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影響を受けちゃう

 誰かに影響を与えること、影響を受けること。


 自分の書いた文章を誰かが読んで、その人が影響を受けていると考えると、いい気分ですね。

 誰かの書いた文章を読んで、自分の考え方に変化が起きたり、自分の考え方を再認識したりすることも、素晴らしいことです。


 でも、なんとなく、ですが、『影響を与える』>『影響を受ける』っていう構図って、ありませんか?

 ともすれば、影響を受けたことが謗られることさえあるように思います。


 影響を与えるのは、難しいけれどすごいことです。言うまでもありませんが。

 共感や反発を誰かに感じさせることができる考え方を持ち、それを伝える文章力も持っている、ということなのですから。

 物書きを名乗るのであれば、誰かに影響を与えるものを一生に一本は書きたいものです。


 そんなすごいことなのに、逆方向はひどく不遇です。


 誰かの文章に影響されてひとつの文章を仕上げる。

 それを読んだ誰かが、『○○氏の受け売りだ』なんて誹謗する。

 そんなシーンを見たことがありませんか。


 誰かに影響を受けることも、誰かに影響を与えることと同じくらい尊いことだと思うのですよ、私は。誰かの書いたものを読んで心を動かされたりする感受性、あるいは、形にならなかった思いを言葉にできるようになる知的成長、そして、最終的にそれをオリジナルの文章として書き上げようという動機付け、恥じるべきものは何一つありません。

 芸術の出発点は模倣だ、なんて言葉を引くまでもなく、誰かに影響を受けて何らかの記録を残すという行為はとても素晴らしいことなのです。


 そしてそれは、影響を与えた本人からしても、うれしいものです。自分が書いた文章に影響されて誰かがよく似た主張や、その一部を自分の理論に書き換えた一文を公開すると、ああ、この人は私の文章に刺激されてこんなものを書いてくれたんだな、しかもそれをちゃんと理解して、自分の考え方との違いをこうやって形にしてくれたんだな、とうれしくなるものです。


 特に主義主張の話となると、たいていの考え方は千年前には出尽くしています。何を書いても誰かのパクりになっちゃいます。猫がキーボードの上でダンスを踊っているうちにシェークスピアを書いてしまうのと同じ様なもんです。

 だから、影響を受けようが与えようが、それは時間的な後先の話。

 確かにあの人の文章を読んだから自分の考えがこうだと確信できた、というのはあるでしょうが、だからといって、先行者が偉い、啓発された側は劣後だ、ということはありません。そこに優劣をつけることは無意味です。『人類の誰かが名作を書いた』ことと、『あなた自身が名作を書いた』ことは別の出来事です。あなた個人の成長を否定する権利は誰にもありません。


 もちろん、単なる主義主張の話じゃなくても、物語についてだって同じです。


 自分の話とよく似た話を書いている人が出てきた。

 外野は『パクりだ』と騒ぐかもしれませんが、本人は案外悪い気はしない。


 ああ、この人は、よく似た素材を使ってもこんな風に料理するんだなあ。

 私の設定やストーリーを面白いと思ってくれたから、この人の作品に取り入れてもらえたんだなあ。


 なんて風に思えるものだと思うんですね。


 だから、遠慮せずに影響を受けちゃえばいいと思うんです。

 だれそれの影響を受けましたとか、だれそれに敬意を表して、なんてことをいちいち断らなくてもいいと思います。礼儀としてやりたい気持ちはあるでしょうけど、誰に影響を受けようと誰のアイデアをパクろうと、最終的にそれは自分の作品なんですよね。自分自身の成長なんです。


 特にWEBの世界で何らかの物語を書いて、誰とも似つかないものなんて書けませんって。たぶん日本語で書かれたものだけでも百万の桁に突入してますよ。『誰とも違ったものを』なんて気張るくらいなら、『○○さんの話は面白いなあ、似たものにしよう』『○○さんの表現はすごいなあ、少し使わせてもらおう』なんてことを繰り返していったほうが、確実に自分でも納得いくものが書けるようになると思うんです。

 暖めているストーリーがある、そんなときに誰かの作品を読んで、あっ、この展開、この設定、被ってる! って緊急回避して、面白いものを書けるか、楽しく書ききることができるか、そう考えると、むしろ堂々と『影響受けちゃえ』って思うんですよね。ストーリーは決まってるんだけど表現方法がいまいち思いつかない、そんなときに似たような話を読んで影響されちゃうのは、ほんと、しょうがない。それに、設定被りを完全に回避するとか、無理(笑)。


 まあ、楽しく書きましょうや、ってことで。



つづく?


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