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弥生時代の学習(石包丁=オカリナ? 学者になり卑弥呼の国を探したい悠真)

 社会の時間。教室のスクリーンに、黄金色に波打つ田んぼの映像が映し出された。

「さあ、今日は“米の力”について学びます」

 先生の声が響く。

「昔の人たちは、土を耕し、水を引き、みんなで力を合わせて稲を育てました」

 穂が風にそよぐ映像に、悠真は思わずつぶやいた。

「すごいな……ただの植物じゃなくて、“人が作り出した文化”なんだ」

 画面が切り替わり、稲を刈る人々のイラストが現れる。

「この道具、石包丁といいます」

 先生の説明に、悠真は顔を近づけた。

「なんだか、オカリナみたい! 吹いたら音が出そう!」

 クラスに笑いが広がる。

「確かに形は似てるね。でも、これで一つずつ丁寧に稲を刈っていたんだよ」

 先生も笑いながら答えた。

 次に、スクリーンには木で作られた家が映る。床が少し高くなっていて、下には影ができている。

「お米を守るために、こうして工夫していたんです。湿気や動物から遠ざけて、大切に保存したんだね」

「人間の知恵の結晶だなあ……」悠真は感心したように言った。

 しかし、その次の映像では、空気が変わった。

 武器を手にした人々、壊れた家、燃える田畑――。

「お米が増えると、豊かな人とそうでない人が出てきました。

 やがて、お米をめぐって争いが起きたんです」

 先生の声が少し静かになる。

 悠真が手を挙げた。

「お米のためにケンカしたのか……でも、それを止める人はいなかったの?」

 先生は頷いて、黒板にゆっくりと文字を書いた。

「卑弥呼」

「この時代、人々をまとめたのは“心で導く力”を持った人だったと言われています。

 武器ではなく、信頼で人を動かしたんです」

 悠真は、黒板の文字を見つめながらつぶやいた。

「リーダーって、強い人じゃなくて、“信頼される人”なんだね」

 教室がしんと静まり返った。

 そのあと先生が、やわらかい笑顔で言う。

「そう。平和をつくるのも、人の知恵なんだよ」

 悠真の胸の中で、何かが灯った。

「ぼく、いつか学者になって、この時代のことをもっと知りたい。卑弥呼の国がどんな場所だったのか、自分の目で確かめたい!」

 教室中が笑いに包まれた。

 先生は満面の笑みで言った。

「その意気だ、悠真くん。未来の歴史研究者、楽しみにしてるよ」

 放課後、悠真はノートを開いて書き込んだ。

「米はただの食べ物じゃない。

 人を結び、社会を作り、心を豊かにする“白い宝石”だ。」

 夕焼けが差し込む教室で、悠真の瞳がきらりと光った。

 ――“米の力”が、悠真の中に新しい火をともしたのだった。

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