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捨てられた令嬢の華麗なる復讐  作者: カルラ


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第5章:忍び寄る闇

エリノア・ヴァンセルは、ルミエール公国の王宮で輝かしい日々を過ごしていた。カルヴァドスとの戦いで勝利を収め、ヴィンセント・ルグラン王子と共に国を守った彼女は、民衆からも貴族からも「未来の王妃」として称賛されていた。ヴィンセントとの結婚の日取りも決まり、王宮は祝賀ムードに包まれていた。エリノアは、かつてローランド・デュモントに嘲られた「貧相な体型」の自分を完全に乗り越え、新たな自信に満ちていた。


ある日、エリノアはヴィンセントに呼ばれ、王宮の大広間へと向かった。そこでは、結婚式の準備が進められており、豪華な花飾りや魔法の光で彩られた幕が飾られていた。ヴィンセントは彼女を迎え、優しく微笑んだ。


「エリノア、君が王妃になる日がもうすぐだ。準備は順調に進んでいるよ。」


エリノアは頬を染め、答えた。


「殿下、私にはまだ夢のようです。あなたと共に国を支えられるなんて……。」


ヴィンセントは彼女の手を取り、そっとキスを贈った。


「君だからこそだよ、エリノア。」


しかし、その幸福な空気を切り裂くような出来事が起こった。その夜、王宮の地下深くにある保管庫から、異様な魔力の波動が感知されたのだ。衛兵たちが急いで駆けつけると、保管庫の扉がこじ開けられ、貴重な魔法の遺物――「星辰のオーブ」が盗まれていた。オーブは、ルミエール王家が代々守ってきた秘宝で、国全体の魔力を安定させる力を持つとされていた。ヴィンセントは即座に緊急会議を招集し、エリノアも同席した。


「これはただの盗難ではない。内部に協力者がいる可能性が高い。」


ヴィンセントの声は厳しかった。重臣の一人、老齢の公爵レオナルド・グランヴィルが口を開いた。


「殿下、オーブが奪われたとなれば、王国の魔力均衡が崩れる恐れがあります。最悪の場合、各地で魔獣が暴走するかもしれません。」


エリノアは思わず身を乗り出した。


「殿下、私に調べさせてください。オーブの魔力特性なら、文献で読んだことがあります。追跡魔法を応用すれば、犯人の居場所を突き止められるかもしれません。」


ヴィンセントは彼女の提案に頷き、即座に許可を出した。


エリノアはクラリスを伴い、図書館と魔法実験室を行き来しながら追跡魔法の準備を進めた。彼女はオーブから残された微弱な魔力痕跡を頼りに、複雑な魔法陣を描き上げた。数時間後、魔法陣が光を放ち、東の荒野にオーブの位置を示した。ヴィンセントに報告すると、彼は決断を下した。


「エリノア、僕と一緒に現場へ向かう。犯人を捕らえ、オーブを取り戻すんだ。」


二人は精鋭の騎士団を率い、馬車と飛竜で東の荒野へと急いだ。


その頃、王都の裏路地では、ローランド・デュモントがみすぼらしい姿で彷徨っていた。貴族の地位を失い、屋敷も財産も奪われた彼は、酒と賭け事に溺れる日々を送っていた。ある夜、彼のもとに怪しげな男が近づいてきた。黒いフードをかぶり、顔を隠したその男は、低い声で囁いた。


「ローランド・デュモント、お前に仕事がある。王家を倒す手助けをすれば、金と名誉を取り戻せるぞ。」


ローランドは目を細めた。


「王家を倒す? 何だ、それは……。」


男は笑い、続けた。


「我々は『影の使徒』だ。ルミエールの腐った王家を潰し、新たな秩序を作る。お前はエリノアを見返すチャンスを得られる。どうだ?」


ローランドの心は揺れた。エリノアへの嫉妬と復讐心が、彼を闇へと引き込んだ。彼は頷き、男に手を差し出した。


「いいだろう。俺に何をさせたい?」


東の荒野に到着したエリノアとヴィンセントは、廃墟と化した古い砦にたどり着いた。そこには、黒いローブをまとった集団が待ち構えていた。彼らは「影の使徒」を名乗り、星辰のオーブを手にヴィンセントを挑発した。リーダーらしき男が哄笑した。


「王子よ、オーブは我々が預かった。これでルミエールは我々の手に落ちる!」


ヴィンセントは剣を抜き、エリノアに囁いた。


「エリノア、オーブを奪い返す準備を。」


彼女は頷き、魔法の杖を構えた。


戦闘が始まった。影の使徒は闇魔法を使い、騎士団を苦しめたが、エリノアの防御魔法とヴィンセントの剣技がそれを凌駕した。激しい戦いの最中、エリノアはオーブを握る敵に狙いを定め、魔力干渉の呪文を放った。オーブが一瞬輝きを失い、敵の手から落ちた瞬間、ヴィンセントが飛び込んでそれを奪い返した。


「エリノア、今だ!」


彼女は最後の魔法陣を起動し、影の使徒を拘束する光の鎖を放った。敵は次々と倒れ、リーダーは逃亡を試みたが、飛竜に追いつかれ捕縛された。


戦いが終わり、オーブが王宮に持ち帰られた。しかし、捕らえた使徒の尋問で衝撃的な事実が判明した。彼らは王家の転覆を企てており、内部に協力者がいると供述したのだ。さらに、その協力者の一人が「元貴族の男」と呼ばれていた。ヴィンセントは眉を寄せ、エリノアに言った。


「エリノア、心当たりはないか?」


彼女は一瞬考え、やがて目を丸くした。


「まさか……ローランド?」


その予感は的中した。王都に戻った後、ローランドが影の使徒と接触していた証拠が見つかった。彼はクーデターに加担し、エリノアとヴィンセントへの復讐を企んでいたのだ。逮捕されたローランドは、王宮の牢獄に引き立てられた。彼の姿はかつての貴族の面影もなく、ボロボロの服を着た哀れな男だった。エリノアが彼と対面したとき、ローランドは彼女を見上げ、憎しみのこもった声で叫んだ。


「お前さえいなければ……俺はこんな目に遭わなかった!」


エリノアは静かに答えた。


「ローランド、あなたが私を捨てた日から、あなたの運命は決まっていたのよ。私を嘲った報いを、今あなたが受けているだけ。」


彼女の言葉に、ローランドは声を失い、ただうなだれた。


ヴィンセントはエリノアを抱き寄せ、牢を出た。


「エリノア、君のおかげで国はまた救われた。結婚式は予定通り進めるよ。」


彼女は微笑み、頷いた。影の使徒の脅威は去り、ローランドは自らの愚かさの果てに破滅した。エリノアの心には、もはや過去の傷はなく、未来への希望だけが輝いていた。








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