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地球の取説

 人類が宇宙に進出しましたー系のSFを書くときに絶対に避けて通れない話題が一つあります。


 すなわち、『地球はどうなってんの?』


 全くの異星人とかが主役とか他の銀河が舞台とかでない限り、この話題は避けて通れません。

 その扱いにはいろんなやり方がありそうですので、ちょっと考えてみたいと思います。




1. むしろ地球が舞台


 宇宙を舞台にしたSFでは余り好まれないことが多いのが、地球が舞台だったり、地球の周りでしか物語が進行しないこのやり方。

 主人公が地球出身地球育ちで宇宙に出て行くとか、地球に訪問してきた他の星の出身者が主役とか、そんな状況。


 なので、地球を物語の中で事細かに描写することができ、どんな地球でも好きなように設定できます。核戦争で滅びる寸前でもいいし宇宙一の繁栄を誇っててもいいし。地球を描くという意味では一番楽ですね。


 でも、スペースオペラ的にはつまんないですね、きっと。私の作品なんかはたいていこれなんですけど。




2. 君臨する地球


 宇宙の中で、地球は発祥の地であると同時に最大に繁栄している星、として描くやり方。

 現実的にはありがちな未来だと思うんですけど、こと『SF』の物語としては、これを見ることは余りありません。


 モチーフとしては、帝国主義的植民地の統治者としての地球、とかですかね。植民地の人々が地球からの独立を夢見て闘争する物語だったり。


 単なる背景として君臨する地球を出すこともできそうです。宇宙に散らばった人類が、それぞれの惑星で起こした小さな争い、その一方、地球は圧倒的な国力で戦争からは無縁でいる、あるいは、戦争から搾取している。その小さな小国での事件を扱ったSFだったり。


 あるいは、繁栄する地球にしかない何かを手に入れるために宇宙の果てをスタート地点に宇宙を冒険する物語。地球はよく知られた地点で誰もがそこを目指すけれども、お互いに邪魔しあうみたいな。戦国時代に上洛を目指す戦国大名みたいなモチーフですかね。




3. 衰退した地球


 SF好きにはたまらない設定。人類の文化や経済の中心は宇宙に出て行き、地球は徐々に衰退している。

 あるいは、宇宙帝国から逆支配を受けて抑圧されている。


 この設定なら、地球人が主人公でも、宇宙人が主人公でも、地球を面白く絡ませることができます。ぶっちゃけ、一番便利な地球です。


 この場合も『戦国上洛モチーフ』を持ち出すことはできます。この場合は、誰にも気付かれていない地球に残された偉大な遺産を求めて、みたいになるんでしょうね。


 また、いっそ『抑圧された地球の復権』を一大テーマとして持ち上げるのも面白いです。アシモフの『鋼鉄都市』から続く初期ロボットシリーズはまさにこれでしたね。

 初期条件を『抑圧』に設定することで、物語後半のカタルシスを作りやすくできるので便利。これは、逆パターン(地球が宇宙国家を抑圧している)でも使えますけど。


 衰退する理由についても、たとえば資源枯渇とか何とか、理由を付けやすいので、導入の面倒さも少なめ。使いやすい地球像と言えそうです。




4. 神秘の地球


 これまた良くあるネタ。地球は不可触、誰も行ってはならん、系。


 精神的な活動の焦点、つまり、宗教の聖地的な扱いである場合もありますね。


 こういう系の場合は、基本的には地球には人間は住んでないってことになってるのが普通。しかし、人がいないはずの地球に残っていた人々が実は……! というような展開が望めます。


 また、地球を支配することが精神的なリーダーの要件となっている、なんていう設定も考えられそうです。


 いずれにせよ、現代からの単純な延長ではなかなか考えにくい地球なので、逆に、想像力をたっぷり注ぎ込んで、まさにファンタジー世界の地球を作っちゃえるという利点がありますね。欠点は全く同じ、延長では考えにくい、そんな状態になった過程に説得力を持たせにくいというところ。この辺が、SF屋の腕の見せ所です。



5. 地球って何?


 銀河帝国を築いた人類は、もはやその発祥の地を忘れてしまった。


 というやつです。これまたアシモフの銀河帝国シリーズがそうです。アシモフばっかり引っ張ってすみません。


 少なくとも序盤、作中では地球について全く触れないのがお約束。地球は読者だけが知っている存在です。そもそも、物語に地球は関わらないし、地球の存在自体が展開に不要、というパターン。


 問題は、これだと単なる架空宇宙SFとして成立してしまうこと。


 架空宇宙でない必然性として、その『忘れられた地球』を巡る探索や陰謀をテーマにする。たとえば、知られた星の中に、明確に生物が人類に進化したと呼べる星が無い、きっとその発祥の星があるはずだ、というような流れ。

 SF的には一番わくわくする流れです。なぜって、読者としてはそれが地球だって知ってるんですもん。その上で、四苦八苦しながらその秘密にちょっとずつ近づいてくる主人公たち。魔王城の最上階で勇者が迫ってくるのをニヤニヤしながら待ってる魔王様の気持ちですね。


 問題は、このネタってやりつくされちゃってるところがある点。それと、物語として膨大な背景が無いと、地球が忘れられた過程とそれを再発掘する過程に納得感を感じられない点。長大なシリーズモノの最終部とかでやると盛り上がります。


 忘れられた地球モノ、書いてみたいですね。




 以上、宇宙進出後社会SFを描くときの地球の描き方について。


 やっぱり、地球って唯一無二の存在なので、魅力的に書きたいものです。


 他に面白い地球像があったらぜひ教えてください。


つづく?


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