絶対零度
絶対零度。マイナス273度です。常識ですね。渋谷のギャルに聞いても即答すると思います。
私は渋谷のギャルに声をかける勇気はありませんので皆さんで試してもらいたいところですけどね。
そもそも渋谷にギャルっているんですかね。前に、半日渋谷で突っ立ってるっていうわけのわからん仕事をしたことがあるんですけどね、ギャルらしいギャルを見なかったんです。最近は外見で分かりにくい隠れギャルが多いんですかね。
ギャルの話じゃないですね。絶対零度です。
温度の話で、ほら、単純に、『溶岩は1500度』『絶対零度はマイナス273度』って比べると、どう考えても溶岩のほうが強いですよね。絶対零度って案外たいしたこと無いよね、って感じで。
たとえば、『1500度まで熱した鉄の塊』と『絶対零度まで冷やした鉄の塊』、どっちが危ないかっていうと、当然1500度の鉄の塊です。いやどっちも危ないですけど、比較の問題として。
ただ、創作、特に能力バトル系で、こういう理屈で『冷凍系能力は加熱系能力より劣る』ってことになるかというと、これがまた違うと思うんです。
熱を与えるのは簡単。熱を加えれば温度が上がる、単純。
逆に、熱を奪うのは難しい。
すべてのエネルギーは、ざっくり言うと『みんな熱になりたがってる』って法則があります。地域によってはこれをエントロピー増大の法則とか言うわけですが。
エネルギーを熱に変えるのは簡単(ほぼ損失ゼロ)なのに対し、熱を熱以外のエネルギーとして奪い去るのには、多大な損失を伴います。
だから、何かを絶対零度(近く)まで冷やす、ってのは、その裏にものすごい努力が隠れていると考えたほうがいいのです。数式上の理想機関を仮定しても、冷やす、つまり熱を奪うのには、奪うべき熱量の何倍もの仕事量が必要です。現実はその効率をさらに下回ります。
おまけに、『真の絶対零度』は、絶対に到達できません。到達できないことが数式上証明されています。熱を奪うために必要な仕事量が奪う熱の何倍に相当するのか、というのは、『温度に反比例する』という法則があります。温度とは、絶対温度、ケルビン、つまり、絶対零度で『ゼロ』になる単位です。どんどん冷やしていって最後の最後、温度がまさに絶対零度に到達しようとするとき、温度に反比例する『倍率』は、『無限大』になってしまいます。つまり、絶対零度に到達するには無限のエネルギーが必要なのです。これは、光速以下の物質にどんなにエネルギーをつぎ込んでも光速に到達できない、というお話によく似ていますね。実際、熱力学上の絶対零度というのは、相対論的物理学における光速と同じような『壁』であり『基準』です。何者もそこに到達できないからこそ基準として成立しているわけです。もちろん、光=電磁波が常に光速で飛んでいるように、努力の結果としてではなく宇宙が生まれた瞬間から絶対零度だったもの、という存在を仮定することはできます。ただ、少なくとも地球上でそれを発見するのは難しいでしょうね。
てな感じで、絶対零度というのは、『熱』という科学においては、究極中の究極であり、これに比べたら、千度だの一億度だの一兆度だのってのは、しょせん数えられるレベルって意味で絶対零度の足元にも及ばないのです。『絶対零度(近く)まで冷やす能力者』は、単に加熱する能力者よりも能力としては圧倒的に上等と考えたほうがいいのです。
と言っても、ケンカしてどっちが勝つかってーと、たぶん加熱能力者ですけど(笑)。
『優雅に泳ぐ白鳥も水面下では激しく足を動かしている』としても、別に優雅なだけじゃ勝てないですもんね。
いや、加熱最強だからって一兆度の火の玉とか出されても困ります。地球が消えてなくなっちゃう(笑)。
つづく?




