運動量を守ろう
SFを書くってとき、ちょっと気にすることってあるじゃないですか。
それは、単に『科学的厳密さ』みたいに言われることもあると思うんですけど。
ただ、架空の科学理論や技術を登場させた時点で、科学的には厳密に正しい話ではなくなってしまうんですね。
それでも、SFとしてそれらしい話を書くにはどうするのか。
その一つの答えがですね、保存則だと思うんです。
世の中のほとんどの物理法則は、保存則の組み合わせで記述されています。どの量が保存されるか? というのを決めて、その量の変化や発生・消滅を表す現象を『項』として足し算していって、最終的に『=一定』と結ぶ(実際は=0で結ぶ場合が多い)。物理法則ばかりでなく化学とか工学の分野の理論式導出でもよく用いられる方法です。情報学ですらそれに近い保存式があったりするくらいです。
そんなわけで、保存則を守ると、SF的にいい感じに厳密チックな話が書けると思います。
実はこの辺は割と誰でも意識してるレベル。
だけど、問題は、その保存則の対象がどうにも『エネルギー保存則』に偏りすぎてるんですよね。
広義のエネルギー保存則。質量もエネルギーの一種として、総エネルギーが保存される、その理屈は外さないようにSFガジェットを登場させるよう気をつけている人は結構多いのです。
ところが、もう一つ、とても大切な保存則があるんです。
それが、運動量保存則。
運動量って、エネルギーとは独立して保存されなきゃならない量なんです。
簡単に言えば、押せば押し返される。動き続けようとする『勢い』はそれをどこかに移さない限りゼロにできない。運動量は、なんと言うんですかね、座標に対する貸し借りみたいなもので。実際、少し高度な定式化の中では、座標と運動量はペアで出てきます。エネルギーとは全く違う概念なんですね。
ちょっと前にバリアの話でも書きましたが、未知の機関でエネルギーを相殺することはできても、運動量はどうにもならないのです。
運動量がちゃんと保存できない理論や技術は、ちょっとSF的にはいただけない。こんな風に厳密に考えなくてもですね、運動量が保存してないっぽい理屈が登場すると、普通に読んでいるだけでも『なんだかその理屈、おかしいな?』という違和感を感じるんですよ。私だけかもしれないですけど。
そんなわけで、運動量を保存しましょう。
あと細かいことを言うと、電荷とかスピンとかバリオン数とかも保存して欲しいけど、まあそこまで描写する人いないからいいか。でも、雷使いとかって描写のときは、電荷の保存は気をつけてくださいね!
つづく?




