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捨てられた令嬢の華麗なる復讐  作者: カルラ


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第7章:古代の目覚め

エリノア・ヴァンセルは、ルミエール公国の王宮で再び試練の日々を迎えていた。深淵の谷での戦いから数日が経ち、影の使徒の残党が放った「真の主」という不気味な言葉が、彼女とヴィンセント・ルグラン王子の心に重くのしかかっていた。結婚式の準備は中断され、王宮は緊張感に満ちていた。民衆の間でも、北の空に現れた魔力の渦や魔竜の復活の噂が広がり、不安が渦巻いていた。


ある朝、エリノアは王宮の図書館で古文書を調べていた。彼女の隣には、クラリスが静かに紅茶を運びながら見守っていた。エリノアの手には、「深淵の咆哮者」に関する記述が記された羊皮紙があった。そこには、魔竜が古代の魔術師によって封印された経緯と共に、気になる一文が記されていた。


「深淵の主は竜にあらず。その背後に潜むは、人の形をした闇なり。」


エリノアは目を細め、呟いた。


「人の形をした闇……これが『真の主』を指しているのかしら?」


クラリスが心配そうに尋ねた。


「エリノア様、大丈夫ですか? 最近、寝不足みたいで……。」


エリノアは微笑み、首を振った。


「ありがとう、クラリス。でも、今は休んでる場合じゃないわ。殿下と国を守るために、答えを見つけなきゃ。」


そのとき、ヴィンセントが図書館に現れた。彼の表情は硬く、手には封蝋の押された手紙を持っていた。


「エリノア、悪い知らせだ。捕らえた影の使徒の女が、尋問中に自ら命を絶った。だが、最後にこう言ったらしい。『主は目覚め、王家の血を求める』と。」


エリノアは息を呑んだ。王家の血――それはヴィンセントを指しているのは明らかだった。彼女は立ち上がり、ヴィンセントに近づいた。


「殿下、これはただの脅しじゃないかもしれません。深淵の谷での魔竜は、前触れに過ぎなかったのかも……。」


ヴィンセントは頷き、決意を込めて言った。


「そうだ。僕たちはその『真の主』の正体を突き止め、根絶やしにする必要がある。エリノア、君の力を貸してほしい。」


彼女は迷わず答えた。


「もちろんです、殿下。私にできることは全てします。」


その夜、王宮の天文台で異変が観測された。北の空に新たな魔力の渦が現れ、今度は王都に直接近づいてきていた。ヴィンセントとエリノアは急いで天文台に駆けつけ、天文官マティアス・ヴェルナーから報告を受けた。


「殿下、この魔力は深淵の谷のものより強大です。まるで……何かが召喚されようとしているようです。」


エリノアは魔法の杖を手に、魔力の流れを解析した。彼女の顔が青ざめた。


「殿下、これは召喚魔法の痕跡です。誰かが、強力な存在をこの世界に呼び込もうとしています。」


翌日、王宮に衝撃的な知らせが届いた。王都の地下で、影の使徒の残党が発見され、彼らが古代の召喚陣を起動させていたのだ。ヴィンセントは騎士団を率い、エリノアと共に地下へと向かった。そこは、王宮の下に広がる迷宮のような遺跡で、かつての魔術師たちが実験を行った場所とされていた。暗い通路を進む中、エリノアは壁に刻まれた古代文字を読み解き、ある結論に達した。


「殿下、この召喚陣は『深淵の王』を呼び出すためのものです。文献では、ルミエール建国前に封印された魔術師の王とされています。彼は王家の血を糧に復活する力を持つそうです。」


地下の最奥にたどり着くと、そこには巨大な召喚陣が輝き、影の使徒たちが呪文を唱えていた。中心には、黒い霧が渦巻き、人の形をした影が現れつつあった。それが「深淵の王」だった。ヴィンセントは剣を構え、エリノアに叫んだ。


「エリノア、召喚を止める方法は!?」


彼女は急いで召喚陣を解析し、叫び返した。


「殿下、陣の四隅にある魔力結晶を破壊すれば、召喚が中断されます! 私が魔法で援護します!」


戦闘が始まった。影の使徒は闇魔法で抵抗し、深淵の王の影が徐々に実体化していった。エリノアは防御魔法と攻撃魔法を駆使し、ヴィンセントと騎士団が結晶を一つずつ破壊していった。しかし、最後の結晶を壊す直前、深淵の王が不完全ながら目覚め、ヴィンセントに襲いかかった。


「王家の血よ、我が力となれ!」


その声は低く、地下全体に響き渡った。エリノアは咄嗟にヴィンセントを庇い、魔法の盾を展開したが、衝撃で吹き飛ばされた。彼女が地面に倒れると、ヴィンセントが叫んだ。


「エリノア!」


彼は剣を手に深淵の王に立ち向かい、最後の結晶を砕いた。召喚陣が崩壊し、深淵の王は咆哮を上げながら霧となって消え去った。影の使徒たちは混乱し、騎士団に次々と捕らえられた。


戦いが終わり、ヴィンセントはエリノアを抱き起こした。彼女は軽い打撲を負っただけだったが、息を切らせていた。


「殿下、ご無事でよかったです……。」


ヴィンセントは彼女を抱きしめ、囁いた。


「君が無事でよかった。もう離さないよ、エリノア。」


一方、王都の牢獄では、ローランド・デュモントの最期が訪れていた。魔力剥奪の刑を受けた彼は、虚ろな状態で生きながらえていたが、影の使徒との繋がりが明るみに出たことで、さらに厳しい裁きが下された。彼は公開処刑場に引き出され、民衆の前で「王家への裏切り者」として断罪された。処刑執行前、ローランドは最後に呟いた。


「エリノア……俺が間違ってた……。」


その言葉を最後に、彼の命は終わりを迎えた。民衆は彼を嘲り、かつての貴族の栄光は完全に消え去った。貴族社会では、「エリノアを捨てた愚か者」として彼の名が語り継がれることとなった。


王宮に戻ったエリノアとヴィンセントは、深淵の王の脅威が去ったことを確認した。しかし、エリノアは一抹の不安を覚えていた。召喚陣の残骸から、微弱な魔力の痕跡がまだ感じられたのだ。彼女はヴィンセントに言った。


「殿下、深淵の王は完全に消えたわけではないかもしれません。まだ何か残っている気がします。」


ヴィンセントは彼女の手を握り、力強く答えた。


「そのときは、また君と一緒に戦うよ。僕たちはどんな危機も乗り越えられる。」


エリノアは微笑み、頷いた。結婚式は再び延期となったが、二人の絆はこれまで以上に強くなっていた。


王都の空には、二つの月が不穏な光を放ち続けていた。深淵の王の完全な復活が阻止されたとはいえ、その影はまだルミエールの未来に忍び寄っていた。









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