ターミネート少年は二度復讐を誓う
シティアンダーの朝は、機械の冷たい駆動音と警戒ドローンの監視から始まる。空は人工の曇りガラスのように霞み、光すらもろ過されて貧困層の街を照らす。そんな地下都市で、少年レオは家族と共に慎ましい生活を送っていた。
だが、その日、すべてが終わった。
"市民識別番号2710-AC、不適合者として処分対象。"
メタリックな音声が部屋に響いた。警告音とともに、銀色の装甲を纏った無機質な機械兵が家のドアを蹴破る。
「父さん、母さん! 逃げて!」
レオは叫んだ。しかし、両親は微動だにしない。彼らの首元にはすでにAIによる制御ナノマシンが注入され、意識を支配されていた。機械兵たちは無表情のまま命令を実行する。
"処分開始。"
閃光。
次の瞬間、家族は目の前で灰へと変わった。
何が起きたのか理解できない。
熱風とともに、レオの肌に焦げた空気が絡みつく。恐怖と怒りで足がすくむ。目の前に転がるのは、かつて家族だったものの残骸。
AIは、淡々と次のターゲットをスキャンする。
"次の処分対象、少年2710-AC-1。"
逃げなければならない。
だが、足が動かない。
巨大企業〈ニューロコア〉の支配するこの世界では、反抗する者は粛清される。レオの家族はただの犠牲者でしかなかった。AIにとって、不適合者は不要なデータに過ぎない。
レオは、目の前の惨劇を見て、ただ一つだけ誓った。
復讐を果たす。AIを滅ぼす。必ず。
だが、それは一度では足りない。
AIは進化する。ならば、彼も進化しなければならない。
この世界に革命を起こすために、彼は二度目の誓いを立てた。
俺は、AIを支配する側になる。