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科学と陰謀とSFと

 SF、特にハードSFと言われる分野は、科学的な問題提起と問題解決を求められることになります。


 となると、ともかく、単純な暴力で問題を解決するわけにはいきませんし、もし、「主人公 vs 敵」という構図があるとすると、その対立は、どちらかと言えば暴力的と言うよりは文化的な対立にならざるを得ません。


 つまり、知恵と知恵のぶつけ合い。


 そんな中で、カタルシスをもたらす問題の解決を見せるには、それまで読者に対して隠されていた知恵の発露が必要なのです。が。


 主人公が都合よく世紀の天才だった、なんて場合でもない限り、新たな科学的進歩で敵を打ち破る、なんてことはありえません。


 となると、主人公に残された手段は、「再発見」「再発明」です。


 そして、「再発見」や「再発明」をする以上、それは、事前に注意深く隠匿されていた、そんな事情が必要になります。


 すなわち、陰謀。




 科学と陰謀。


 この二つの言葉。



 陰謀論は、どんなところにでも湧きます。それは、実は、科学ととてもよく似ているのです。


 つまり、「理解できないことを説明しようとする力」。


 理解できないことが起こると、その背後に陰謀があると説明しようとする力は、おそらく人間の根源的な活動の一つで、それを抑制することはきっと不可能なのだと思います。その同じ力が、科学を発展させてきたのですから。



 しかし、ある調査によると、「突飛な陰謀論を信じやすい傾向」は、「科学に疑義を持つ傾向」と強い相関関係にあったそうです。



 実のところ、この陰謀論を信じる構造は、「権威・権力」の横暴への対抗として生み出された社会的な知恵の一つのようです。


 そして、「科学」というのは、おそらく、人類史上で(今のところ)最上の権威で、最大の権力です。科学的にストレートな議論は圧倒的な権威で、反駁しようが無いからこそ横暴を生みやすくなります。陰謀論と反科学の相関は、ここから来ているのだと思われます。


 つまり、科学を生む力と陰謀論を生む力はきっと同じなのに、結局陰謀論は科学の最大の敵になってしまっている、というわけです。




 ここからは私の持論に過ぎないので信じないでください。




 この世に、陰謀というものは、まずありません。ほとんどの陰謀論は、作り話です。



 起きた事件をあとから繋ぎ合わせてみると、陰謀があったと考えたほうが理解しやすい歴史というのはたくさんあります。


 けれど、そのほとんどは、その日その日、かかわっている人たちが、自分の考える最善を尽くそうと努力した結果なのだと思うのです。


 その時には最善だと思えたことも、後々に間違いに気付く、そんなことも多々あります。むしろ、人類の歴史は99%がそんな出来事です。


 けれど、陰謀論は、あとから結果を検分し正解を知ってから過去の人々の努力を嘲ります。それどころか、くらい動機があったからわざとこのような失敗をしてみせたのだ、そのようなことを、陰謀論は述べます。


 はっきり言って、陰謀論はずるいんです。


 もちろん私も陰謀論に心躍ることもありますけれど、一方、そんな陰謀論の本質、すなわち「ずるさ」、そこに目を向けなければならない、という点は、常に自戒していきたいと思っています。





 さて、話を戻します。


 困ったことに、私の大好きなSFは、ある意味で陰謀論が主役なのです。


 科学の隠された側面を暴き、権力の横暴を白日に晒す。


 そんなスカッとした話が大好きなんです。


 しかも特に、私の場合は、善意の科学技術を導入した結果の社会の反応の中に紛れ込む陰謀、そんな話が大好きなのです。


 困りますね。


 反陰謀論を唱えながら、陰謀まみれのお話を考えなきゃならない。



 なので、どうも私の作品は、スカッとする悪者が出てきません。


 誰もが、それぞれが持つ情報と手段の中で最善手を模索しています。その結果、たまたま主人公たちと対立してしまう、そんな話になりがちです。


 私の考えうる最大の悪意を敵方に与えているつもりなんですが、すっきりしないですね。


 どうにも、私は人間の善意に期待しすぎるところがあるようです。


 まあ、それも私自身の「味」だと思い込んで、勝手に進んでいきたいと思います。


つづく?




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