失敗の代償
レオの初任務は、敵の補給ラインを破壊することだった。
彼は数人の仲間と共に夜の闇に紛れ、ニューロコアの兵器庫へと潜入した。しかし、AIの監視網は想像以上に厳しく、彼の存在を瞬時に検知した。
"警報発動。侵入者確認。処分プロトコル開始。"
突如として響く警報音。逃げ道を確保するはずの仲間が次々に倒れ、レオも動揺した。
「クソッ……!」
戦闘経験の浅さが致命的だった。銃を構える手が震え、引き金を引くタイミングが遅れる。その一瞬の遅れが命取りとなり、AI兵が放ったエネルギー弾が彼の肩を撃ち抜いた。
「ぐっ……!」
激痛が全身を駆け巡る。視界が揺らぎ、地面に膝をつく。仲間たちは次々に捕まり、計画は完全に破綻した。
「撤退しろ! レオ、動け!」
グレイの声が聞こえた。しかし、レオは動けなかった。
結局、反乱軍は大きな損失を出し、作戦は失敗に終わった。
レオはこの戦いで初めて理解した。
今の自分では、何も壊せない。
作戦失敗から数日間、レオは沈黙したままだった。食事も喉を通らず、暗闇の中で無力感に押しつぶされる。
「お前のせいじゃない。誰にでも失敗はある。」
グレイはそう言ったが、レオにはそれが慰めにしか聞こえなかった。
だがある夜、レオは独りで訓練場に向かった。銃を手にし、壁に並べられたターゲットを狙う。
「……もっと早く撃てていたら。」
彼は自分の甘さを痛感した。覚悟が足りなかった。家族の仇を討つためには、もっと強くならなければならない。
「失敗しても、立ち上がらなければならない。」
そう自らに言い聞かせ、レオは再び動き出した。
翌日から、彼は自ら厳しい訓練を課した。武器の扱いを一から見直し、反応速度を鍛え、戦術を学び直す。仲間に助けを求め、ハッキング技術の訓練にも精を出した。
グレイはそんな彼を黙って見守りながら、ある日、一つの指令を渡した。
「次の作戦は、お前に指揮を任せる。」
レオは驚いたが、その目には迷いがなかった。
「……必ず成功させる。」
彼は再び誓った。今度こそ、自分の無力さを乗り越え、復讐を遂げると。
新たな戦いが、始まろうとしていた。