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地球温暖化

 地球温暖化は嘘だとかなんとか、そんな論調がありますね。

 正直、温暖化は確かに進んでいるし、それが人類が排出する二酸化炭素などの温暖化ガスが原因である可能性は否定できません。


 ただ、なんというか、『温暖化=二酸化炭素=絶対悪』みたいな極端な論調には、どうにもついていけないのです。

 えー、あったかくなっていいじゃん、的なゆるい意味も込みで(笑)。


 とりあえず、温暖化すると氷が解けて海水面が、って話については、ぶっちゃけた話、南洋の諸島国が沈んでも、私、困らないですもん。沈む前に、嵐でたびたび高潮の被害を受けるようになって高台なり海外なりに移住するようになるんでしょうけど、他人事ですから。ああ、大変ですね、って。日本の陸地についても、すでにゼロメートルを下回る土地なんていくらでもあります。堤防と排水を工夫すれば海面が上がっても問題ないでしょうし。


 海面はどうでも良くて。温暖化すると、めんどくさいのが、『気候が変わる』ってことです。はい、ものすごく当たり前のこと言った。気候が変わると、もちろんエアコンとストーブの売れ行きが変わりますけど、もっとダイレクトに影響があるのが、植生ですね。いや、普通の植生は大丈夫。何億年の進化の力をなめんな。多分ちょっと気候が変わったくらいじゃ、植生は平気です。どれかが死滅しても必ず別の種がきっちりニッチを埋めて安定状態に戻ります。砂漠になる地域もあれば砂漠が密林になる地域も出てくるでしょうが、『地球丸ごと砂漠になっちゃう』なんてことはまずありえません。


 そんな自然の植生より心配しなきゃならないのが、農業です。ここ百年か千年かくらいで一足飛びに進化『させられた』農作物たちです。たぶん、今の気候が変わってしまったら、全滅します。『静岡で育たないなら青森に植えたらいいじゃない』……なんてマリーアントワネッてもダメ。温暖化で大きく変わるのは、温度の平均値よりも、温度の変化幅とか変化パターン、降雨や日照のパターン。どの緯度で高気圧低気圧が発生しやすくなるかとかが変わるし大陸、地形、海流、さまざまな外的要因との相互作用のしかたが変わってくるので、本当にランダムに近い変化をしちゃうはずです。多くの農作物が、今までの気候のパターンで最適な成長をするように改造されていますから、このパターンが変わると、まともに育たなくなります。また長い時間をかけて改良しなきゃならないばかりか、温暖化は刻一刻と進むうえその影響はランダム、ある年には上手くいった品種が別の年には全く育たないし外挿予測で品種を先回りして作っても毎年外しまくる、なんてことも起こります。すでにその兆候は出ているように私には思えるんですね。


 だから、地球温暖化、ではなく『気候パターンの激変』に備えなきゃならないんです。これに関しては、『私も困る』ので、ちゃんと対策してね、と言いたいわけです。農作物が取れなくなったら、ご飯が食べられませんから。


 そして、もうひとつ言っておきたいのが、これを『人間が出した二酸化炭素が悪いから』ってことにして欲しくないんです。人類が二酸化炭素を出そうが出すまいが、地球の気候は必ず激変期を迎えます。歴史上、何度も繰り返していますから。今、たまたま二酸化炭素が原因っぽい温暖化に向かっているけれども、そうじゃない気候変動も必ず来るんです。そのときに、人類は食糧生産を安定化させるために何をするのか。たとえば遺伝子編集で十年おきに最適な作物を供給できる体制を作っておくとか、そんな対策を持っておくべきなんですね。今の温暖化は、ある意味で、そういう知見を得るための大チャンスなんです。


 それに対して、『温暖化を止めよう』『二酸化炭素を出す産業は悪だ』ってな論調。私がそういう考え方にいまいち付き合いきれない理由が、分かりましたよね。地球的な気候変動への備えという課題に対して、『気候の変動を止めよう』ってのがいかに的外れか、ってこと。もちろん、人類の活動の結果の変動って面を否定するつもりはありません。でもでも、総体としての人類活動っていうとてつもない質量を持った慣性と、地球気候変動っていうこれまたとてつもない規模の慣性に、ちょっと我慢したり努力したりするくらいで打ち勝てるわけねーだろ、と。それだったら、『地球気候編集機械』でも作ればいいじゃん、二酸化炭素の産出を削減しようとする努力の全てを『編集機』につぎ込めばいいじゃん。人類が二酸化炭素をコントロールすれば温暖化が防げるって思想は、突き詰めれば『人類は地球気候編集機械を持てる』とほぼ同義なわけですよ。私はそんな自信家じゃない。


 と、編集機はさすがに冗談にしても、『二酸化炭素が悪いんだ、だから二酸化炭素の削減をしよう』ってところで思考停止しちゃうのは、地球規模の気候変動という大きな問題に向き合う態度としては(そしてもちろんSF屋としても)いまいち乗れないなあ、というお話。


つづく?

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