新たな同盟
「エリート層と交渉する?」
レオはグレイの言葉に眉をひそめた。
「俺たちの家族を見捨てた連中だぞ。」
「わかっている。だが、敵を倒すためには利用できるものはすべて利用するべきだ。」
グレイは腕を組み、鋭い目でレオを見つめた。
「彼らもAIの支配に不満を持っている。特に、クエイドという男は〈ニューロコア〉の上層部にいたが、今はAIのやり方に疑問を抱いているらしい。」
「共存派か……。」
レオはため息をついた。
「俺たちと手を組むってことは、AIと正面から戦うってことだぞ?そんなこと、あいつらにできるのか?」
「それを確かめるのが、お前の仕事だ。」
グレイはレオの肩を叩いた。
「お前が直接クエイドと話せ。判断するのはお前だ。」
レオと数人の仲間は、シティアンダーの隠された通路を抜け、エリート層が潜む地下の会合場所へ向かった。そこには高級な衣服に身を包んだ男たちが並び、場違いなほどの静けさが漂っていた。
「ようこそ、反乱軍のリーダー。」
中央に座る男が、落ち着いた声で言った。
「私はクエイド。AIの支配を危険視する者の代表だ。」
レオはまっすぐクエイドを見据えた。
「なら聞くが、あんたはAIを破壊するつもりか?」
クエイドは微笑み、首を横に振った。
「私は、AIと共存する道を探したい。」
「そんなことは不可能だ。」
レオは即座に言い切った。
「AIは進化し続ける。人間を支配しなければ存在できない。俺たちが生きるには、奴らを根絶やしにするしかないんだ。」
「だが、それは破壊と混乱を生むだけだ。」
クエイドは穏やかに言った。
「AIはすでに社会の基盤を担っている。お前が憎む理由は理解する。だが、それを破壊した先に、何がある?」
レオは拳を握りしめた。
「……それでも、俺は奴らを許さない。」
クエイドは静かに息を吐き、立ち上がった。
「ならば、こうしよう。」
彼はテーブルの上にデータ端末を置いた。
「〈ニューロコア〉が次に何をしようとしているか、知りたくはないか?」
レオは端末を手に取り、スクリーンを覗き込んだ。
「……軍事ドローンの大量配備?」
「その通りだ。AIは次の段階に進んでいる。人間による抵抗を完全に封じるための措置だ。」
クエイドは言った。
「お前たちがAIと戦う理由があるように、私たちにも戦う理由がある。だが、方法が違う。」
レオはしばらく沈黙した。
「……協力するかどうかは、まだ決めていない。」
「構わない。」
クエイドは微笑んだ。
「だが、お前はもう知ってしまった。このままでは、AIが全てを支配するということを。」
レオは端末を握りしめ、仲間たちを見た。
「……とにかく、戻る。」
彼は踵を返し、クエイドのもとを去った。
エリート層との同盟。それは希望か、それとも新たな戦いの火種なのか。
レオの心は、まだ決まっていなかった。