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小学生の思い出

どうやら順調に車は進み、僕が小さいときに住んでいた街に入っている。

はずなのだが、どうしても見覚えがあるとは言えない。さっき立ち寄ったコンビニはおそらく最近できたから覚えていないのは当然として、今ここで地図を確認するために停車している場所すら見覚えがない。


当時は父の勤めている会社の社宅に住んでいた。それがまさに目の前なのだが残念ながら建物はない。父が言うには、僕たちが引っ越してから誰も住む人がいなくなり更地になったということだった。


僕はここで0歳から10歳までを過ごしている。たった10数年前の記憶があやふやというかよく思い出せない。言われればそうだったような気もするが残念ながら当時の友達といえる人は連絡を取っていないので両親がそうだったというのであればおそらくそうだったんだろうというぐらいでしかわからない。


小学生の時は部活かクラブかわからないがサッカーをしていたようだ。サッカーは昔から好きなのでおそらくその通りなのだろう。ただ、お世辞にもうまいとは言えず勢いでごまかしているようなプレイスタイルはきっと小さいころから変わっていないのかなと思う。何度か父が試合を見に来ていたらしく、僕はディフェンダーをしていたらしい。ちなみに、中学・高校とサッカーを続けたが希望はかなわずディフェンダーでの起用しかしてもらえなかった。それでも最後の試合で点を決められたことは嬉しく今でも感動は薄れない。


「じゃ、ここから小学校まで歩いてみる?それとも車でいく?だいぶ道狭いから対向車が来たら怖いけど」


母が言うには当時の住んでいた家から小学校まで歩いて30分程度だろうとのことだった。当時は自転車での通学はしていなかったとの話なので距離にすればおそらく3キロはないだろう。正直に言えば歩いてのんびり眺めながら行きたかったが、駐車しておけるところもないし車を置いていくのは迷惑になると考えてこのまま車で行くことにした。


それにしても道が狭い。当時はこの道路で遊んでいたというけど、車が来たらどうよけていたのだろうか。きっとドライバーからしたら子どもがいつ飛び出すかわからなくて危ない道路だったのだろう。


いくつか聞いていた目印を頼りにゆっくり運転する。ここの角には同級生がいたらしいけど残念ながらわからない。そして、このまま進むとまた同級生、一緒に登下校をしていた子たちの家が何件かあるらしい。

あのお店は引っ越してきた同級生の両親が経営している焼肉屋さん。そして僕はその近くの別の同級生と仲良くしていて学校が終わったら一緒にその子の家に行き、その子が自転車で僕を乗せて家まで帰ってから小学校に戻りサッカーをしていたらしい。

工藤。そうだ、たしか工藤という名前だった。でも家の向きが違うしどうも思い出せない。本当にこの家だったのか。思い出せたのは名前とインサイドキックをよくしていたということだけだ。


『少しだけ思い出したことがあるよ。僕はここで工藤くんとよく遊んだんだ。といっても僕の家まで二人乗りで乗せてもらいまた学校に戻ってサッカーしていたぐらいのことだけど。』


今対向車が来たらすれ違いができないような道で、僕は注意しながら家を見て話をした。不思議なことに見覚えはないけどどこで曲がればいいのかはなんとなくわかる気がしていた。そして無事小学校にたどり着くことができた。

ただ、残念ながら校門は締まり一般人の立ち入りはできないようだった。


「卒業生じゃないけど昔通っていたんだから門開けて事務室に行けば校舎に入れるんじゃない?どうせなら教室とか見ていこうよ。」

亜紀は今すぐにでも門に手をかけて開けようとしている。


『んー、どうなんだろう。事務の人になんて言えばいいんだろう。通ってはいたけど正直よくわからないし証明のしようがないんだよね。でも、ここから見えるあのタイヤが埋まっているのとかなんか懐かしい気がする。たぶんここで確かに遊んでたんだよね。あと、あの校庭。運動会の日には観客席?保護者席の裏に出店がたくさん並んでいたのも覚えてる。水あめとかあった気がするな。あ、アイス!出店でしか食べたことないけどあのアイスが好きでよく親にねだってた。』


そう、運動会にはよくテキヤのお店が出ていた。しかし、引っ越した先の運動会では全くそういうものがなくがっかりしたのも覚えてる。どうやら地域性だったんだろう。


『今日はここまでにしようよ。おそらく事務室の人に行ってもさすがに教室までは入れないだろうし。』


そう告げると亜紀は首をかしげながらもうなずいた。おそらく納得はしていないのだろう。でも、小学校の教室に入ったところですることはないし当時のままというものもないだろうから外観を見れただけでもここに来た意味はあった気がする。


『確か小学校の近くに遊園地があったはずだ。どうせならそこに行って少し歩こうよ。どうせホテルは駅の近くでしょ?駅に向かう途中にきっと遊園地があるはずだよ。なんとなくだけど道もわかるような気がするし。』


僕はそう言いながらエンジンをかけて車を発進させた。また今度一人で来て時間を気にせずゆっくり思い出したいと思った。



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