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平安時代の授業(紫式部風にクラスメイトに手紙を書き合う特別授業、手紙で女子と恋心がつながる悠真)

 ある秋の午後。教室の黒板には大きく「平安時代」と書かれていた。

 チョークの音が静かに響く。

「七九四年、桓武天皇が都を平安京に移しました。『鳴くよウグイス平安京』って覚えるんですよ」

 先生が笑いながら言うと、教室がどっと沸いた。

 悠真はその中で、前の時代の「平城京」との違いをノートにまとめながら、ふと手を挙げた。

「先生、平城京って、まっすぐ道が並んでましたよね。平安京はそれを少し変えて、自然の地形を生かして作られたって聞きました」

 先生は少し驚いたように笑った。

「よく調べてるね。そう、まさに“新しい都づくり”が始まったんだ」

 そこから授業は、貴族たちの暮らしや、宮中での政治の話へと進んでいった。

「このころの都では、華やかで礼儀正しい生活が大切にされました。

 でも、力を持つ家の人たちが天皇を支えながら、実際には政治を動かしていたんです」

 先生の声が少し低くなり、教室の空気も静かになった。

 やがて黒板には「源氏物語」と書かれた。

 照明が落とされ、プロジェクターに古い絵巻が映し出される。

 金の屏風の前で言葉を交わす男女、流れるような衣のすそ、香の煙――。

「作者は紫式部。宮中で仕えていた女性です。

 同じころに清少納言という人もいて、感じたことを日記のように書いていました。

 二人とも“かな文字”で手紙を書いたんですよ。恋文もね」

 そのひと言で、教室がざわめいた。

 先生はにっこり笑う。

「というわけで、今日は特別授業です。

 みんなで“平安の恋文体験”をしてみましょう!」

 ざわつく教室。机の上には、先生たちが用意した布や香炉が並んでいた。

 廊下の奥には、古風な小部屋がいくつも用意され、まるで平安の屋敷のようだった。

「昔の人になったつもりで、お互いに手紙を書いてみてください。

 言葉は現代語でいいけど、気持ちは“紫式部風”でね」

 悠真の班は三人組。友達と笑い合いながらも、彼の心の中にはひとつの思いが浮かんでいた。

 ――あの子に、書いてみよう。

 放課後、悠真は家で便せんを取り出した。

 授業で聞いた“やわらかな言葉”を思い出しながら、ゆっくりとペンを動かす。

 > あなたの笑顔を見るたびに、秋の光が差しこむような気がします。

 > もしよければ、これからも一緒にいろんなことを学んでいきたいです。

 書き終えると、少し照れながらも、心の中がふわりと温かくなった。

 “平安の恋文”は、昔の文化ではなく、いまも息づく“心の言葉”だと感じられた。

 翌日、悠真はその手紙を机の上にそっと置いた。

 相手は、いつも図書室で歴史の本を一緒に見ていた女子のクラスメイト。

 昼休み、彼女が小さなメモを渡してきた。

 > ありがとう。あなたの言葉、うれしかった。

 > これからも仲良くしてね。

 その瞬間、悠真の胸の奥で、やさしい光が灯った気がした。

 歴史の授業が、まさか自分の“今”とつながるなんて――。

 授業の最後、先生は平安京の絵を映しながら話した。

「このころの人々は、華やかな生活の中で、“心のやすらぎ”を求めていたんです。

 見た目の美しさだけじゃなく、祈りのような想いもあったんですね」

 悠真は手紙のことを思い出しながら、静かにノートを閉じた。

 ――華やかさの中にある優しさ。祈りのような心。

 どちらも、“本当の日本”なんだ。

 窓の外には、秋の夕陽がやさしく差しこみ、教室の空気が金色に染まっていた。

 悠真のノートには、新しい一行が加えられていた。

 > 「昔の言葉でも、心が通じるとき、それは今の恋になる。」

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