月立淳水の小説歴・前編
初めて小説を書いたのはずーっと昔。
小さい頃から漫画を描くのは好きでしたが、絵が徹底的に下手で漫画描きになるのは早々にあきらめていました。
漫画と言ってもほとんどがどっかで見たようなストーリ、元になるアイデアさえもパクったようなものばかりで。
その後、完全にオリジナルなものを、それなりのスケールで書いてみたい、と思ったとき、文字だけで表現できる小説が私にとって唯一の表現方法でした。
そんなわけで一番最初に書いたのが、SFともファンタジーともつかない話。どっかで見たような。
この前書いた「魔法と魔人と王女様」の地名やキャラクター名はほぼこの最初の作品から持ってきています。
惑星エミリアのちょっとした不思議な力を持った人が地球に来てて、地球人にばれないように対抗勢力と能力バトルをする的な。
べったべたですね。味方の一人が実はエミリア王子様で特殊な力を持ってるんです的な流れまで用意してありました。我ながら赤面もの。
最終的には主人公の妹(記憶喪失で自分が地球人だと思ってる)が超強キャラってことが判明して戦局逆転、めでたしめでたしみたいな、これまたベタなラストだったと覚えています。五万字くらいだったかなあ。
ともかく、SFとしてはまったく体をなしてないことは確かですが、なんとなくスペースオペラチックなものを書きたかったんですね。でも、結局舞台は宇宙に移らず。
となると、当然ながら舞台を宇宙に移した話を書きたくなっちゃうわけです。
で、すぐに二作目と三作目の構想が沸いてきます。
二作目は、舞台を惑星エミリアに移して、しかも時代もぐんと昔に戻って、一作目に登場した「王子様の血筋」ってやつのご先祖様のお話でした。
三作目は、とってつけたようなハーフ地球人。ちょっとだけ不思議な力が使えて不思議だなーなんて言ってるのんきな高校生。ピンチには一作目の主人公きょうだいが登場して颯爽と悪者を倒してくれます。俺つえーです。
その辺でやめとけばよかったのに、あれですね、一作目の登場人物が可愛かったんでしょうね。
四作目は、一作目と三作目のオールスター的な話にプラスアルファな話になります。
で、宇宙を舞台にした話を書きたい、って欲求が消化不良だったのもあって、五作目は宇宙を舞台に傭兵家業なんてやってるエミリア人の話。戦闘機一機で宇宙を飛び回って。エミリア人特有の秘密能力をちょいと使うんで戦績もいいんです、的な。
六作目は一作目の第二世代くらいの話。
七作目は構想と冒頭だけでやめちゃった。
結局4~50万字分くらいは書いてあったと思います。
このころはプロットも何も書かずにラストのイメージだけで最後まで突っ走って書いてたなあ。
ともかく、このエミリアシリーズは私の中では圧倒的なボツ作品。まだ原稿は手元にあるけど、ちら見するだけで耳まで真っ赤になれます。
世間、社会を知らなさ過ぎたってのもありますね。
うっとおしい社会を知らないからこそ書ける話もあるでしょうけど。
私の初期エミリアシリーズは、設定の練りこみは甘いし社会の設計なんて何それおいしいの状態で、ちょっとつつけば宇宙ごと瓦解するような、ひどいものでした。
今は多少はまともになった……と思ってはいますけど、それももっと人生経験深い人から見れば、浅すぎるって一蹴されるんでしょうね。
そんな、どこにも出さないただ自分で読んで赤面するだけの小説が私の最初の小説なのでした。
つづく?