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偶然なんて信じない


 事実は小説より奇なり。


 そんなわけで、現実では時に小説よりもはるかに稀な偶然で物事が進むことがあります。


 逆に言えば、小説は事実よりも偶然に頼らなくていいはずなんです。


 小説は事実より確たる。


 ありえないような幸運の積み重ねで今日まで生きてこられた現実、偶然に支配された人生との対比、小説の中でくらい、偶然に頼らない物語を書いてみようではありませんか。



 詭弁ですけど、私は割と、偶然なんて信じない派。


 少なくとも、偶然の力に頼って物語を面白くしようとするのは避けたいと思っています。


 誰かの意図、誰かの意思があり、あるいは、そうなることが最初から演算可能な初期条件があり、だからこそそうなった、というお話にしたい。



 SFって、たとえば、現代物理学の土台上に一切未知の仮定を入れず科学技術の進歩を描く『真のハードSF』みたいな分野があって、それは、現実に存在する物理法則を厳密に適用した『シミュレーション』の結果なんです。


 シミュレーションには、偶然の要素はなるべく入れませんよね。偶然に左右される部分を可能な限り小さくしたいと思うのです。


 私の書く『ハードSF』は、現代物理学上の無謬性を保証する本当のハードSFではなく、現代物理学を破綻させない範囲で新しい仕掛けをほんの少し入れて、その結果が科学技術や社会や人にどんな影響を与えるか、を厳密にシミュレーションします。だから私はこれも広い意味でハードSFと自分で呼んでいます。違うだろ、という異論もあるかと思いますが、その議論はまた別の機会に。


 それで、やっぱり厳密にシミュレーションしたいから、偶然の左右する要素は排除したい。法則と初期条件を定めることで全てが必然の積み重ねで決められる、というお話にしたい。


 もちろん、初期条件自体には、ある程度の偶然性はあるかもしれないですけれど、それはそれ。そこから先はなるべく『偶然でした、が理由』の展開は避けたいのです。




 たとえば。


 宇宙船が故障して宇宙を漂流。ともかく直近の惑星に着陸しよう、ってことになりました。


 降りた星には生命があふれ、食べ物を調達することも出来て、そこでのサバイバルであれやこれや……で無事に助かりました、とか、悲惨な最期を迎えました、とか。


 ……降りた星に偶然生命がいて? しかも食べられる生命がいて? 生命が存在する可能性もそうですし、その生物が地球生物と同じアミノ酸セットを使っていた可能性とか考え始めたら、どれだけ強運なんだよ、って感じですよ。


 もしこの話であれば、私ならこんな設定にします。


 実はその中古宇宙船には前の持ち主がいて、不完全な航路情報削除処理のために漂流した結果たどり着いたのがその惑星。


 実は前の持ち主は地球外でひそかに生物兵器として新種生物を作る実験をしていたマッドサイエンスカンパニー。


 だから(古い航路情報が復活してしまって)偶然にも生命のいる星に故障でたどり着き、偶然にも食べられる同じ種別の生物でした、ってのも、実は偶然じゃなくて必然でした、ってことになります。


 それで最後はマッドサイエンスカンパニーを知恵の力で追い詰めるなんて話に出来ればベストですね。



 偶然を信じないSFって、ある意味で、ミステリー小説と同じ構造なんですね。


 提示した条件から犯人を推理せよ。


 私がアシモフのミステリーSFが好きだったことも影響しているかも知れません。


 しっかり考えれば犯人(結果・オチ)が分かるSF、論理的演算で結末を言い当てられるSF、そんなのを私はハードSFと呼びたいと思っています。



 ってことで、なんつーか、頭のいい人にはさくっと展開が読めちゃうSFばかり書くことになっちゃいそうですが、そこは一つ、温かい目で見ていただければと思います。


つづく?

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