のプログラムした行動だから、どっちにしろ人間の反応をそのまま適用すればいいし。
だから、ネットゲームモノって、ちょっとSFに近いんですね。設定を作るのがめんどくさくないっていう意味で。
SFは、ちょっとありそうな新技術を一つか二つ、ちょっとありそうな舞台を一つか二つ、作るだけ。
あとは、現実の人間の反応をじっくりをシミュレーションするだけで話のすべての設定が整ってしまいます。
シミュレーションした結果の世界をスタート地点にしてみてもいいし。
シミュレーションの途中でちょっと面白い事件が起きたら、それを物語にしてもいいし。
ほっとけば物語ができちゃうのが、SFの楽なところ。
昔の私はすっごいくそ真面目にファンタジー世界の設定を作ってファンタジーモノを書いたこともありましたが、アレは本当に大変です。結局矛盾だらけで無茶な世界ができちゃって。無矛盾のファンタジーを書ける人は尊敬しちゃいます。
初期SFの金字塔とも言われる「宇宙戦争」、あれは、そういう意味ではすごいSFなんですよね。人間心理からは考えられないような火星人の行動。それが新しいタイプの恐怖を誘うわけで。全く未知の火星人心理学まで裏で設定してあるんですから。
そんなわけで、私の書くSFはすべて、人間以外の知的生物が出てこない超ハードSFです。人工知能とか出てきても、それは人間がプログラムしたものだからノープロブレム、みたいな。
こんな楽ちんなSFの世界に、もうしばらくは浸っていようと思います。
つづく?