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古墳時代の授業(昔の前方後円墳のスクリーン授業)

 その日の社会の授業。スクリーンに、青々とした丘が映し出された。

 上から見ると、まるで大きな鍵穴の形をしている。

「これが前方後円墳ぜんぽうこうえんふんです」

 先生が黒板にチョークを走らせ、円と四角を組み合わせて描いた。

「昔の有力者、つまり“地域のリーダー”たちが、自分の力を示すために造ったんです」

 悠真は少し考えて、ぽつりと言った。

「……王の名刺みたいだ」

 クラスから「なるほど~!」と声があがる。

 先生もにっこり笑った。

「まさにその通り。名前ではなく、形で“自分の存在”を伝えたんですね」

 先生がスイッチを押すと、教室の照明が少し暗くなった。

 映し出された映像には、何百人もの人々が土を運び、木の棒で地面をならしていた。

 大きな丘が少しずつ、ゆっくりと形を変えていく。

「古墳を造るには、村じゅうの人たちが協力したんです。

 設計する人、土を運ぶ人、飾りを作る人……まるで大きなチームのようでした」

 ビデオが終わると、教室が明るくなる。

「はい、感想を言いたい人?」

 悠真が勢いよく手を挙げた。

「ぼく、あの映像を見て思いました。あの巨大な古墳って、“みんなの力の象徴”でもあるんですね。

 王一人じゃ作れない。協力の結晶だと思いました!」

 先生がうなずく。

「いい意見ですね。力を誇るだけじゃなく、“人が力を合わせて生きた証”でもあるんですよ」

 隣の席の女子が手を挙げた。

「わたし、形がすごく正確でびっくりしました。どうやって測ったんだろう?」

「よく気づいたね!」先生は嬉しそうに言った。

「棒や縄を使って、少しずつ長さを測りながら形を整えたんだそうです。

 道具は少なくても、工夫と知恵であれだけのものを作ったんですね」

 授業の後半。

 先生が地図を映しながら言った。

「古墳は、日本のあちこちに造られました。

 それぞれの地域で少しずつ形が違い、その土地の特徴も表れているんです」

 悠真の手がまた上がった。

「先生、ぼく、前に家族で東京旅行に行ったときに、埼玉の稲荷山古墳を見たことがあります!」

「おっ、そうなの?」

「はい。金色の剣が展示されてて、文字がいっぱい刻まれてました。

 “昔の人の思いが鉄に刻まれてる”って感じで、すごく感動しました!」

 クラスが「すごい!」とざわめく。

 先生は微笑みながら言った。

「いい経験をしましたね。実際に見て感じたことは、どんな知識より心に残ります」

 そして、黒板にこう書いた。

『今日の宿題:前方後円墳から感じたことを一つ書く』

 悠真はノートを開いて、すぐに書き始めた。

『王の名刺――前方後円墳。

 力のかたち、心の証、みんなで作る未来の丘。』

 夕方の光が教室の窓から差し込み、悠真の手元を照らした。

 ――形の奥には、心がある。

 悠真は、それを確かに感じ取っていた。

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