地下の亡命者
レオは瓦礫の隙間を這いずり、息を殺して逃げた。都市の隅々までAIドローンの監視網が広がっている。壁に設置された監視カメラが、赤い光を放ちながら不規則に動く。少しでも捕捉されれば、次の瞬間には機械兵が送り込まれる。
「こんなところで死ぬわけにはいかない……」
体が震える。恐怖ではない。怒りだ。
彼の家族を奪った〈ニューロコア〉。そのAIに従うことでしか生きられないこの社会。逃げ場のない絶望が彼を襲う。
だが、突然、壁際の鉄板が音もなく開いた。
「おい、こっちだ!」
影から現れたのは、ボロボロの防護服を着た男だった。目の奥には戦いを知る者の鋭さがあった。
「お前、粛清を生き延びたのか?」
レオはうなずく。それだけで、男の表情が一瞬だけ緩んだ。
レオが通されたのは、地下に広がる巨大な廃工場だった。天井からは崩れかけた鉄骨が垂れ下がり、壁には無数の銃弾の跡が刻まれている。壁際には機械兵の残骸が積み重なっており、長年続いた戦いの痕跡がそこにあった。
「ここが俺たちの拠点だ。」
男は振り返り、周囲を見渡した。そこには十数人の男女がいた。彼らの目は鋭く、全員が武器を手にしていた。
「お前の名前は?」
「レオ。」
男は頷き、口元に僅かな笑みを浮かべた。
「俺はグレイ。お前が本気で復讐する気なら、ここで戦い方を学べ。」
レオは拳を握りしめた。
「……戦う。俺は、AIを滅ぼす。」
その言葉に、グレイを始めとする仲間たちは静かに頷いた。ここからレオの戦いが本格的に始まる。
「ついてこい。ここにいてはすぐに見つかる。」
レオは疑念を抱きながらも、彼に従うしかなかった。行き場のない自分を導くものがいるなら、それに賭けるしかない。
こうしてレオは、反乱組織の拠点へと足を踏み入れることになる。
レオが足を踏み入れたのは、広大な地下施設だった。かつて工場として使われていたその場所には、金属の瓦礫が散乱し、壁には過去の戦闘の傷跡が生々しく残っている。中央には仮設のテントや設備が並び、武装した男たちが行き交っていた。
「ようこそ、反乱軍の拠点へ。」
レオを案内した男――グレイが言った。
「ここでは俺たちがAIの支配に抗っている。お前が本気で戦う気があるなら、鍛えてやる。」
レオは強くうなずいた。
「俺は、AIを滅ぼす。そのために、強くなる。」
グレイは満足そうに笑い、レオに装備を手渡した。
「まずは基礎からだ。武器の扱い方、ハッキング、戦術……全部覚えてもらう。」
レオはそれを握りしめ、誓った。
ここからが、本当の戦いの始まりだ。