面白い小説を
小説の面白さって何でしょうね。
言葉だけで物事を伝える。
これって、最小限の情報で最大限の伝達を試みることなんですね。
言葉だけより絵があったほうが良いし。
静止画だけより動いている絵のほうが分かりやすいし。
正直、私自身は小説より漫画のほうが好きです。
なんと言うか、文章表現そのものを楽しむって感覚は全く無いですね。
私は物語そのものを楽しみたいタイプ。
なので、伝達方法は何でもいいのです。
情報理論的な話になりますが。
ある情報を伝えるのに、より少ないコードで伝えようとする試みがあります。
要するに、圧縮技術とかってやつですね。
全く情報量を減らさずに圧縮するっていう方法もありますが、それはそもそも元データに冗長な情報があっただけで、ここではその話はおいといて。
元データが完全に洗練されたデータだったら、伝えるコードを減らそうとすると、必ず情報の欠損が起こります。
ある物語を伝えたいとき、伝える方法の情報量が減れば、元の物語が完全に再生できる可能性は減ってしまうわけです。
さて、物語というのは、ある意味で、現実世界の空間や時間を使います。
そこに含まれる情報量は無限に近いものです。
写真や絵にすると、その情景を結構伝えることができます。
漫画はその手法ですね。
しかし小説となると、それを文字にまで落とし込んでしまいます。
文字に含まれる情報量はものすごく少ない。
ので、本当に伝えたい物語の情景は、ほとんど欠損してしまいます。
物語そのものの面白さを小説で伝えるのは、ここが難しいんですよね。
なるべく原風景どおりの描写をしようとすると、それを読むのに時間がかかって飽きられてしまいますし。
読み取った文字から頭の中に風景を描くのに余計な負荷もかかりますし。
案外、小説って、物語を伝えるのに向いてないメディアなんだと思うんです。
だから、物語そのものを楽しむより、文章表現上のトリックを楽しむ、なんていう人が出てきちゃうのも仕方が無いと思います。
そんな風潮に歯止めをかけたい、なんておこがましいことを言うつもりはありません。
それはそれで一ジャンルだと思うので。
でも、私自身は、物語が面白ければメディアは何でも良い、映画でも漫画でも小説でも、何でも良いと思っています。
小説独特の面白さを、とか思っていません。
なので私の小説も、表現で楽しませようという気が全く無い味も素っ気も無い論文みたいな文章になっちゃってると思います。
正直、実はこのとき○○さんは後ろでこんなことやってるんだよね、なんてのを文字にして伝えたいんだけど、話の流れを切りたくないので書けない、みたいなのってあるんですよね。
漫画が描ければそんな苦労は無いのになあ、なんて。
というのが私の小説の面白さに対するスタンスです。
つづく?