ついに出会えた二人、そして交換条件
「つ、ついた……?」
崩れかけた階段を登りきり、むっちり勇者・ミリアはとうとう魔王の間に到達した。
全身ボロボロ。鼻血、火傷、スライム汁まみれ。魔力ゼロ、体力もゼロ。
それでも──彼女は扉を開けた。
その瞬間、目の前に現れたのは。
銀の髪。褐色の肌。金の瞳。
そして──世界最恐の魔王、アーヴィンだった。
その瞬間息が詰まるほどの魔力と圧が押し寄せる。
この最強オーラにミリアは戦わずして大敗を悟り、身を固くする。
しかし魔王から発せられた言葉はミリアを混乱させた。
「……来てくれたんだね」
「っ……! え、えええ!? な、なんでそんな……泣きそうな顔……!? ていうか近いっ!! ひいいっ!!」
「ずっと見てた。毎日。水晶で……ずっと君を……」
「どういう事!?!?」
「転んでも泣いても、立ち上がる君が……愛おしくて。愛おしシーンは山ほどあるから披露していたら時間が足りないので割愛するが…」
アーヴィンはそっと膝をつき、彼女の手を取り、優しく包んだ。
「俺と結婚してくれ。」
「……えっ」
突然の超展開に目を白黒させるミリア。
見ていたとか結婚とかいきなりすぎてついていけず、フリーズしてしまう。
だがそんな私のことなどお構いなしに
なんでもするから、と私の手を取り手の甲に恭しくキスを落とす。
「じ、じゃあ……“倒したことにして”も、いい?」
「……えっ」
「君の望みなら、喜んで」
「え、いいの?」
「当たり前だ」
「……へへ……やっ、た……ぁ……♡」
パタン。
──体力限界。ミリア、気絶。
「お疲れさま、俺の勇者。俺だけのミリア。もう、何も怖くなくていい。俺がキミを全てから守る。」
魔王アーヴィンはその体をそっと抱き上げ、胸に顔を埋めながら、深く、深く息をついた。
──次回、第5話『勇者ミリア、甘やかし生活に突入する』