SF小説とカタルシス
SFでカタルシスを演出するにはどうすれば良いのか?
というお話を書いてみたいと思います。
もう散々いろんな手が尽くされてきていると思うのですが、これはあくまで私個人的な話と断った上で。
ってのも、私のSFってあんまり強烈な暴力は出てきません。
基本的に、科学に対する人間の反応ってのがテーマなので。
そりゃ、人間同士が争う、時には殺し合う、なんてことにもなりますけど、それ自体は反応のひとつ。
殺し合ってどちらかが勝つことが目的じゃないんです。
むしろ、そんな事態を引き起こしてしまった原因をどうやって取り除いていくのか?
科学がやらかしたことは科学が解決する。
というのが、私の書き方の基礎の基礎です。
(それでも暴力に頼って解決する話も出てきそうですが)
カタルシスを演出するためには抑圧状態を作らなきゃならない、ってことは前に書きましたが、私のSFの場合は、とにかく科学技術とそれに対する反応なので、何か問題が起こっている、それに対する逃げ道をこれでもかと塞いで回る、ということになります。
そして最後にどうやってそれを開放するのか。
そのために、前に私流のプロットの書き方の紹介のときに出てきたいろんな項目の中に、「■トリック」という項目がたいていはついてきます。
トリックは必ず「■小道具」とセットになっていて、問題解決のための隠された真実をどうやって明らかにするかとか、あるいは、小道具の使い方の逆転の発想についてが書かれます。
最終盤、抑圧された主人公たちは、このトリックを突然ひらめき(あるいは心に温めていたトリックをババーンと披露して)、いろんな逃げ道をふさがれて抑圧されていた読者にそんな逃げ道があったのか!とカタルシスを提供します。
ちなみに、小道具と対にならないトリックは基本的に使いません。
科学が起こした問題は科学が解決する。
その立場をさらに先鋭化するなら、ある特定の科学が起こした問題はそれ自身が解決策を持たねばならない、ということになります。
ある科学で抑圧状態が生まれたとき、天才科学者がそれを解決する全く別の超技術を突然提示、一挙解決!みたいなのは、カタルシスこそ感じるでしょうけど、私のポリシーに反します。
いや、ハードSFと呼ばれる中にも、こういうのって多いんですよね。
たとえば、超光速航法があるきっかけで暴走した、もう助からない、って状態に陥って、主人公がなめていた飴玉が重要デバイスのところにたまたま転がり込んで、それが新しい○○反応を起こして制御可能になったばかりか時間逆行効果までついてきて元いた時代にまで戻れました!
これは違うんです。
いや、ピンチで新しい発見をするっていうのはありなんですけど、そうじゃないんですよ。
そこで未知の反応を突然持ち出されても困るんです。
そうじゃなくて、その仕組みがもともと備えていたいろんな特徴を吟味して、もしかしてこれをこうすれば、こんな効果が現れるんじゃないか?と、科学的な立場で困難を打破して欲しいんですよね。
主人公たちが無い頭を絞って、もしかしてこれってこういう意味だから、こんなことができちゃうんじゃない?っていう、新発明にたどり着く過程をトレースして欲しい。そのための情報はできるだけ序盤で(抑圧状態に入る前に)提供しておいて欲しい。
そのときこそ本当のカタルシスが得られると思うんです。
その過程が無くいきなり新発明で解決、とか言われるのって、主人公超ピンチ!と思ったら伏線も何も無かったナントカの神が雲の上からビーム攻撃でラスボスを葬りました、みたいなもやもや感を残しちゃうんですよね。
ってのが私の感じ方なので。
私は、小道具とトリックは必ず対にすることにします。
物語の冒頭で説明する小道具が、必ず問題解決のトリックとして役立つようにしています。
とか書くと、私の書くSFが総ネタバレしそうですね。
忘れてください(笑)。
つづく?